フィリピンでは、大量にラブロマンス映画、テレビドラマが作られています。国民の平均年齢が24歳と若いので、若い人たちを主人公としたラブロマンスがほとんどですが、若い人はフィリピン映画をほとんどみないので、シニア世代をターゲットにしたラブロマンスも時々作られるようになってきました。本作は、外国人や年の差パートナーとの結婚ではなく、フィリピン人同士の同世代のシニアの恋愛を正面から扱った作品となります。シニア恋愛に立ちはだかる課題は、日本とあまり変わらないんだなということと、フィリピン人は、シニア同士でもロマンチックな演出を好むんだなということを知りました。

(Photo cited from IMDb)
「Monday First Screening」のストーリー
女性教授(リディア)の退官記念パーティのシーンから始まります。周囲の人から定年後に何をするか聞かれますか、リディアは教育に関することしかアイデアがありません。もっと、人生を楽しめばいいのにと言われます。リディアの夫は、彼女の妹と不倫したのち一緒になったようで、そのことは、リディアの心に深い傷として残っていました。夫がアメリカで子供ができたというニュースは、リディアに恋人がいないことを改めて気づかせることになりました。
ある日、リディアは老人たちが列をなしている光景を発見します。何かあったのかと尋ねると、「月曜朝の最初の映画は、60歳以上は無料だ」というのです。皆に誘われて一緒に見た映画は「That Thing Called Tadhana」でした。意味は「運命というもの」です。意味深ですね。というのは、この映画の最中に隣に座った男(ボビー)がちょっと良い感じの男で、この2人がラブロマンスを展開していくことになります。
ボビーは最初から積極的で、若い人のアドバイスを聞きながら、FBで友達申請して頻繁にメッセージを送り、住所を調べて、サプライズで花束を持って家を訪問します。日本人的にはドン引きですが、フィリピンでは、2回目に花束は常識みたいですね。あらゆるラブロマンス映画でそうなっています。また、住所を勝手に調べて訪問するのも特に問題ないようです。
そんな熱烈アプローチに対して、リディアは恥ずかしがっているのか、そんなに積極的には応じません。そんなおり、退官記念講演で、自分の生徒で教授になった男性と出会います。この男も、リディアに積極的にアプローチします。この男の花束を持って、リディアの家を訪れ、そこで再び花束を持ったボビーと鉢合わせします。再び言いますが、やはり花束は必須のようです。年下の男にアプローチされているのを見て、ボビーは大いに危機感を感じ、身体を鍛えたりしますが、悲しいかな身体を壊してしまいました。
リディアは、そんなボビーを訪問して優しく介抱します。リディアは、ボビーと一緒にいたいと、彼の愛情に応えました。その後、2人の楽しいデートシーンが続きます。
ある日、いつものようにシニアで集まっていると、1人が欠けていることに気づきます。他の人によると、その人は亡くなってしまったとのことです。このことは、「いつ死ぬかわからないから、やりたいことをやろう」という意識を2人にももたらします。
最初にやったのは、自転車に乗ることです。これもフィリピン映画定番のシーンです。確かにフィリピンでは、自転車に乗っている人を見ることはほとんどなく、大人になってやってみたいことの1つになっているのでしょう。
また、2人は仲間の老人が路上生活しているのを偶然見てしまいました。その男によれば、自分は仕事をしていたが、年齢のために解雇されてしまった。家族の重荷になりたくないので、家を出たというのです。また、仕事を見つけて家に帰るのだと語ります。また、ある女性は、シンガポールに住む娘に、孫の面倒を見るためにシンガポールに来て欲しいと言われ悩んでいます。自分は、若いころにベビーシッターとして働き、子供たちを育て、今度は孫の面倒を見なければならないのかと絶望しています。
そんな典型的なシニアの悩みに立ち会いながら、シニアにとって最大の難敵が、彼らの前に立ちはだかります。最大の難敵とは、滅多に顔を見せない自分の子供です。これは日本でもフィリピンでも同じですね。久しぶりに顔を出した娘は、母に恋人がいることに対して露骨に嫌悪感を示し、お金狙いなのではないかと警戒します。しかも、勝手に調査をして、ボビーがかつてギャンブルにはまって、多くの財産を失ったことを、母親に暴露します。当然、リディアは怒りますが、心配になってボビーにも確認しました。
(ネタバレ)ボビーによれば、彼の奥さんがステージ4の癌が発見され、最後に2人で楽しもうと、ボビーは早期退職しました。しかし、彼の妻はあっという間になくなってしまい、人生の意味を失い、金と時間を持て余したボビーは一時期ギャンブルに身を落としていたというのです。これはしょうがないですね・・・。リディアも納得し、むしろ彼の深い愛に心を打たれました。
ある日、いつものようにみなで映画館で映画を見ようとしていると、なかなか映画が始まりません。また、ボビーがいません。個人的には嫌な予感がしましたが、そんな展開ではありませんでした。舞台にスポットライトが当たり、ボビーが指輪を取り出し、リディアにプロポーズしたのでした。リディアは、彼女のプロポーズを受諾しました。
最後のシーンは、娘との和解です。娘は、自分が夫とうまくいってないのを、ボビーに投影していたことを認め、母に謝罪します。リディアは、人を愛すること、信じることの人生における意義を語ります。そして、エンディングです。
まあ、シニア結婚あるあるを描いたオーソドックスな作品だったかなと思いました。ひねりはありませんでしたが、フィリピン映画ではシニアの恋愛は新しいジャンルなので、このくらいオーソドックスで良かったのではないでしょうか。フィリピンのシニアの恋愛における典型的な作法もわかりますので、興味がある人にはおすすめです。
「Monday First Screening」の監督、出演者情報
本作の監督をつとめたBenedict Miqueさんは、どちらかと言えば、テレビドラマの監督を務めることが多い監督さんです。今まで、彼の作品を3本見ていますが、出来の悪い作品は1本もありません。一方で、すごく心に残るというほどでもないという印象です。力はある人なので、そろそろ名作を世に出して欲しいですね。主演の2人はシニア役ですので、どちらも大ベテランです。特に男を演じたRicky Davaoさんは、映画の中でもてるシニアの役が多く、彼のようなタイプがフィリピン女性にとっては、理想の老け方なのかなと思います。
「Monday First Screening」の作品情報
オリジナルタイトル:Monday First Screening
公開年 2023年
監督 Benedict Mique(ロロ・アンド・ザ・キッド)(Isolated)
主なキャスト Gina Alajar
Ricky Davao(Clarita)(ある官能小説 -迷宮の女‐)
視聴可能メディア Netflix(英語字幕)

