フィリピン映画ではめずらしいサイコスリラーです。監督さんは、日本人には「キタキタ」で有名な
Sigrid Andrea Bernardo監督。しかも、舞台はジョージアです。これは期待が高まりますね。英語字幕ですし、変なサイトでしか視聴できないのでハードルが高いですが、トライしてみる価値がある作品だと思います。内容としては、顔を腫らした女が、「自分の夫は狂っています」と警察に、夫の精神病体験に巻き込まれる話を告白するシーンから始まりますが、物語は意外な方向に進んでいきます。本作に限らずSigrid Andrea Bernardo監督の作品は、ネタバレ厳禁なので、本作を見る可能性がある人は、ストーリー紹介を途中までしか読まないよう気を付けてください。

(Photo cited from IMDb)
「それぞれの記憶/UnTrue」のストーリー
顔に大きな怪我を負った赤い髪の女が警察で事情聴取を受けています。彼女はおもむろに切り出しました。「私の夫は狂っている(lunatic)のです」。DVの話なのかなと思いながら、彼女の回想シーンが続きます。彼女は、ジョージョアに来たばかりのフィリピン人。街角で偶然ぶつかった男性がたまたまフィリピン人で、職場で出会う関係だったので、2人の関係は一気に近づきます。彼女はワインバーのようなところで働いており、男はワインの生産業者で働いているのだと思います。その後、2人が働くシーンがないため、はっきりとはわかりません。フィリピン映画あるあるですが、本当に働くシーンが少ないですね。
男は、最初から積極的、束縛的なアプローチで、いかにもDV男という気配です。この男のどこが良いのだろうと不思議でしたが、2人はあっという間に恋人になり、結婚までしてしまいました。しかし、男は、「制服の女」に付きまとわれているという幻覚があり、酷く怯えては暴力をふるいます。女は男を精神科に連れて行こうとするのですが、男は「俺の言っていることを信じないのか」と暴力をふるいます。しかし、女は「夫を取り戻したい」と主張します。警察官は、「え?別れたいではないの?」と驚きます。
(ややネタバレ)シーンが変わり、今度は男が女性に告白しています。「妻は狂っているのです」と。女は警察官の恰好はしていません。誰だろうと思いながら、男の告白が続きます。男の話は、先ほどの女の話のちょうど正反対です。女が積極的に近づいてきて、時々暴力をふるい、奇怪な言動をするというのです。時に、「女が見えた」などといって、恐怖におびえると思ったら、そんなことは言っていないと全く違うことを言うというのです。妻の異常な行動にすっかり疲弊してしまっていると男は語ります。しかし、男の言葉のあとに、話を聞いていた女性が「薬はしっかり飲むように」と述べました。その女性は精神科医で、男が精神病であることは確かなようです。
(ネタバレ注意!)またシーンが変わり、第3の女性があらわれました。それは過去のシーンで、夫が高校生だったころの話です。夫はアナと呼ばれる少女と交際していました。若い夫は、アナとのセックス中に、拘束している姿をビデオを撮ることをせがまれ、そのようにします。しかし、アナは自分の形態を落としてしまい、そのセックスビデオが校内でばらまかれてしまいました。そのため、アナは奨学金を失い、みなの目線に耐えられず自殺未遂をしてしまいます。アナの姉が、妻となる女性だったのです。姉は、男がジョージアに逃げたことを知り、アナの姉だとばれないように髪を赤く染め、周到に男に近づく計画を練ったのです。また、時に制服を着て、夫の前を横切ったり、録音したアナの声を流したり、夫が飲んでいた薬をすり替えたりして、夫を精神的に追い詰めていたのです。そのことが、警察官に知られることなどありませんが、最後に警察官が夫との面会をすすめます。そこで、アナが最終的に自殺して亡くなったことがわかり、妻は夫に刃物を持って襲い掛かります。そしてエンディングです。
最初の女の証言と、次の男の証言の2つがひっくり返される展開が面白かったです。フィリピン映画では、セクシー系を除けば、サイコスリラーを見たのは初めてです。これがアメリカやヨーロッパのサイコスリラーと肩を並べることができるレベルなのかはわかりませんが、フィリピン映画としては大きな一歩なのだろうと思います。今後も頑張って欲しいですね。
「それぞれの記憶/UnTrue」の監督、出演者情報
本作の監督をつとめたSigrid Andrea Bernardoさんは、フィリピン映画らしからぬ作風が特徴の監督さんです。あまり作品数は多くなく、日本人には、札幌で撮影された「キタキタ」が有名です。主役の妻を演じたのは、「マリア」でハードなアクションをつとめたCristine Reyesさん。夫役は、ふだんイケメン俳優として恋愛映画に出ている中国系フィリピン人のXian Limさん。アナを演じたのが、セクシー系女優で安達祐実系童顔のRhen Escañoさんです。フィリピンのセクシー系女優は、セクシー系しか出ない人と、一般作にも出る人がおりますが、Rhen Escañoさんは、元々セクシー系ではない作品に脇役として出ていた女優さんで、エロがメインという作品には出ない女優さんです。
「それぞれの記憶/UnTrue」の作品情報
オリジナルタイトル:UnTrue
公開年 2019年
監督 Sigrid Andrea Bernardo(キタキタ)(Under Parallel Skies)
主なキャスト Cristine Reyes(ホスピタル・オブ・ザ・デッド 〜閉ざされた病院〜)(MARIA/マリア)
Xian Lim
Rhen Escaño(アダン 禁断の果実)
視聴可能メディア 怪しいロシア系(?)サイト(英語字幕のみ)