本作は、フィリピン版の「世にも奇妙な物語」、あるいは「笑うセールスマン」と言えば、すべて説明できてしまう作品です。5人の登場人物が、それぞれ、奇妙なマジックアイテムの店で、自分の問題を解決するためのアイテムを買います。その時に、購入者が守らなければならないルールが説明され、契約書を作成するのですが、彼らはそのルールを守らず、後に酷いしっぺ返しを受けるという物語です。ただし、日本の作品と決定的に違うのは、ルールが非常に曖昧です。さらに、説明されていない不利益が当たり前のように出てきます。また、契約者はルールを守ろうとするも、何らかの偶然や不運などによりルールが守れないというスリルが見どころになるはずですが、当たり前のように最初からルールを破り、それがルールの曖昧さと相まって、ルールを破ったことになったのかさえわかりません。さらには、ルールを破っていないように見える者さえ、酷い目にあっています。フィリピン映画によくあることですが、こうした心理的スリルは軽視されがちで、後に主人公たちを待ち受ける過酷な運命の方により重きが置かれています。なぜもっと論理的に作らないのだろうと思いますが、そんなものはアメリカドラマや映画が大量に入ってきているフィリピンでは必要とされてないのでしょうかね?

(Photo cited from IMDb)
「Buy Now, Die Later」のストーリー
5人の主人公によるオムニバス作品です。それぞれ20分程度と短いので、ネタバレになっています。
1人目は、出版社に所属するカメラマンです。政治家と歌手のスキャンダルを追っており、現場を撮影するものの、カメラを盗まれてしまいました。そのため、こっぴどく上司に怒られ、明日までにスクープが取れなければクビにする、と言われてしまいます。落ち込んで帰宅する途中に、今まで気づかなかったマジックアイテム屋さんを発見します。店主は、店内のカメラの購入を勧め、「これがあなたの問題の解決になるだろう」と述べます。また、「この店のことを語らないこと」「カメラを壊さないこと」「必要なとき以外に写真を撮らないこと」を約束させ、契約書にサインさせました。翌日、カメラに勝手に場所が映し出され、現場にいったところ追っていた歌手の死体を発見しました。その死体を激写して大きなスクープを得ました。さらには、政治家がまさに殺されたあとの現場にもたどりつくことができ、彼の名声は高まります。しかし、さすがに怖くなり、次の現場が映し出されたときには、その人が死なないよう行動することにしました。しかし、誰もいません。そこに、急に自分に襲い掛かる男が出現し、お前が殺人鬼だと言われます。そこで思い出しました。歌手と政治家を殺したのは自分自身だったのです。ちなみに、彼がルールを破ったと思われるシーンは、最初のスクープのあと、友達に、カメラは通りにマジックアイテム屋さんで買ったと言ったシーンです。これがルールを破ったことになったのかが不明です。そもそも、1つ目のスクープも自分が殺したのならば、ルールを破る前から酷いことが起きていたことになりますし・・・。
2人目は芸能人の女性です。彼女は歌が下手なのが問題で、オーディションに落ちまくっていましたた、マジックアイテム屋さんでスマホを購入したしました。スマホで録画した映像では、彼女の歌はすばらしい歌に変換されました。また、スマホの指示に従って行動すれば、ライバルを追い落とすこともできたのです。しかし、ライバルの歌手(1話目で死んだ歌手)が死んだと聞いて、さすがに怖くなります。また、母親と少し喧嘩した際に、スマホが母親を排除するための指示を出し始めたので、スマホを捨てたり、壊そうとするのですが、スマホは必ず手元に戻ってきます。母を助けにいったところで、1話目の男たちが争っているところに遭遇し、自分は車に轢かれてしまいました。契約は、最初の登場人物とほとんど同じで、違うものは「知らない番号からかかってきた電話に出ない」ということでした。スマホを壊そうとしたので、2番目のルールに抵触したのでしょう。しかし、オーディションに落ちているレベルから、トーク番組で自分の成功の軌跡を語るようになるまでが速すぎでおかしくないですかね???
