本作は感動的なドキュメンタリー映画でした。長い歴史を持つマニラ映画祭で、はじめて上映されたドキュメンタリー映画でもあります。内容としては、フィリピン人が大好きな美人コンテストの話ですが、それを香港で、出稼ぎ家政婦さんたちが、自分たちの手作りで行うというところが特筆すべき点です。「なぜフィリピン人は、そんなに美人コンテストが好きなのだろうか?」と思っていましたが、本作で合点がいきました。フィリピン女性にとって、美人コンテストは、自分を表現することができる場なのですね。香港の非常に劣悪な条件で家政婦で働くフィリピン女性だからこそ、自分自身を見てもらえる場所、自己表現をする機会が必要なのですね。日本でも美人コンテストをやっているなら、ぜひ見に行きたいと思いました。

(Photo cited from IMDb)
「Sunday Beauty Queen」のストーリー
本作はドキュメンタリー映画なので、ストーリーはないのですが、展開される出来事や得られた知識を書いていこうと思います。
最初は、香港の街角が映し出されます。テロップで「香港では19万人のフィリピン人が家政婦として働いている」と表示されます。彼女らの暮らしは、雇用主のニーズにあわせて24時間フレキシブルに働かなければなりませんが、日曜日だけは完全にフリーです。彼女らは、日曜日に、街歩きやオシャレを楽しみます。そんな彼女らが、自分たちのために美人コンテストを開催することとなりました。地元の香港人は、「なぜ休日の日曜日を、そんなイベントの準備のために使うのかわからなかった」とコメントします。
香港での開催もフィリピンスタイルで、それぞれが地元の名前をタスキに書いて、地元の代表という形式で行われます。これはフィリピンのお祭りを見たことがない人には想像がつきずらく、見たことがある人には容易に想像できるのですが、派手な花や昆虫をモチーフにしたコスチュームをまといます。
その後、彼女らの仕事に焦点が移ります。香港での平均的なフィリピン人家政婦の月収は、555USDだそうです。10万円いかないくらいですね。香港は共働き社会なうえに、滅茶苦茶はたらく文化ですがら、フィリピン人家政婦がいなければ社会がまわらないのだとのことでした。香港人家政婦を雇うと1時間8USDかかるそうです。
美人コンテストの主催者は、特に言及はありませんでしたが、トランスジェンダーのようです。彼(him)と字幕で示されますが、声は明らかに女性で、恰好や髪形は男性です。彼も家政婦として働いており、美人コンテストの前はレズイベントを主催していたと言っていたので、まあそういうことでしょう。この美人コンテストは、けっこう儲かったらしく、2450USDの収益が出ました。このお金が、フィリピン人同胞が、お金に困ったときの支援金として使われるとのことでした。こういう仕組みもいいですね。
家政婦の待遇は、同居する家族に大きく左右され、残り物を食べさせられたり、床や台所で寝るよう指示されることもあるそうです。ペットよりも酷い扱いを受けている人も多いと言います。また、24時間雇用主の都合にあわさなければならないのも大変です。そのため、すぐに帰国するフィリピン人も少なくないと言います。また、最初に紹介された家族の扱いが悪く、退職したばあい、2週間以内に次の雇用先を見つけなければ、帰国しなければならないというルールも大きな負担になっています。最初に紹介された家庭で、1週間経っても子供が懐かなかったという理由で解雇された女性が、「子供は慣れるのに時間がかかる。1週間でクビにされるのは不当だ」と言って、美人コンテストの主催者に相談していました。香港人は、フィリピン人がそんな条件で働いていることを知らないのでしょうね。
後半は、美人コンテストの様子が、じっくり描かれ、コンテスト前のパレード、参加者のダンスパフォーマンス、コンテスト参加者のスピーチが映し出されます。彼女らは、香港での正当な待遇をもとめていました。
美人コンテストが終わって、日常生活が戻ってきました。ところが、参加者の1人の父親が亡くなったと連絡が入ります。彼女は、それでも緊急帰国することができません。これは映画でも良くあるシーンなのですが、彼女たちにとって海外で出稼ぎをするということは、親の死に目に会えないということ覚悟しなければならないんですね。実際、今でこそ平均寿命は70歳程度になりましたが、それは現在0歳の子供の話で、親の世代の平均寿命は50歳代ですから、ちょうど子供たちが海外に出るころになってしまいます。
登場人物の1人が2年契約を終えました。香港の法律では、2年の契約を終えた家政婦は、いったん帰国しなければなりません。彼女はインタビューに答え、次は日本になると思うと語りました。「日本では、朝8時から夜8時までと労働時間が決まっていて、日本人は厳格にそれを守ってくれるから」と語りました。日本にも、家政婦でビザを取ってくるフィリピン人がいるんですね。初めて知りました。
最後に、その後の彼女らの様子が手短に示され、エンディングです。
「Sunday Beauty Queen」の監督情報
本作の監督をつとめたBaby Ruth Villaramaさんは、今年公開された「Food Delivery」が非常に評判が良く注目されている監督さんです。「Food Delivery」は西フィリピン海で、中国船の脅威にさらされながら漁をする人たちを描いているようです。これは、日本でも公開される作品だと思いますので、その日を楽しみに待ちましょう。
「Sunday Beauty Queen」の作品情報
オリジナルタイトル:Sunday Beauty Queen
公開年 2016年
監督 Baby Ruth Villarama
視聴可能メディア Youtube(英語字幕)

