ホラー映画の巨匠ヤム・ララナスの作品「ホスピタル・オブ・ザ・デッド 〜閉ざされた病院〜」

スポンサーリンク

フィリピン映画で、グローバルに評価される映画と言えば、フィリピンの矛盾に満ちた社会を描く社会派映画か、ホラー映画のどちらかです。そして、社会派映画は、国際映画祭などにはよく招待されますが、実際商業ベースでみると、成功している作品というのはほとんどなく、商業的な意味で国際的に評価されているのは、ホラー映画だけだと言えると思います。そんなフィリピン映画界でホラー映画の巨匠の1人、ヤム・ララナスさんの初期のヒット作が、本作になります。日本ではDVDで視聴することができ、驚くべきことに日本語吹き替えまでついていました。どれだけ、フィリピンホラーが優遇されているかわかりますね。設定に矛盾がたくさんあり、ストーリー的にもあっちにフラフラ、こっちにフラフラという感じですが、ホラーの場合、それはそんなに気にならないので、おおざっぱなフィリピン人向きだと思いました。その安定しないストーリー展開の中に光るものがいくつもあるという感じがしました。

スポンサーリンク

「ホスピタル・オブ・ザ・デッド 〜閉ざされた病院〜」のストーリー

女性と少年が家に帰ると、一家が惨殺されており、唯一生き残った兄が、奮闘したのち3人組の汚い男に食い殺されるシーンから始まります。女性は、汚い男に「この子を殺さないで」とすがりつきます。

その後、20年が経過して、先ほどの少年は医師になっていました。名前はルーカスです。ルーカスの病院での奮闘を描いたのち、謎めいた男が彼の元を訪れて言います。「お前の家族を殺した犯人が捕まった」と。

ルーカスは、男に案内されて古びた病院を訪れます。病院の院長は「犯人は人間ではない。いくら銃弾を撃ち込んでも死ぬことはなく、傷が再生する」というのです。傷だらけの犯人の顔を見ると、それはかつて少年と一緒に住んでいた女性(グアダ)でした。私は、その女性を母だと思っていましたが、どうやら乳母のような女性だったようです。彼女は年を取っておらず、銃弾を撃ち込まれた跡は、徐々に再生していきます。驚いたルーカスは、銃で彼女を数発撃つのですが、もちろん彼女は死にません。

他の被害者の家族も合流します。彼によれば、グアダはアスワングだというのです。アスワングとは、フィリピンの伝統的な怪物で、フィリピン映画では頻繁に登場します。ドラキュラみたいに血を吸う怪物として描かれることが多いですが、本作ではゾンビみたいな見た目の不死の存在として描かれていました。ルーカスは、グアダから他のアスワングの居所や殺し方を聞くために呼び出されたことがわかります。

ルーカスは、グアダにアスワングの殺し方を尋問するのですが、グアダは謝ったり、「私は人を殺さないようにしているけど、アスワングは人を食べないと生きられないのだ」などと繰り返すばかりで、肝心の情報が得られません。というか、アスワングを殺す方法を答えていますね。そうしているうちに、なぜかグアダが苦しみ始めます。ルーカスは、彼女が死んでしまっては、アスワングの殺し方がわからなくなると言って、医師として彼女を助けようとします。

一方で、グアダの仲間の3人の男たちは、居場所を探すまでもなく、グアダを奪還すべく病院に来ていました。彼らは、警備員を殺し、病院の中に入ろうとしますが、病院の職員などの協力で、一旦それを防ぐことに成功しました。

グアダを助けようとするルーカスに、看護師は反対しますが、無理やりグアダを救命室に連れて行こうとします。このあたりから物語に一貫性がなくなるのですが、ルーカスは病院に取り残された瀕死の子供に出会い、こんどはその子供を助けるために奔走します。グアダが死にかけていたというのは、なんとなく忘れられた感じになり、たまに病院職員を襲いかけて、自制したりというのを繰り返します。またグアダは、自分がいることで男たちが襲ってくるので、自分を解放して欲しいと懇願します。

(ネタバレ)男たちのシーンは残酷シーンが続きます。ついに病院へと侵入した彼らは、ひとりまたひとりと殺していきます。それまで出てこなかった警察官が急に出てきて、殺されたりとかなり適当なつくりです。また、人間側の攻撃で、アスワングの首が切り落され、そのアスワングは死にました。グアダを助けて殺し方を聞き出すという設定は完全に忘れられています。何をやっても死なないと言っていましたが、首を切り落とすことも試さなかったのでしょうか?

物語は、途中の伏線を回収するどころか、矛盾した設定を次々出すことで、終わりに向かいます。結局助かったのは、ルーカスと途中で助けられた少女だけでした。また、すっかり傷が癒えたグアダは、ルーカスがピンチのときに最後のアスワングの首を絞め、ルーカスを助けました。その時にアスワングが「人間を助けるために、俺を殺すのか」と言っていました。首を絞めて殺せるのでしょうか? セリフに矛盾が多すぎです。結局、ルーカスが背後から最後のアスワングの首を切り落として、戦いは終わりました。ルーカスは、グアダを見逃し、少女を車に乗せ、病院を離れてエンディングです。

自分を育てた乳母が、アスワングであり、敵であり恩人。他のアスワングを殺すために、アスワングであるグアダを助けなければならないという矛盾した状況設定が、主人公を苦しめるところが面白かったのですが、結局それらの設定を無視した感じで物語が進んでいくところが、フィリピンホラーらしいところでした。このいい加減さは、先進国のストーリーテリングに成れた観客を惑わすために、わざとやっているのでしょうか? それとも根っからいい加減なのでしょうか? 判断に悩みます。

「ホスピタル・オブ・ザ・デッド 〜閉ざされた病院〜」の監督情報

本作で監督を務めたヤム・ララナスさんは、フィリピンホラー映画界では名を知られた監督さんです。様々な映画祭に彼の作品はノミネートされていますが、受賞作品は案外少なく、代表作は「Aurora」か「Sigaw/The Echo」だと思われます。後者はまだ見ていませんが、DVDレンタルで見れるようなので近々チャレンジしてみたいですね。

「ホスピタル・オブ・ザ・デッド 〜閉ざされた病院〜」の作品情報

オリジナルタイトル:Patient X

公開年 2009年

監督 Yam Laranas(オーロラ 消えた難破船)(コールガール 欲望の餌食

主なキャスト Richard Gutierrez

Cristine Reyes(MARIA/マリア

視聴可能メディア TSUTAYA DISCAS(日本語字幕、日本語吹き替え!

「ホスピタル・オブ・ザ・デッド 〜閉ざされた病院〜」のトレイラー

タイトルとURLをコピーしました