
日本で視聴することができる主要プラットフォーム(Amazon、Netflix、U-NEXT)で、あらかた日本語字幕で見られるフィリピン映画は見ることができたと思いますので、このタイミングで、現在、『日本から視聴できるフィリピン映画のおすすめ10選』について書きたいと思います。あらためて数えてみると、予想以上に数は少なく、セクシー系映画を除くと50本程度しかありません。今回、ご紹介するのは、セクシー系を除いた10選です。セクシー系は、レンタル作品もすべて見終えた段階で、また『おすすめ10選』をご紹介しようと思います。英語字幕で見れる作品に範囲を広げると、一気に拡大して、おそらく日本から現在アクセスできる作品だけでも500本程度はあるのではないかと予想しています。英語字幕作品に範囲を拡大してからが、フィリピン映画の旅の始まりなので、時間をかけて長い旅を楽しもうと思っています。
選考において重視したのは、フィリピンらしさです。フィリピンの社会や、フィリピン人の考え方が良く表現されている作品を選びました。良くできた映画、感動的なシナリオの映画でも、それが日本の映画や他の国の映画でも代替可能ならば、わざわざフィリピン映画で見る必要がないですからね。フィリピン映画ならでは、という価値観が描かれた映画をご紹介したいと思います。また、幅広いジャンルから選考しました。アクション映画5本、社会派ドラマが2本、ホラー1本、ラブロマンスを2本選びました。アクションでは、フィリピンらしく、腐敗した社会の中で生き残りをかけた容赦無用のアクションを、社会派ドラマではそうした社会の中でたくましく生きる庶民を見てもらいたいです。また、ホラー映画はフィリピンの大きなジャンルですから、その中から1本。また、フィリピンらしい恋愛観がわかる映画も2本選びました。では、それぞれを紹介していきます。
1.アルファ、殺しの権利
最初に紹介するのは、ブリランテ・メンドーサ監督の「アルファ、殺しの権利」です。これはドゥテルテ大統領時代に行った麻薬戦争の様子を描いたものです。やはり、フィリピンの実際の事件を扱ったというのが良いですし、麻薬の売人・依存者たちを容赦なくせん滅していくという、フィリピンでしかありえないことが、実施される様子を見るのは、すごい体験です。また、フィリピンらしく、こんなせん滅作戦のさなかに、麻薬をネコババしようとしている汚職警察官がいたり、厳重に麻薬管理された街中で、売人たちがしたたかに麻薬を運ぶ姿もフィリピンらしいです。監督もフィリピンの映画監督として、最初に覚えるべき名前ですので、本作をフィリピン映画の最初の1本に選ばれたらいかがでしょうか?
2.アサルト-狙撃兵-
「アルファ、殺しの権利」は麻薬戦争をテーマにしていますが、本作はフィリピンのイスラム地区の反乱に対する陸軍の制圧作戦からはじまった、マフィアとの殺し合いを描いたものです。本作の方が、娯楽映画よりです。例によって、政府が腐敗しているので、誰か敵で、どこに敵がいるのかがはっきりしません。また、日本の映画ならば見逃される敵も、かならずとどめを刺されます。日本とは全く異なるフィリピンの死生観、正義感を味わって欲しい映画です。
3.義足のボクサー GENSAN PUNCH
フィリピンと言えば、ボクシングも有名ですが、フィリピンのローカルなボクシングジムのことを知っている人は多くはないでしょう。本作は、義足になってしまったため、日本でプロライセンスが発行されず、フィリピンに渡ってプロボクサーになった日本人の実話に基づいた映画です。特別、世界チャンピョンになるようなボクサーじゃない普通のボクサーが、フィリピンのボクシング界で、どうやって練習して、マッチメイクして、試合を開催するのか、非常に興味深い作品でした。その中で、ジムの会長が主人公のことを実の息子のように扱い、日本のボクシングコミッショナーに訴えるシーンが涙を誘います。ブリランテ・メンドーサ監督の作品です。
4.クロスポイント
ひとつフィリピンと日本の共同映画を紹介します。やはり舞台が日本になると見やすいですし、そこにフィリピンと言う要素が加わることで、フィリピンらしさが際立ちます。落ちぶれたフィリピン芸能人が、日本に出稼ぎにきて、殺人犯への復讐劇に巻き込まれるはなしです。日本の暗い物語に、フィリピン人の明るさを加えた興味深い作風で、今後の共同映画の可能性を見せてくれました。
