たくさんのラブロマンス映画が作られているフィリピンでは、あらゆるパターンのカップルが考案されています。今回は、司祭になることを定められた神学校の生徒が、その将来を失うこともいとわないほど、女性を好きになったらどうなるか、を描いたものだと思います。フィリピンならではのアプローチですね。清らかな気持ちになる作品で、ルソン島南部のマヨン火山あたりを舞台にしており、とても美しい風景も印象的でした。

(Photo cited from IMDb)
「I love Lizzy」のストーリー
マヨン火山の見える田舎町に、ひとりで旅行に来たのが本作の主人公、ジェフです。彼は、その夜近所の若者たちの飲み会に合流して、ヒロインのリジーと出会いました。リジーは、最初からご機嫌で、ジェフのことを「ポギー(ハンサム)」と言って誘いました。ところが、リジーは泥酔状態で、さんざんジェフにベタベタしたのち眠ってしまいます。
翌日、リジーはツアーガイドとしてあらわれます。2人は観光に遊びにと、毎日を楽しみ、リジーは毎晩意識を無くすまで酔っ払います。フィリピン映画あるあるですが、ゲロを吐くシーンが本当に多いですね。ギャグなのでしょうが、本作では酔っ払ったヒロインがお漏らしするシーンまでありました。フィリピンらしくはありますが、日本ではあまりウケなさそうなシーンです。
野原や小川をバギーで駆け回るシーンがありましたが、いいですね。私もボホールでやりましたが、こちらの方が自然の多いコースを走るので楽しそうです。やがてわかったことですが。ジェフは神学生でした。ジェフはリジーの友達らから、「ファザー」と呼ばれます。
2人は徐々にツアーガイドと客の関係を超えて、それぞれの家族関係を語るようになります。2人とも複雑な家族関係を抱えていました。特にリジーの大酒飲みは、亡くなった父親が、酒を飲んでいるときだけ「お前はやっぱり俺の娘だ」と褒めてくれるので、酒を飲むようになったのだそうです。
(そろそろネタバレ)結局2人は、身体の関係にまで発展します。しかし、やがて司祭になることがわかっているジェフは結婚することができません。リジーの家族には反対されます。しかし、ジェフの決意は固く、マニラに戻って神学生の立場をあきらめることを伝えることとしました。「必ず帰ってくる」と言って、ジェフはマニラに旅立ちます。その夜も電話で仲良くお喋りしたあと、リジーは「これが最後」と言って友達と飲みにいきました。そして、泥酔して帰る道の途中で車に轢かれてしまったのです。
(ネタバレ)リジーは意識をずっと失ったままでしたが、奇跡的に意識を取り戻し、その後、自分の身体を回復していきます。ところが、意識を回復して気づいたことは、ジェフからの連絡が全くなかったことです。泣き暮らすリジーでしたが、やがて待っていてもしょうがないと、新しい恋に向けて動き出します。結局、出会った男と結婚することになりました。結婚式の書類の提出のため教会を訪れたところ、リジーは司祭になったジェフに出会います。ジェフは過去について何も語りませんが、自分には聞く資格があると迫るリジーに対して、ジェフは重い口を開きました。
ジェフは、リジーが事故にあってすぐに連絡を受けて、病院に駆け付けていたのです。そこで、医師から助かる可能性はほとんどないと言われ、近くの教会でやさぐれ、神を罵倒しました。しかし、ジェフは、リジーが回復するための奇跡を起こせるのも神だけだと気づきます。彼は再び神に祈り、「もう2度と神に背くようなことはしないので、リジーを助けて欲しい」と祈りました。その後、病院に戻ると、リジーが奇跡的に持ち直したことを医師から聞かされました。それが事の顛末でした。リジーは自分が愛されていたことを知り、涙で感謝します。
最後のシーンはリジーの結婚式です。彼女らの式の司祭を務めたジェフの眼にはうっすらと涙が浮かんでいました。おしまいです。
後半はちょっとウルっときました。クリスチャンではない日本人には描けない映画でした。それに、自分の好きな女を陰から見守るというのが、日本人好みの設定です。フィリピン恋愛映画の中では、わりと中高年男性にもおすすめできる作品です。
「I love Lizzy」の監督、出演者情報
本作の監督をつとめたRC Delos Reyesさんは、一流の監督さんとは言えませんが、その予備軍くらいにはいる監督さんではないでしょうか? どの作品にもそれなりの見どころがあります。そのうちヒット作や名作を生みだしそうな気がします。注目しましょう。ジェフを演じたCarlo Aquinoさんは、フィリピン人ならば誰でも知っているような国民的な俳優さんです。一方で、リジーを演じたBarbie Imperialさんは、そこまで有名な女優さんではありません。しかし、本作の翌年にも、同監督のもとで「Whispers in the Wind」の中で、同じくCarlo Aquinoさんと主役を演じています。
「I love Lizzy」の作品情報
オリジナルタイトル:I love Lizzy
公開年 2023年
監督 RC Delos Reyes(Unravel: A Swiss Side Love Story)(霊媒は恋の始まり)(アルター・ミー: 心に耳を傾けて)(旅の先に)(Fuchsia Libre)(Whispers in the Wind)
主なキャスト Carlo Aquino (Bata bata paano ka ginawa?) (Love You Long Time)(Seasons:めぐりゆく季節の中で)(クロスポイント)(セックスの才能)(Third World Romance)(The Missing)(GOYO 若き将軍)(Hold me close)(Whispers in the Wind)
Barbie Imperial(Whispers in the Wind)
視聴可能メディア Netflix(英語字幕のみ)