犬と一緒に住む孤独な老人は何を思うか?「Bwakaw」

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本作は、個性的な作品をつくることで知られるジュン・ラナ監督が、老いをテーマにして撮った作品です。ただ、ラナ監督作品なので、主人公がゲイであるという要素が入っており、個人的には、自分に置き換えて感情移入するのが難しい作品でした。「もう年なんだから、そんなところで、ゲイの欲望を出すなよ、出すなよ、ああ、やってしまったぁぁぁ!」と、謎のスリルがありました。私としては、ゲイ要素を除いて、犬と一緒に住む孤独な男の心理を普通に描いて欲しかったです。本作は、2012年の東京国際映画祭で公開されたことがあるため、「ブウカウ」という日本語タイトルを持っています。タイトルは犬の名前で、「わがまま」という意味のようです。

(Photo cited from IMDb)

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「Bwakaw」のストーリー

犬と一緒に住んでいる孤独な男の物語です。とは言え、近所づきあいはあるようで、あとでわかりますが、郵便局員の仕事を定年退職しているにも関わらず、掃除をするために郵便局に無休で出社しています。ただ、非常に不愛想な喋り方をする男でもあります。近所の人が、孫が病気なので、一緒にSanto Entierroに行ってくれないかと頼むのですが、「医者を呼べ」とぶっきらぼうに断ります。Santo Entierroとは、ホーリーウィークに、キリストの遺体像が棺に入れられる、その棺と一緒に街を練り歩くイベントのようです。その時に病気が治るよう祈願するという習慣があるようですね。

本人にも、特に生きる目的がないので、ストーリーもはっきりしたものはありません。いつ死んでも大丈夫なように棺桶を発注したり、それを自宅に運んで、近所の人に亡くなったと勘違いされたりします。また、若いころに15年ほど付き合った女性がおり、認知症になったため施設に入所しています。彼女を定期的に訪問します。記憶にはムラがあり、会話が成立するときもあれば、まったく成立しないときもあります。

また、男には大きな秘密があります。彼は60歳を超えて、ようやくゲイであることを認めたのだそうです。昔付き合った彼女は、自分がゲイであることを否定するために付き合っていたことが、この年になってようやくわかり、そのことを、彼女の記憶がはっきりしているときに、告白し、謝罪しました。彼女は「もう2度と来ないで」と応えます。

近所の老人仲間が、心臓の手術をすることを決意し、彼女を応援するパーティを開いたところ、そのパーティに最中に、彼女が死んでしまいました。男は、彼女の葬式でスピーチをします。そんなころ、愛犬がぐったりしています。慌てて、犬を獣医の元に連れて行ったところ、末期の癌だということがわかりました。犬のために何度も獣医を往復する際に、トライシクルのドライバーと仲良くなり、一緒に食事をする仲になりました。

ドライバーは意外にも宗教的な男で、自分でコントロールできないことは、神に祈るという考え方です。しかし、主人公は自分がゲイであることを「罪」と捉えており、そんな自分を作った神に対して、どう向き合えば良いかわからずにいます。

(ネタバレ)男は、いつしかドライバーのことを好きになっていました。一緒に自宅で酒を飲みながら、ドライバーが「なぜ、一度も結婚しなかったんだ?」と聞くと、「自分には15年付き合った彼女がいたが、実際は愛していなかった。自分は恋に落ちたことがなかった。今を除いて・・」と、きわどい答え方をします。やがてドライバーが酔って寝てしまったところ、さんざん逡巡したあげく、キスをしてしまいました。ドライバーの男は、驚いて覚醒し、怒って去っていきました。主人公は、愛した男にキスをするというのがどんな感じだったのか知りたかったそうです。

そんなおり、近所のおばさんがやってきて、Santo Entierroのおかげで孫の病気が治ったと報告にきました。正確には悪性だと思われた腫瘍が良性だったのだそうです。主人公は、教会の司祭を訪れ、「自分の犬が死にそうなのは、自分がせいで罰を与えられているのではないか、自分の代わりに神に犬を奪わないでくれと伝えて欲しい」と頼みます。

その後、愛犬は亡くなってしまいました。主人公は、犬を埋葬したあと、なぜか部屋を明るく飾りました。その後、散歩に出かけた主人公を写すカメラが遠ざかり、エンディングです。

最晩年の宗教観、ペットとの絆、近所の人の死や、未だに湧き上がる欲望、かつての恋愛に対する振り返りなど様々な要素が扱われ、なかなか味わい深い作品でした。

「Bwakaw」の監督、出演者情報

本作品で監督をつとめたジュン・ラナさんは、「ダイ・ビューティフル」「ある理髪師の物語」などで国際的評価も高い監督さんです。本作は2012年公開と、比較的初期の作品にあたり、おそらく彼が監督として国際的に評価された最初の作品だと思います。主役をつとめたEddie Garciaさんは、大ベテランの役者さんです。彼が活躍した時代のフィルムは、フィリピンではちゃんと管理されておらず、ほとんどが今となっては見ることができないか、フィリピン映画が海外で視聴されるなどとは思われていなかった時代なので英語字幕がついていません。残念ですね。

「Bwakaw」の作品情報

オリジナルタイトル:Bwakaw

公開年 2012年

監督 Jun Lana(そして大黒柱は…)(ダイ・ビューティフル)(Ten Little Mistresses)(Haunted Mansion

主なキャスト Eddie Garcia

Rez Cortez

Bibeth Orteza

視聴可能メディア Bili Bili(英語字幕のみ)

「Bwakaw」のトレイラー

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