5.レオノールの脳内ヒプナゴジア(半覚醒)
我々が、フィリピン映画に何を求めているかというと、完成度の高い作品でも、感動的なストーリーでもないですよね。おそらく、かつての香港映画のように謎にパワーにあふれている、トンデモないものではないでしょうか。本作は、まさにそのような映画です。まず、72歳の小太りのおばあさんが、アクション映画の脚本家で、なぜか自分の作品の中に入り込むこととなり、自分の創作したアクションスターを助けるというストーリーです。とは言え、脱線することが多く、すぐに何が起こっているのかわからなくなります。こうした粗削りな映画をぜひ楽しんでもらいたいですね。
6.ローサは密告された
本作は、社会派映画です。麻薬戦争のさなか、麻薬を売って生計を立てていた雑貨商を営む家族が、警察にお金を巻き上げられる話です。そのお金を工面するために、家族であらゆるところをかけずります。フィリピンという福祉が未発達な社会で、庶民がどのように急な出費に対応するか、どのような対応をされるのか、汚職警官たちはどのように振舞うのか、という庶民の生活ぶりを見ることができて、非常に興味深い作品でした。監督は、またしてもブリランテ・メンドーサ監督です。
7.イエロー・ローズ 希望の歌
本作は、アメリカに不法滞在者として住んでいるフィリピン人の物語です。彼らが、どのようにアメリカで過ごしているのか?他のフィリピン人たちとどのように助け合っているのか?助け合っていないのか?そうした不安定な身分の少女が、どこに居場所を見つけるのか?と言うことが描かれます。アメリカ化したフィリピン人少女を演じる女優が、本当にすばらしかったです。また、アメリカのカントリーミュージックも本作の大きな柱で、ノスタルジックな感傷を誘います。
8.アウトサイド
フィリピンでは、ホラー映画は大きなジャンルですので、その中から1つ紹介したいと思います。ゾンビ系ホラー映画ですが、ゾンビから家族を守るストレスと、立てこもった実家で虐待されていた思い出のストレスで、どんどんおかしくなり、ゾンビよりも家族にとって脅威となるおとうさんの話です。これが、本当に自然におかしくなっていき、見ている人に恐怖を誘います。外にゾンビ、うちにおかしくなったお父さん。想像するだけで、絶望的な状況です。
9.Hello, Love, Goodbye
フィリピンと言えば、恋愛映画と言われるくらい、フィリピン人向けにたくさんの恋愛映画が制作されています。しかし、完全に2人の世界といった作風で、社会の中で2人の関係を育む日本人のスタイルとかけ離れており、なかなか楽しめないのが現実です。ところが、本作はフィリピンの恋愛映画に新しい風を吹き込んだ作品です。本作の登場人物は、ただ2人だけの恋愛関係だけでなく、社会の中で自分の果たしている役割や、将来の実現したい夢などとの関係で、恋愛を育んでおり、時に苦悩します。そうしたリアルな若者の恋愛を、香港という舞台で爽やかに描いた作品です。フィリピン恋愛映画の金字塔ですから、ぜひ見て欲しいですね。ちなみに、本ブログで最初に紹介した作品でもあります。
10.セックスの才能
タイトルはエロ系映画みたいですが、実は裸すら出てこない純粋な恋愛映画です。しかも、風俗嬢を好きになってしまったもてない男という、世界共通のテーマを、フィリピンの社会の中で描いてくれています。金もない、覚悟もない男の視点から見えるフィリピンの景色を眺めながら、フィリピン女性が男に何を求めていたのか、彼に何が足りなかったのかを考察するのは、非常に興味深いことでしょう。誰もがやってしまいそうなダメなことをする主人公が愛おしくなることは間違いありません。
まとめ
いかがだったでしょうか。検索でひっかかる「フィリピン映画のおすすめ」は、すでに日本のプラットフォームから視聴できなくなっている作品を紹介していることが多く、あまり役に立ちませんね。また、明らかにフィリピン映画を数本見ただけで、その数本を紹介しているサイトも散見します。本サイトでは、現在、日本から、日本語環境で視聴できるフィリピン映画をおそらくすべて見たうえで、おすすめ作品をご紹介しています。また、様々なジャンルからバランスよく選出したつもりですので、興味のあるジャンルから1つでもフィリピン映画を視聴してもらえると、私としてはとてもうれしいです。