アニメと実写の融合、フィリピンのアニメ映画監督の長編アニメ処女作「サリーを救え!」

アニメ映画「ニャンてこと!」についての記事にも書いたのですが、おそらく、フィリピンには、商業的なアニメ映画として、「Adarna: The Mythical Bird」「Urduja」「Dayo」「RPG Metanoia」「サリーを救え!(Saving Sally」、そして本作「にゃんてこと(Hayop Ka!)」の6本があるのではないかと思います。たった6本と思われるかもしれませんが、おそらくタイやインドネシアでも5本程度だと推測されており、フィリピンのアニメ映画6本は悪くない数です。そして、フィリピンでは現在進行中のアニメ映画企画が10本ほどあり、(そのうち何本が完成まで辿り着くかという問題はありますが)今後が期待されている分野です。その中で、本作のAvid Liongoren監督は、フィリピン人監督として最も世界的に成功をおさめているアニメ映画監督です。

ストーリー

主人公のマーティは、漫画家(と言ってもアメリカンコミックです)になることを夢見る美大に通うオタクです。彼には幼なじみの女の子がおり、その名もサリー。彼女の美大に通って、へんてこな機械を作る研究をしています。2人は一緒にコミックスを読んだり、多くの時間を一緒に過ごしています。マーティは、サリーに恋心を持っているのですが、その思いを告げることができません。いよいよ、告白しようとしたところで、彼女から衝撃の告白を受けます。「ボーイフレンドができた」と。ショックを受けるマーティですが、サリーと、そのボーイフレンドのあいだで伝書鳩のようなことをする羽目に陥ります。その後、2人の関係はどうなっていくのでしょうか・・・。まあ、予想通りの展開になりますが、あとは見て確認してください。

本作は、半分が実写、半分がアニメでできています。おそらく技術的にはそんなに難しいことはしてないのだと思いますが、非常に綺麗に融合しており、監督のセンスが光ります。特に背景が美しく、絵を見ているだけで楽しくなります。本作の中でも垣間見えますが、フィリピンはアメリカンコミックの作家をある程度排出している国です。何人が、とまではわからないのですが、アメリカの出版社と契約してコミックを書いているプロのコミック作家がいます。この辺りが、他のアジアとだいぶ違いますね。

フィリピンとファインアート

フィリピンの美術館に行くとわかるのですが、フィリピンは、アジアでも数少ないキリスト教国で、密かにアートの歴史がある国です。スペイン統治時代の初期は、ヨーロッパや南米から宗教画を輸入していたのですが、コストの関係から、やがてフィリピンで制作するようになり、いつしか他のアジアの国に輸出するほどになります。そうしたファイン・アートの蓄積があるため、現在も世界的に活躍している芸術家、アメリカ式カートゥーンですが漫画家がいるのです。なので、今までアニメ不作の地だったのが逆に意外なくらいで、今になって国としてアニメに力を入れているという訳です。なので、この監督のことは憶えておくと良いかもしれません。

出演者情報

いかにもオタクの男の子が好きそうなエキセントリックなサリーを演じた女優、Rhian Ramosは映画よりもテレビドラマで活躍している女優のようです。時々主役もやりますが、全くのわき役のこともあるという女優のようです。童貞感あふれるオタクの男の子を演じたEnzo Marcosは、俳優としての出演はほぼこれだけで、フリーランスの監督として少し作品を残しています。

作品情報

オリジナルタイトル:Saving Sally(ニャンてこと!

公開年 2021年

監督 Avid Liongoren

主なキャスト Rhian Ramos

Enzo Marcos

視聴可能メディア Netflix(英語字幕のみ)

作品トレイラー