日本でも婚活の場において、年収の高い男を選ぶか、優しくて時間に余裕がある男を選ぶかなどが議論されますが、フィリピンでは、このテーマはもっと重大な選択です。フィリピンでは経済格差が大きいので、熱心に愛をささやくが貧乏な彼を選んでしまうと、一生貧乏に喘ぐことになってしまいます。一方で、金持ち、あるいは金持ちの外国人は、貧富の差が大きいために、貧しい者たちを低く見て、物のように扱う傾向があるため、それはそれで苦しい思いをすることになります。この問いには正解がないので、今後もずっと同じテーマで物語が作られ続けるでしょう。とは言え、最近はフィリピン人と結婚する外国人も、だいぶマイルド化しているおり、そんなに金持ちではないけど優しい人へと変わってきているので、こうしたドラマも成立しなくなってくるかもしれません。本作も、典型的な大金持ちだや暴君の外国人と、優しいけど貧しいフィリピン人のあいだで揺れ動き、大きなトラブルへと発展する女性の物語です。

(Photo cited from IMDb)
「Love or Money」のストーリー
舞台はドバイです。私はドバイにも行ったことがあるので、懐かしい景色がたくさん見れて楽しかったです。しかし、その場所はもっと混んでいるよ、とは思いました。男(レオン)は、レストランで働いています。彼は昔の彼女のことが忘れられないという描写があります。ある日、彼は自分のレストランで働いていると、西洋人の老夫婦が大喧嘩しているのを見かけます。そして、こそこそとその場から逃げる女を見つけました。それが、レオンが未だ思い続けている元彼女(エンジェル)でした。すぐに、レオンは彼女を追いかけます。そして、彼女が初老のスペイン人の大富豪(エンリケ)と交際しており、入籍間近であることを知ります。先ほどの老夫婦の大喧嘩は、エンリケと別れようとしている妻の口論なのでした。また、エンジェルはエンリケから出資してもらったお金で、フィリピン人向けのツアー会社を運営しています。そんなわけで、エンジェルは、レオンの気持ちを軽くあしらいます。また、レオンの「将来はフィリピンで小さなレストランを持ちたい」という夢を笑い飛ばし、「ここはドバイなのだからもっと大きな夢を持ちなさい」と言います。
その後も、レオンは愛のあるささやかな幸せを彼女に説きますが、「それはあなたが、フィリピンでは稀な幸せな家庭で育ったから」、「私の家は、健全な家族ではなかった。私が稼がなければ家族は生きていけない」と吐き捨てます。以前、エンジェルがレオンの元から去ったのは、お金の問題を解決するためだったこともわかります。その後も、レオンの愛情表現は、しつこく付きまとうというフィリピンスタイルで、日本人ならうんざりでしょうが、エンジェルは少しずとレオンへと傾いていきます。また、エンリケが離婚問題を解決するために、長期スペインに帰ったときには、レオンはエンジェルの仕事を手伝い、かなり打ち解けた関係に戻ってしまいました。しかし、エンジェルの会社のスタッフが、レオンに忠告します。「あなたもわかっているでしょう。近々エンリケが帰ってくるわ。もうやめておきなさい。あなたがやっていることは、エンジェルとエンジェルの家族からすべてを奪うことになるのよ」と諭します。レオンは、その忠告を理解し、いさぎよく身を引きます。
しかし、エンジェルが捻挫のため動けなくなってしまいました。これは運命よと囃し立てる友達に後押しされ、再びレオンの付きまといが始まります。レオンの熱心な献身がついにエンジェルを変え、2人は恋人関係に戻ってしまいました。これが映画の後半ならば心配もないのですが、まだ中盤です。もはや嫌な予感しかしません。
(少しネタバレ)当然、ドバイに戻ってきたエンリケは大激怒。エンジェルの会社は、多額のエンリケに負債をおうことになりました。2人は何とかお金を工面しようと頑張っていたのですが、エンジェルの家から電話がかかってきます。「母親が心臓発作で入院した。お金を今すぐ送って欲しい」と。エンジェルは、借金のため出国禁止令が出ており、フィリピンに帰ることも、逃げることもできません。すっかりパニックになったエンジェルのために、レオンは危ない仕事に手を出すことを決意します。貧しいフィリピン人は、こうやって容易に犯罪に手を染めてしまうところを、私は嫌っているのですが、他に選択肢がないのも事実。だったら、最初からそんなに大きな借金を背負う可能性がある事業に手を出さず、身の丈にあった豊かさを追えばいいじゃないかとは思います。
