44人もの警察特殊部隊を失ったママサパノの衝突を映画化「Mamasapano: Now It Can Be Told」

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本作は、フィリピン国内で大きな問題となったママサパノの衝突を映像化したものです。フィリピン国家警察は、指名手配中のマレーシア人テロリストを殺害するための作戦を実施します。そして、殺害が達成できたあと、部隊が孤立してしまうのですが、様々な問題により救援部隊を送ることができず、さらに救援部隊がすぐに到着するという誤ったメッセージを送り続けたため、44人もの隊員が殉死したという事件です。映画の中では隊の中で生き残ったのはたった2人でした。この大きな犠牲の責任を、現場責任者に押し付けようと査問委員会を繰り返す警察組織や、政治利用しようとする大統領などが描かれ、現場で戦った隊員の怒りを買ってしまいます。

と、映画の背景やストーリーを見ると良さそうに見えるのですが、本作には致命的な問題がいくつもあります。映画の核心は、壊滅した隊がどのような状況にあったのか、どうして援軍が到着できなかったのか? また、誰が判断を誤ったのかが、作中に見えてこなければなりませんが、まったくわかりません。8つの部隊が展開していると作中で述べられていましたが、どれがどの隊なのか? どの隊が壊滅しかかっているのか? 今映っている隊は救援に向かおうとしている隊なのか?それとも壊滅しかけの隊なのか、それがわかりません。当然みなが同じような恰好をしており、同じような場所で戦っています。観客に状況を理解させるための仕掛けがありません。また、隊は、上層部や他の隊から来るメッセージに従って行動するのですが、それが誰なのか?どの男が判断をあやまり、それが査問委員会で責任逃れをしようとしている男なのか、否か? が全く読み取れません。そういう関係がわかるような工夫もされておらず、よくわからない名前がただ耳を通過するだけです。

結局、肝心の事件の核心部分がしっかりわかるような映画的なしかけを作らず、ただただ、戦闘シーンを描き、誰かがテロリストを撃ち殺し、また撃ち殺されるシーンを続けるだけになってしまっています。また、これは制作者側の問題ではありませんが、Netflixの字幕がいい加減で、明らかにタガログ語交じりの英語で喋っているところでも英語字幕がつきません。また、警察の特殊部隊や幹部たちは、ちゃんとした英語を喋れるわけではありませんから、何を言っているのか非常にわかりずらいです。明らかにタガログ語だけで喋っているシーンにのみ英語字幕が付されており、会話全体の50%程度しかありません。この複雑なドラマを、観客に理解させようという気持ちがない適当な仕事です。

題材は面白く、もっとしっかり作りこめば、かなり面白い、外国人の鑑賞に堪える作品になったと思いますが、制作者と字幕を付けた人のいい加減な仕事により、そのポテンシャルを活かせない作品となってしまいました。

(Photo cited from ABS-CBN)

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「Mamasapano: Now It Can Be Told」のストーリー

最初は夜襲のシーンから始まります。これもフィリピン映画あるあるなのですが、画面が真っ暗でほとんど何も見えません。ずっと夜襲のために展開する隊員たちを描きます。会話から、すでに作戦には10回失敗しており、次の失敗は許されないと語られます。また、本作では展開する部隊のシーンと、査問委員会のシーンが交互に映し出されます。査問委員会では、指揮官がなぜ隊を全滅させるに至ったかが問われ、指揮官が状況を説明します。

指揮官と言っても現場にはおらず、遠隔で指揮をとっておりました。彼は、軍との共同作戦を提案しており、それに対して肯定的な返事をもらえたものの、結局実現しなかったことを理由の1つに上げます。現場のリーダーのような男は、すでにターゲットを殺害したので撤退することを進言しますが、明確な指示が出ず、隊は現場に留まることになります。やがて、隊はスナイパーに囲まれて、狙撃され始めました。判断を仰ぐ隊に対して、指揮官の指示は「何とかしろ」でした。そのうち、休戦協定の会議が始まるということで、隊に安堵の空気が漂います。

停戦の会議のシーンになりますが、誰がどの立場で喋っているのかわかりません。イスラム帽子をかぶっているのがテロリスト側なのかとも思いましたが、両側にイスラム帽子を被った男がいます。どちら側も指導者のような男の英語のなまりが強すぎて、要点を掴むこともできないまま終わります。しかし、一応停戦合意はできたようです。

