フィリピンにはたくさんの少数民族が住んでおり、時々彼らの生活ぶりにフォーカスした映画が制作されますが、本作はまさにその手の映画です。今回フォーカスされるのは、ミンダナオ島のセブ湖周辺に住む（ミンダナオ島南西部）T’boli族です。彼らは、鮮やかな織物で有名らしく、本作も織物の話を中心に展開していきます。本作は２０１５年の愛知国際女性映画祭で「カナ 夢を織る女(ひと)」という邦題で上映されたようです。
(Photo cited from IMDb)
「K’na the Dreamweaver」のストーリー
序盤は、T’boli族の質素な生活が描かれます。藁と木でできた質素な家に住んでおり、手作りの道具を使って素朴な生活を営んでいます。村の特産物は、カラフルな織物です。アバカというバナナに似た植物の繊維を使って織り上げられます。大きな植物のようで、繊維は太く、長いことがわかります。どうやって、カラフルな色に染め上げるのかも注目して見ていましたが、染色のシーンはありませんでした。主人公のカナは、族長の娘で祖母から織物を教えてもらっています。また、この手の映画では定番ですが、家での出産シーンがあります。
ある夜のこと、村で火事がありました。村の者によると、この村と対立する北の村が放火したのを見たとのことです。若い衆はいきりたち、復讐に行くことを主張しますが、「それでは戦争になる」と族長が抑え込みます。また、北の部族は、３倍の兵士を所有しているのだそうです。
村には伝説があり、「夢を織るもの」と呼ばれる娘が、夢でみた図柄を基に織り上げ、対立する部族に嫁入りすることで、２つの部族に平和をもたらしたと言われています。それがカナの祖母でした。「夢を織るもの」がいなくなると、村人は夢を見ることができなくなると言われています。
カナには、恋人がおりました。作中で、男がカナに告白し、彼女はそれを受け入れいました。
そんなある日、祖母が亡くなってしまいました。遺体は藁のようなものでグルグル巻きにされ、いかだでどこかに運ばれました。最後どうなるのだろうと思いましたが、はっきりしませんでした。その後、藁でグルグル巻きにしたものを木に吊るすシーンがあったので、これが遺体だったかもしれません。
（ネタバレ）祖母が亡くなってほどなく、北の部族の族長たちが、カナの村を訪問します。「夢を織るもの」が亡くなったことで、和平条約は期限切れになったというのです。結局、「夢を織るもの」の後継者であるカナを北の部族の族長の息子に嫁がせることが決まりました。当然、カナはショックを受けて、村を飛び出します。カナの彼氏も、それに従いますが、見つかって家に連れ戻されます。
父は、自分たちは族長の家族であり、部族に対して責任がある、そして「夢を織るもの」である族長の娘には平和のために役割を果たす義務があると、カナを諭します。
一方、カナの恋人の男は、密かに村の男たちに救い出されます。その夜、主戦派の若い衆と共に、北の村からきた使者に襲い掛かりました。２つの部族の服装が同じなので、どちらの被害が多かったのかわかりませんが、北の族長の息子が「すでに結婚が成立し、和平が成立した」と言って介入したことで、戦いは終わりました。
その後、婚礼の儀式が行われ、カナはカヌーに乗って北の村に嫁いでいきました。ある日、カナは南の村から訪れた女と話す機会がありました。彼女から、元恋人はカナを想って、毎日木に赤い繊維を括り付けていると聞きました。
どういう理由なのか、カナが２人の子供を連れて南の村に帰ってきました。カナの家のまわりには、赤い繊維を括り付けられた木でいっぱいでした。そしてエンディングです。
「K’na the Dreamweaver」の監督、出演者情報
本作の監督をつとめたIda Anita del Mundoさんは、こんな作品を撮っているくらいなので、少数民族出身の人なのかなと思いましたが、父は有名な映画脚本家の Clodualdo del Mundo Jrさん、祖父のClodualdo del Mundo Srさんは、作家、ジャーナリスト、マンガ家として活躍したようです。非常に恵まれた環境で映画界に入ってきた人みたいですね。とは言え、作品数は本作も含めて２作です。本作が１０年以上前の作品ということを考えると、フィリピン映画を背負っていく人にはなりそうもないですね。
このような作品で、映画内でもおそらく現地語が話されていたので、現地の人をキャスティングしたのかと思いましたが、主要な役者はプロの役者さんで、そこそこ売れている人たちです。親の七光りのおかげで、名のある役者さんたちの協力が得られたのでしょう。
「K’na the Dreamweaver」の作品情報
オリジナルタイトル：Graceland
公開年 2014年
監督 Ida Anita Del Mundo
主なキャスト Mara Lopez
RK Bagatsing（Love Child）
Bembol Roco
視聴可能メディア Youtube（英語字幕のみ）
