本作は、カナダへの移住を目指すカップルのラブロマンス映画のような外見をまとっていますが、カナダに移住して経験する困難、そしてカナダで掴むことができるチャンス、そして母国から離れて失うものを、主人公らの経験を通して描く、移住指南書のような作品になっています。カナダに移住して経験する困難や、成功の秘訣を先輩方にインタビューしたドキュメンタリー風の映像まで挿入されています。また、フィリピン人移住者を助け合うコミュニティの重要性も描いており、これから海外で一旗揚げようと言う若者に、心構えを求める作品だったと思います。ラブロマンス映画の視点で見ると、恋人をカナダ移住への夢へと巻き込んだにも関わらず、先に心が折れてめんどくさい女になってしまいます。男はよく頑張ったなと思いました。自分なら怒って帰っています。

(Photo cited from IMDb)
「Maple Leaf Dreams」のストーリー
一瞬、カナダのシーンが映ったあと、フィリピンのシーンに移ります。そこで、若い男(マッキー)と女(モリー)が出会い、次のシーンでは恋人となっていました。お互いに頭文字がMなので、Mと呼び合います。フィリピン映画では、ときどきアルファベットの頭文字で、パートナーを呼ぶシーンはよく見かけます。
マッキーは、モリーの誕生日に花を渡して「君のためなら何でも与えられる」などと愛を囁いたところ、「それならば一緒にカナダに来て欲しい」と言われてしまいます。
モリーの案は以下のようなものでした。1人が学生となり、学業とアルバイトを行い、もう1人がフルタイムで働きます。そして、これを2年ごとに交代するというのです。2人が結婚したというシーンはなく、どうやってフルタイムで働くビザを取るのかわかりませんでした。仮に、2人が結婚していても学生と一緒に配偶者が同行して働けるのでしょうか? ちなみに、私の友達のフィリピン人は、カナダの大学院に合格したので、現地のカフェでアルバイトをするためにバリスタの資格を取っていました。学生ビザ取得のため、親戚から見せ金を自分の口座に移したりしていましたが、結局ビザが発給されませんでした。フィリピン人には。大学院に合格していてもビザが出ないことがあることがあると知って驚いたことを思い出します。いずれにせよ、2人の計画は破綻しそうだなと、最初から嫌な予感が漂います。
モリーの母親は大反対でしたが、父親は恰好をつけるもので、自分の貯金を渡して娘の門出を応援します。モリーが、カナダに行きたがったのは、父親の夢であるバイクショップを持たせてあげようと考えたからでした。
2人の行き先は、トロントでした。彼らはフィリピン人女性の家に居候することとなります。彼女は、おそらくカナダ人と結婚して未亡人になっていることが、後のシーンでわかります。最初は、カナダ観光を楽しむ2人ですが、そんなに上手くはいきません。まずは、モリーが学校にいって、マッキーが働くことになりました。マッキーはフィリピンではレストランの店長として働いていたのですが、フィリピンでの経験は評価されず、どこでも仕事を得ることができません。結局、フィリピンレストランで、皿洗いと清掃員としてお情けで雇ってもらうこととなりました。2人はいつかお金持ちになって、素敵なレストランで「ステーキや、すし、てんぷら」を食べようと語ります。しかし、リッチな食事を代表する3品が、日本人と同じというのには驚きです。
カナダに来て半年たったころ、2人は深刻なホームシックに陥ります。また、精神的な疲れのため、お互いにイライラして、些細なことで喧嘩になってしまいます。しかし、フィリピン人コミュニティでクリスマスパーティーをして、先輩方から貴重な経験を聞かせてもらったことで、2人はなんとか持ち直します。
ある日、マッキーは腹痛を訴え、そのまま入院となってしまいました。あとで、手術がどうのと言っていたので、盲腸だったのでしょう。大家のフィリピン人が、カナダでは、医療費はただだけど、救急病院を受診するとき、無保険の人には大変だと言っていました。カナダは無保険でビザが取れるんでしょうかね? マッキーが2週間仕事を休まなければならなかったので、次の学期のための学費が足りなくなり、モリーがアルバイトを増やして乗り切ることとなりました。
(ネタバレ)そんなある日、モリーの父親が亡くなったというニュースが入ってきます。しかし、ここで貯めたお金を使って帰国してしまうと、学費に回すお金が足りなくなり、すべての計画が破綻してしまいます。その後、モリーは情緒不安定になり、何か月も寝込んでしまいます。うんざりな状況ですが、マッキーは彼女を支え続け、ようやくモリーは精神的に復活しました。そして、この数か月の自分の振る舞いを詫び、二度と1人で不貞腐れないことを誓います。
それから数年後、モリーはカナダで職を得て、正式な居住者となりました。マッキーは、大学で音楽を勉強しているようなシーンが描かれます。モリーは、自分たちの車を購入し、マッキーを大学に送り迎えすると語ります。モリーは、マッキーに感謝して、自分たちがようやく中流の生活を手に入れたことを喜びます。「しかし、これは自分たちが手放したこと、カナダでの辛い経験に釣り合っていたのだろうか」とモリーは自問します。それに対して「何も知らずにカナダにやってきて、今まで苦難を乗り越え、生き残ってきたこと、そして、自分たちが夢見たことが、今目の前にあること。それを見よう」とマッキーは答えます。その後、2人は何らかのパーティーに合流して、エンドロールです。
マッキーがいい人過ぎでしたね。マッキーも時に、ブチ切れることもありましたが、それでも最後までモリーの側にいて、彼女を支え続けました。私ならば途中で怒って帰っています。フィリピン人にとって、海外移住とは現地社会の最下層からスタートすることに他なりません。非常に苦しい思いをして、生き残ったものだけが手に入れられる平穏なんだなと思いました。移住の先輩方が、「それでも、カナダには公平さがある。フィリピンと違って、頑張れば中流の生活が手に入れられる」と言っていた言葉が印象に残りました。
「Maple Leaf Dreams」の監督、出演者情報
本作の監督をつとめたBenedict Miqueさんは、普段はラブロマンスや家族コメディを撮っている人です。しかし、どの作品も安易な作品にはなっておらず、監督なりの新し視点が入っているのが良いですね。モリーを演じたKira Balingerさんは、本作ではヒロインを演じましたが、あまり美人ではないので、年を重ねるごとに脇役として需要が高まりそうです。マッキーを演じたLA Santosさんは、あまり出演作品が多くない俳優さんです。本作でも途中で音楽を勉強しているシーンがありましたが、俳優に加えて映画音楽の仕事もしているようです。
「Maple Leaf Dreams」の作品情報
オリジナルタイトル:Maple Leaf Dreams
公開年 2024年
監督 Benedict Mique(ロロ・アンド・ザ・キッド)(Monday First Screening)(Isolated)
主なキャスト Kira Balinger(Chances Are, You and I)
LA Santos
視聴可能メディア Netflix(英語字幕)

