ホラー映画に見せかけたスリラー映画「Isolated」

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半分くらいネタバレになってしまうのですが、本作はホラー映画に見せかけたスリラー映画です。フィリピン映画には時々こういう映画があり、スリラー映画だと思っていたら、悪霊が本当にいましただとか、ホラーだと思っていたら、実際は殺人事件でしたという、若干おきて破りな作風です。ポスターも完全にホラー映画で、作中でもホラー映画としか思えないことが起こるのですが、それはいったい何だったんだという感じで、最後にスリラー映画にすり替わります。こういう映画は、日本で作ったら批判されるでしょうね。フィリピンらしい作風として、チャレンジしても良いのではないでしょうか? とはいえ、現在出張中のヨーロッパのNetflixで見ることができるものの、日本のNetflixでは、現在のところ見ることができない作品です。

(Photo cited from IMDb)

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「Isolated」のストーリー

本作はVIVA Filmsの作品です。日本のNetflixでは、スターシネマ系のフィリピン映画がほとんどですが、ヨーロッパではVIVA系がけっこう入っていますね。どういう契約なのでしょうか? さて、物語は、病院のシーンから始まります。主人公(ローズ)は、病院で働く看護師です。患者さんの家族から、「お父さんにようやくベッドがもらえました、ありがとう」などと言われています。フィリピンでは、入院してもベッドが割り当てられないということがあるのでしょうか??

同僚は、給料が少ないうえに、支払いが遅れる病院に嫌気がさして、海外の病院に移ることになりました。ローズは、書類を揃えるお金がなくて、国内で働くしかないとのことでした。その夜、ATMでお金をおろしているときに、強盗に襲われたうえに、レイプされかけました。ローズは、自分の不運な人生に嫌気がさして、叔母さんの勧めにしたがって、田舎で金持ち痴呆老人の世話をする住み込みの仕事に転職することになりました。

叔母さんに案内された豪邸は、もともとリゾートとして使われていたもので、自分にあてがわれた部屋も素敵で、ローズはすぐに気に入りました。しかし、叔母さんは安全のためと言って拳銃をローズに渡します。しかし、フィリピンでは他人が登録した拳銃を、もらっても良いのでしょうか? 普通は、購入して登録した人しか使えないように、などの決まりがあるんじゃないかと思うのですが、実際はいい加減に管理されているのでしょうね。

その痴呆老人は、当初気難しかったのですが、徐々に打ち解けてきて、仕事自体は順調に始まります。とは言え、その家に住むようになってから、時々、化け物に遭遇したような感じを頻繁に受けるのですが、はっきりとはしません。おばさんにもらった煙草に、マリファナが入っていたのだろうと、ローズは考えます。

(そろそろネタバレ)ところが、怪物の幻影ではなく、実際の侵入者がいました。ローズは、痴呆老人の部屋に移り、銃を持って一晩過ごしました。ところが、翌朝、侵入者の男に頭を殴られ、気を失います。意識を取り戻したときには、自分は椅子に縛り付けられていました。怯えるローズに対して、男は「自分は失踪した恋人を探している。この屋敷で看護師として働くようになって消息が絶えたので、屋敷に侵入して手掛かりを探している」と言います。ならば、ローズを殴って、椅子に縛り付けるなよと思いますね。男はローズに、知っていることを話すように迫りますが、当然ローズは何も知りません。そんなおり、地方老人が、男を殴って助けてくれました。再び、ローズが意識を取り戻した時には、侵入者の男が縛り付けられていました。そして、痴呆老人は、侵入者の男を撃ち殺してしまいました。

(ネタバレ)驚いて、ローズは屋敷から逃げ出します。痴呆老人は、銃を持って追いかけてきて、結局、ローズは捕まってしまいました。どうやら、老人は痴呆のふりをしていたようです。老人は、雄弁に語り始め、前任者の看護師を暴力で支配し、なぶり殺したことを愉快そうに語ります。また、ローズもさんざんいたぶられ、もはや恐怖で腰が立たない状態です。やがて、老人は腹が減ったので、ローズに朝食を作るよう指示します。ローズはやっとの思いで、老人に朝食を出すのですが、やがて老人が苦しみ始めます。それは、ローズが母親からもらった毒を朝食に入れたためでした。老人を殺害して、この場を離れようとすると、怪物があらわれ、自分についてくるよう手振りで誘います。

怪物の幻影に誘われてたどり着いた場所には、いたぶられた後、殺された女たちの死体が保存されていました。怪物の幻影は、女たちの無念の思いだったのです。また、その場で、老人の妻が、自分の叔母であることを知ります。そして、何食わぬ顔であらわれた叔母を、怒りのあまりローズは殺害しました。

エピローグは、病院に入院しているところに、警察が事件の顛末を知らせに来るシーンです。老人は、アメリカで連続殺人犯人として指名手配されていた男でした。しかし、不思議なことに、老人の死体が消えていたと、警察は語ります。そこで、エンディングです。

ホラー映画にしか見えない始まり方をしながら、実は怪物の幻影は、自分を助けてくれる存在だったという設定は面白いのですが、登場人物の行動に理不尽なところが多すぎるなと思いました。夫が連続殺人犯で、その共犯である叔母が、ローズに銃を渡す意味がわかりません。また、前任の看護師の恋人が、ローズを叩きのめし、縛り付ける意味がわかりません。そもそも、彼の登場は、ローズにベッドの下に潜んで、いきなり足をつかむという登場です。ホラーっぽい展開を無理にスリラーに捻じ曲げるため、いろいろ辻褄があわないシーンがあることが気になりました。基本的な構想は良いので、もう少し丁寧に作って欲しかったですね。

「Isolated」の監督、出演者情報

本作の監督をつとめたBenedict Miqueさんは、普段はラブロマンスや家族コメディを撮っている人です。「ロロ・アンド・ザ・キッド」が代表作です。近年、VIVA FilmsはホラーでNetflixと契約が取れたのでしょうか? 普段ホラーを撮っていない監督さんも、近年はホラー映画製作に駆り出されていますね。ローズを演じたYassi Pressmanさんは、初めて見ましたが、私の好みのタイプです。香港産まれで、お父さんはイギリス人だからでしょうか、顔が立体的なところが好きです。もともとダンサーとしてキャリアを始め、その後、女優、歌手、テレビ司会者など多様な仕事をしているようです。老人を演じたJoel Torreさんは、フィリピン映画界では大物中の大物。日本でいえば、松平健みたいな人です。あらゆる作品に出演しています。

「Isolated」の作品情報

オリジナルタイトル:Isolated

公開年 2025年

監督 Benedict Mique(ロロ・アンド・ザ・キッド

主なキャスト Yassi Pressman

Joel Torre(ホセ・リサール)(牢獄処刑人)(ロロ・アンド・ザ・キッド

視聴可能メディア Netflix(ヨーロッパ)(英語字幕)

「Isolated」のトレイラー

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