その危ない仕事というのは、はっきりと描写されませんでしたが、おそらくドラッグを運ぶことでした。しかし、必死でレオンを止めようというエンジェルの電話に応えているうちに、警察がやってきて現場を取り押さえ始めました。もたもたしていたレオンは幸運にも巻き込まれずに済みました。中東諸国だとドラッグ関係の犯罪は、死刑であることが多く、これはレオンにとってラッキーでしたね。そんぶん成功すれば見返りも大きかったのかもしれませんが。
(ネタバレ)結局どうにもならなくなったレオンは、エンリケにエンジェルを助けるよう懇願にいきます。当然、エンリケはまったく相手にしません。しかし、その後レオンはエンリケの事務所に忍び込み金を盗もうとしたところをひっとらえられます。レオンは、エンリケの手下にボコボコにされ、エンジェルが呼び出されます。そして、エンリケはエンジェルに選択を迫ります。「自分のところに戻ってくるか、こいつを砂漠に埋めるか」と。エンジェルはエンリケに従うしかありませんでした。
次のシーンは3年後です。レオンはフィリピンに戻り、田舎で小さなレストランを経営しています。そこに、ドバイ時代の友達から電話がかかってきました。レオンにプレゼントを贈ったから楽しみにして待って欲しいとのことでした。レオンは、エンジェルのことを尋ねますが、友達は「良く知らない」と答えます。そこに、エンジェルがあらわれます。しかし、レオンは気づかず、店の中で幸せそうに妊婦のお腹をさわっています。エンジェルは、この3年のあいだにレオンに妻ができたことを悟り、そっとその場を去ろうとしますが、レオンに見つかってしまいました。気まずそうに振舞うエンジェルに対して、レオンは自分の兄弟と、その妻を紹介します。その妻こそが、さきほどの妊娠した女性でした。エンジェルはその後精神的に不安定になり、結局エンリケと別れたのだそうです。2人は再び抱き合います。そしてエンドロールです。
しょうがない部分があるのはわかるのですが、フィリピン人の犯罪への意識の違いはやっぱり気になってしまいます。フィリピン人は、貧しいのだからお金持ちから盗みを働いてもいいという感覚が根底にあり、クリスマスシーズンなどは窃盗や強盗が頻発します。貧しい自分たちにも楽しいクリスマスを送る権利があり、それは神様も許してくれるはずだという感覚があるのは、日本人的には馴染めないですね。この倫理観の違いが良くあらわれている映画でした。
「Love or Money」の監督、出演者情報
本作の監督を務めたMae Cruz-Alviarさんは、フィリピンでは2番目のヒットメーカーの監督さんと言えるでしょう。彼女の代表作「Rewind」は、フィリピンの歴代共興収入2位です。「Can’t Help Falling in Love」もそれなりにヒットしています。本作のキャストは豪華で、主役のエンジェルを演じたAngelica Panganibanさんは、「ドラマの女王」的なポジションの女優さんで、レオンを演じたCoco Martinも国民的スターです。2人が主役で、ドバイを舞台にするという豪華なセッティングですから、ヒットが約束されていた映画ですが、残念ながら公開がコロナの時代だったため目に見えるヒットを打ち立てることができませんでした。
「Love or Money」の作品情報
オリジナルタイトル:Love or Money
公開年 2021年
監督 Mae Cruz-Alviar(Rewind)(Unbreakable)
主なキャスト Angelica Panganiban(ニャンてこと!)(Love Lockdown)(Unbreakable)(Beauty in a Bottle)(That Thing Called Tadhana)
Coco Martin(サービス)(Red/Pula)(キナタイ -マニラ・アンダーグラウンド-)(You’re My Boss)
視聴可能メディア Netflix(英語字幕のみ)