3人目はレストランのオーナーでした。奇妙な屋敷にケーキを配達にいったところ、大雨のため屋敷に長居することとなりました。彼らは悪魔的な晩餐を繰り広げます。ところが、それは、アダムスファミリーの仮装をして食事を楽しむ、家族のイベントでした。最後にケーキを食べると、家族全員が死んでしまいました。主人公は、家族の死体を運び出し、その肉と内臓を使って料理を作ります。彼は、この料理によってレストランを人気店にしたのです。ルールは、他の主人公らと同じで、異なるのは「ほんのレシピに書かれてある材料をそのまま使うこと」でした。
4人目はおかまの男です。彼は不細工であるためモテません。そこで、マジックアイテム屋さんで手に入れた人を魅了する香水を手に入れ、ムキムキの男たちを魅了し、王様のような日々を過ごします。ところが、昔のバスケ仲間を魅了しようとしたところで香水がなくなってしまい、これまで魅了した人たちは一斉にゾンビのような顔になり、彼に襲い掛かります。ゾンビたちに取り囲まれたところで、おしまいです。彼に課されたルールは、「1日1回だけ使うこと」でした。彼は、何も気にせず、使いまくっていました。
5人目は、2人目の主人公の母親です。彼女は娘と喧嘩したあとマジックアイテム屋に迷い込み、若さを手に入れるクリームを手に入れました。それを使ったところ20歳ごろの自分に戻ります。さっそく、ディスコに行って楽しんでいましたが、夜中をまわると肌から虫が湧いてきます。びっくりしてディスコを飛び出したところで、男にレイプされそうになって終わります。彼女のルールは、「クリームを使い過ぎないこと」でした。作中にクリームを使うシーンは1回だけでしたが・・・。
(ネタバレ)次のシーンは、5人の主人公が一堂に会するシーンです。3話目の主人公が、なぜその場にいたのかはわかりませんが、1話と2話目の主人公は、お互いに殺人鬼だと3人で格闘がはじまります。しかし、手の平に傷ができるのが契約の印のようで、それを見せ合うことで、同じ店からマジックアイテムを買った仲間であることを知ります。つぎに、4話のおかまが、5話目の女がレイプされそうになっているところを助けます。2人ともマジックアイテムの購入者であることをしり、そこに、1話目と2話目の主人公が合流し、店にアイテムを返還しに行くことになりました。3話目のレストランのオーナーだけは、自分の人を殺していたので別の扱いなのでしょう。店には4人で向かいます。ところが、店にはレストランのオーナーが先に到着していました。マジックアイテム屋さんの店主は、悪魔のような正体をあらわしました。彼らは店主の魔法と戦いますが、レストランのオーナーが殺され、次に娘をかばって、母が殺されました。カメラマンの男が機転をきかせ、自分のアイテムは壊せなくても、他人のものならば壊せることを発見し、お互いにアイテムを壊したのち、店の商品を壊しまくりました。店には火の手があがり、契約書が燃えてしまったことから、彼らは呪いから解放されました。あとは後日談です。3人は日常を取り戻しました。マジックアイテム屋の店主は生きており、露店からやり直しです。
やはり、日本人にとっては、ルールの曖昧さが気になってしまいます。アイデアは良いのに、なぜちゃんと構成しないのかなと思ってしまいます。フィリピンには、推理サスペンスがないのは、こうした文化的な土壌によるものでしょうね。
「Buy Now, Die Later」の監督、出演者情報
本作で監督をつとめたRandolph Longjasさんは、テレビと映画の監督を半々でやっている人みたいです。彼の作品をわざわざ探してみるほどでもないかなという印象です。出演者は多いのですが、有名な人は、5話の母親の若いころを演じたJanine Gutierrezさんくらいでしょうか? 今や個性派映画女優としての地位を確立した彼女ですが、まだちょい役でしか出演していない時代の彼女を見れたのは良かったです。
「Buy Now, Die Later」の作品情報
オリジナルタイトル:Buy Now, Die Later
公開年 2015年
監督 Randolph Longjas(Mujigae)
主なキャスト Vhong Navarro
TJ Trinidad
Elora Españo
視聴可能メディア Bili Bili(英語字幕のみ)

