
本日は渋谷のシアター・イメージフォーラムで、フィリピンのパラワン島における森林の違法伐採、違法漁業を取り締まっている民間団体の活動のドキュメンタリー映画を見てきました。タイトルの「Delikado」はタガログ語で「危険」という意味で、作中でドゥテルテ大統領だか、政治家の誰かが、彼らの活動に対して危険人物みたいな意味で使ったと思います。
映画の内容について
この映画がびっくりの内容でした。主に違法伐採者からチェーンソーを取り上げるという活動をしていたのですが、取り上げたチェーンソーを警察に引き渡していたら警察が賄賂をもらって違法業者に返してしまいます。そのうち違法伐採者が武装してくるようになります。驚くべきことに、すでにこの活動で13人が命を落としています。また、この民間団体の活動を支援していた町長は、大統領から麻薬の売人だと名指しで濡れ衣を着せられ、政府から殺害予告が出てしまう始末。もはや環境問題ではなく、社会問題です。フィリピン社会のことはある程度わかっているつもりでしたが、政治的に対立候補を落とすために、麻薬密売人というレッテルを貼り、殺害予告までしているとは知りませんでした。結局、大統領が応援している候補が選挙で勝つのですが、そのインタビューには痺れましたよ。「お金で買収したという話を聞きますが・・・」とインタビューアーが聞いたところ「フィリピンの政治家ならみんなやっている。ニーズがあるから」と開き直っていました。「そのあとで、私はやってないけど」と一応付け加えてはいましたが。
しかし、パラワン島を観光地として開発して島を発展させたい州知事の意見はある程度理解できます。エルニドやコモドのあたりは、ある程度開発を進めて、他の大きなエリアを保護地区として環境を守るなどの妥協的な取り組みはできないのかなと思って見ていました。しかし、結局は地権者が自分の土地に開発を持ち込もうとするに違いなく、空港を誘致したりと無秩序に開発されるのは避けがたいので、結局無秩序に開発して不便な観光地が廃れたり、山を禿山にしてしまってからしか、そうした現実的な妥協案を取り付けるようなことは難しいのかなと思ってしまいました。先進国はすべて、そうした苦い経験を経て、環境保護意識にたどり着いているので、今のフィリピンにそれを求めるのは難しいのかなと思いました。

上映後のアフタートーク
上演後は、この民間団体の代表によるアフタートークもありました。何と本作で取り上げられた民間団体を率いている弁護士さんが来日して、現状について語ってくれました。現在、彼はパラワン島では安全が確保できないのでマニラに住んでいるとのことでした。また、マニラだと環境について耳を傾ける人がいるので、そちらで活動しているとのことです。また、映画撮影後、また1人のメンバーが殺害され、家族のために活動から身を引く仲間も多いのだそうです。最後のあいさつのあと、会場は感度の拍手で包まれました。