フィリピンで自閉症の子供を育てるのは大変というお話「Love Child」

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フィリピンは、国の発展度に比べると、障害者の社会的受容が進んでいる国だと思っています。例えば、車いすの人や知的障害の人が、家族や介護人と一緒にショッピングモールで見かけることも多く、韓国でもほとんど見かけないと言われていますのでだいぶ違うなと思います。私も仕事柄訪れたことがありますが、知的障害や発達障害の子供に対する施設、教育施設も他の東南アジアに比べると充実しています。自閉症をテーマにした映画も途上国の中では抜きんでて多いと思います。社会の関心が高い証拠ですね。とは言え、日本や西洋諸国と比べると障害者へのサポートは十分ではなく、やはり利用にはお金がかかるので、両親は大変だよというのが、本作品の描くところでした。それでも、父親が自分の夢をあきらめても、子供がほんの少しずつ成長していく様に感動するシーンが感動的でした。

(Photo cited from IMDb)

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「Love Child」のストーリー

自閉症のひとり息子を持つ両親が、田舎に引っ越してくるシーンから始まります。のちに、この場所はネグロス島のバコロドだとわかります。改めて調べてみると、相当田舎ですね・・・。夫は映画の仕事をしたいと思っており、車に簡易のスクリーンを設置して映画カフェを運営しています。著作権にどうなんだと思いましたが、デパートで偽ブランド商品を売っているような国なので、そんなことは誰も気にしないでしょう。妻は司法関係の仕事をリモートでしています。弁護士になるのが夢だと途中で語られます。2人は自分たちが「パワーカップル」だと呼ばれていると語ります。つまり、平均よりはだいぶ経済力のあるカップルでも、自閉症の子供を育てるのは、経済的に破綻するほど大変と言うお話です。

最初から子育てに対する夫婦の考えは、少しだけ違っています。夫は身体的な発達重視、妻はしつけ重視です。まあ、この程度の考えの違いがない夫婦はいないでしょう。両親は、まず子供を通わせる特別支援学校を訪問します。こういうのが田舎にもあるところがフィリピンの凄いところですね。タイでさえ、全国に6つしか特別支援学校がないと聞いたことがあります。とは言え、フィリピンの問題はアメリカの影響を受けていて、非常に高額なことのようです。子供の発達には、少人数クラスが良いと勧められるのですが、年に7万5000ペソのお金がかかります。さらに、学校で1対1でケアしてくれるセラピストを雇うと週に1500ペソ。また、自宅でもセラピストを雇うことを勧められ、それが月に1万5000ペソかかりました。

妻は心労からオンライン会議中に寝てしまったり、納期に仕事がまにあわなかったりと仕事にもほころびが見えてきます。上司に泣きながら、自閉症の子供を育てるのは大変と説明したのですが、「それは関係ない。あなたが自分の状況にあった仕事の仕方をすれば良いだけ」と言われます。まあ、その通りなのですが、状況的に辛いですね・・・。

さらに悪いことに、子供が熱を出してしまいました。デング熱の検査が高いらしく、病院への支払でついに夫婦は経済的に破綻してしまいました。夫は友達や兄弟に電話をかけてお金を借りたのですが、妻が自分の母から支援してもらい、なんとか病院の支払をおえていました。夫は明らかに不機嫌になります。どうやら、自閉症の息子が産まれたときに、妻の母は、彼を孫と認めなかったことがしこりを残していたのです。もう2人は精神的に限界です。妻は「私は愛を信じたのが間違っていた。私たちにはそんな余裕はなかった」と泣きじゃくります。

さっきの修羅場をどう乗り切ったのかわかりませんが、次は子供の発表会のシーンです。子供は新しい学校でそれなりに成長していて、大した役を演じることはなかったのですが、それなりに他の子供たちと協調して演劇を演じ切ることができました。両親は号泣です。その場で、他の親御さんの話を聞きました。その家庭では、子供に自閉症に特化した教育を受けさせるために、家族2人が海外で働いていることを聞きました。そんな話を聞いていると、子供が勝手に外に出て行ってしまいました。驚いて探し回る両親。子供はプールで遊んでいました。抱きかかえる父親に対して、子供は初めて言葉を発しました「パパ」と。もう、両親は大感動です。3人は抱き合いながら、「もう1度パパ」と言ってと繰り返します。

結局、父親はオーストラリアに働きに出ることを決意しました。彼は映画業界で働きたいという夢があったのですが、今は子供を成長させることが彼の夢で、「自分たちの子供は他の子供よりもゆっくり成長することが、自分にとって幸せだ。長くあかちゃんの親でいられるのだから」と語ります。父親はオーストラリアの叔父とも確執があったのですが、「これは確執を乗り越える機会だと思う」「フィリピンでは、自閉症の子供を持つためには、大きな家族で育てる必要がある」とも語ります。結局、妻と息子は妻の実家に同居することとなりました。父親はオーストラリアに旅立ちます。

最初から最後まで、いいお父さんでした。多少不貞腐れたり、口論するシーンもありましたが、夫婦のあいだで考え方が違うことはしょうがないことなので、この程度の口論を避けることは誰でも不可能でしょう。むしろ、夫婦のあいだの口論の90%はお金が理由と言われていますから、この状況でよく踏ん張ったと思います。自分なんて苦労もなく生きており、申し訳ない気持ちになりました。

「Love Child」の監督、出演者情報

本作で監督をつとめたJonathan Jurillaさんは、本作が映画作品の監督2作目です。ヒューマンドラマをたくさん撮ってきたような作風ですが、意外ですね。しかも、1作目がホラーです。この監督についてはほとんど情報がありません。夫婦を演じた2人はどちらも多くの作品に出演していますが、主演クラスではなく、全く覚えがありませんでした。こういった地味なヒューマンドラマを演じるには、このクラスの役者の方が良いですね。

「Love Child」の作品情報

オリジナルタイトル:Love Child

公開年 2024年

監督 Jonathan Jurilla

主なキャスト Jane Oineza

RK Bagatsing

視聴可能メディア Netflix(英語字幕のみ)

「Love Child」のトレイラー

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