取り残された隊は、停戦合意の報を受けて安堵します。また援軍が来ると言うので茂みに身体を隠して休んでいるのですが、いきなりテロリスト側が接近して発砲してきました。おそらく停戦の開始について双方に齟齬があったようです。そこからは、隊はひたすら壊滅にむかって次々と隊員を減らしていくシーンが続きます。作中で確認された、生き残った男は2人です。1人は服を脱いで脱走し、川に潜んでやり過ごしました。しかし、のちに近くの民家のモスクで4人を殺害したため軍事裁判にかけられることになりました。もう1人はどうやって生き延びたかは描かれていません。

その後は、大統領からの事情聴取です。同時の大統領ペニグノ・アキノ3世は、本事件の問題がどこにあったのかを追求しようと事情聴取しますが、下級兵士たちが、「なぜ自分たちを非難するのか? 自分たちは崇高な使命のために命を落としたのに」みたいな感情的な反発をして、警察幹部の責任者を追及するのがうやむやにされ、隊員のヒロイズムのような話に置き換えられて、この事件は終結してしまうのでした。私はヒロイズムに置き換えられてしまう悲劇と解釈しましたが、監督が本気で国家への愛、ヒロイズムをテーマにして本作を撮ったという可能性もあります。

ママサパノ衝突の実際

実際のママサパノ衝突について、ネットで調べた情報をもとに要約します。

ママサパノ衝突は、2015年1月25日、当時は未分割のマギンダナオ州(現在のマギンダナオ・デル・スール州)であったママサパノ郡トゥカナリパオにおいて、フィリピン国家警察(PNP)の特別行動部隊(SAF)による警察作戦中に発生した銃撃戦です。「オプラン・エクソダス」とコードネームが付けられたこの作戦は、指名手配中のマレーシア人テロリストで爆弾製造者のズルキフリ・アブディール(通称マルワン)をはじめとするマレーシア人テロリスト、またはモロ・イスラム解放戦線(MILF)の幹部を捕獲または殺害することを目的としていました。

当初は高位テロリストの逮捕状を執行する任務でしたが、マルワンはFBIの最重要指名手配犯の1人でもありました。SAF部隊はマルワンがいるとみられる小屋を急襲し、マルワンとみられる男は銃撃戦の末に死亡しました。SAFは当初、身元確認のために遺体を収容する予定でしたが、この銃撃により、現場付近にいたバンサモロ・フィリヒ・フセイン(BIFF)とMILF第118司令部に警戒が広がりました。

標的が無力化された時点で、作戦自体は成功と宣言されました。警察官たちの置かれた状況の深刻さから、政府の和平委員会が介入し、MILFに停戦を要請しました。フィリピン軍(AFP)も、敵に包囲されていた残りのSAF生存者29人を救出するための救出作戦を実施しました。しかし、救出作戦は成功せず、この作戦でSAF隊員44名、MILFとBIFF隊員17~18名、民間人5名が死亡しました。

SAFメンバーの1人と思われる人物が殺害された動画がYouTubeに投稿されましたが、その後サイトから削除されました。また、この動画はソーシャルメディアサイトFacebookにも投稿されました。

衝突が発生した地域の村民との関係修復を図るため、政府は2015年、44人の警察官が殺害された畑の近くの川に橋を建設し始めた。この橋は「平和の橋」と名付けられた。

「Mamasapano: Now It Can Be Told」の監督情報

本作の監督を務めたLester Dimarananさんは、本作が3作目の長編映画でした。前2作は、こぶりのスリラー映画で、本作のような複雑な状況を描くには経験不足でした。初監督作品「Lukas」は非常に評価の高い作品だったので抜擢されたのだと思います。本作で大作路線はあきらめたのか、今年公開される新作はラブストーリーです。

「Mamasapano: Now It Can Be Told」の作品情報

オリジナルタイトル:Mamasapano: Now It Can Be Told

公開年 2022年

監督 Lester Dimaranan

主なキャスト Edu Manzano

Alan Paule

Aljur Abrenica

視聴可能メディア Netflix(英語字幕のみ)

「Mamasapano: Now It Can Be Told」のトレイラー

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