
フィリピンはホラー映画大国で、毎年たくさんホラー映画が制作されています。IMDbというサイトで、ホラー映画に分類されているフィリピン映画は、2024年だと14本ありました。また、驚くべきことに、大量のホラー系テレビドラマも制作されています。日本映画だと、同じくIMDbで調べると2019年の「貞子」が最後に制作されたホラー映画ですから、フィリピン人がどれだけホラー映画好きなのかがわかるのではないでしょうか。
さて、本作のオリジナルタイトルは「Espantaho」。「かかし」の意味です。父が亡くなったあと、父の初9日(フィリピンでは7日ではなく9日らしい)の期間に、正妻がやってきます。彼女は、別の女(主人公の母)を作った夫を許しておらず、彼らが住んでいた不動産の権利を取り上げようとするのですが、その屋敷のいた人に不思議なことが起こり、人々が消えていきます。亡くなった父が、家族を守っているのか・・と思いきや、予想外の展開が待っています。
「Scarecrow」のストーリー
物語は、おじいさんの埋葬シーンから始まります。おじいさんは、主人公(フリダ)の父です。物語の進行とともに、父は若いときに、自分の母(ローザ)と関係をもち、自分が産まれたことがわかります。そのことに怒った正妻は、家を飛び出し、30年間お互いの関係はありませんでした。主人公たち家族は、父の財産である古い屋敷に住んでおり、父が集めたコレクションを使って、アンティークショップを営んでいます。ある日、夫は、かかしが描かれた古い絵を家に持ち込みます。不気味な絵なので、フリダが嫌がったのですが、夫は勝手に備え付けて、何かの用事で出かけていきます。また、その時、息子にアンティークのお守りを授けます。
フィリピンでは、埋葬後9日のあいだ、毎晩死者のために聖書を朗読する習慣があるようで、毎日、近隣の人を集めて、聖書の朗読を行っています。そこに、父の正妻が子供たちを連れてやってきます。子供たちは、主人公からすると異母兄弟ですね。そんなわだかまりがあるので、正妻はすべてが気に入らず、家や畑を売り払おうと、土地などの権利書を出すよう求めます。母は、自分の立場が弱いからか、基本的に後ろに控えているだけで、正妻とは対決しようとはしません。しかし、娘には自分たちを守るために正妻と戦うべきだと主張します。また、正妻は、財産移管のための手続きのために、屋敷に滞在することになります。
最初の被害者は、店の使用人の男でした。夜に自分の部屋でゲームをしているところ、大量のバッタに襲われ、その後ゾンビのようなものに出会ったら、消滅してしまいました。その後、かかしの絵には、彼の姿が浮かび上がり、すぐに消えました。なるほど、襲われて消えた人間が絵に描きこまれるということだな、と映画の構造を理解しました。次に襲われるのは、正妻とやってきた異母兄弟の兄です。彼は天井から降ってきた大量のヒルに襲われ、姿を消しました。その次は、義理の姉です。彼女は身体から大量のうじむしがあらわれ、消えてしまいました。その他の人も同様の目に遭いますが、息子だけはお守りのおかげで難を逃れます。
物語の中盤に達する頃には、ローザは既に亡くなっており、彼女の声を聴くことができるのは、娘のフリダだけであることがわかってきます。しかし、ローサは物には干渉することができ、例えば、怒りで壊した食器などは、他人から見ると勝手に壊れたように見えています。つまり、この家で起きている奇妙な現象、虫に襲われて人が消滅するのは、母の仕業なのかな? と思わせながら物語は進みます。
(少しネタバレあり)さすがに、いろいろおかしなことが起こり過ぎるので、除霊師のような人が呼ばれます。彼女は、母の存在が見えて、母の声が聞こえているようにふるまいます。ともかく、彼女に言うには、問題は、かかしの絵であるとのことでした。その絵を描いた画家のことを聞くために、一同は専門家を訪れました。専門家が言うには、画家はモデルの若い女性に恋したが、拒否され、その後、呪いのような画風に変わっていったこと、かかしの絵を所有したものは、次々と消滅していくという歴史があることがわかります。除霊師が言うには、この呪いを終わらせるには、絵を持ち込んだ人が消滅するしかないと言います。また、専門家のところで、消えた以前の持ち主の写真に夫が写っていることが判明します。
(ややネタバレ)どうやら、夫が怪しいぞ、ということがわかってきたのと同時に、母がなぜ幽霊としてとどまっているのか? そして画家と母の関係などがやがて明らかになり、ストーリーがエンディングに向かいます。
最後まで見れば、悪党が誰であったかわかり、絵の呪いによって人が消滅することがわかるのですが、最初は亡くなった父が家族を守っているようにも見え、また、生霊としてうろついている母の仕業にも見えます。というか、最初からずっと生霊としてウロウロして、意味深にかかしの絵を切り刻んだりする母が、この消滅事件と無関係とは普通おもわないですよね。全体的に、恐怖シーンは控えめなので、ホラーが苦手な私でも問題なく見ることができました。
「Scarecrow」の作品情報
オリジナルタイトル:Espantaho
公開年 2024年
監督 Chito S. Roño
主なキャスト Donna Cariaga
Lorna Tolentino
Judy Ann Santos
視聴可能メディア Netflix(英語字幕)