本作は最近までNetflixで配信されていた作品です。しかし、英語字幕のみだったので、日本の映画サイトでは1つも感想がありません。また、Netflix通常英語字幕のみの作品には、日本語タイトルがつかないのですが、本作にはなぜか日本語タイトルがあります。そういう場合は、映画祭などで日本での上映された場合なのですが、そのような記録もが発見できませんでした。どこで、日本語タイトルがつけられたのか謎な作品です。
内容は、フィリピンの田舎に住む118歳のイグナという名の老女が、暫定的に世界最高齢女性とみなされ、アメリカのAmazing Peopleという番組で認定されると高額の賞金がもらえることとなったことが引き起こす、地域の変化、イグナおばあちゃんの家族の変化、おばあちゃん自身の心理的変化を描いたものです。おばあちゃんを演じた人の演技が本当によく、時にひょうきんで、時に頑固で、特に迷信深い老女を怪演しています。

(Photo cited from Rotten Tomatoes)
「イグナおばあちゃんは118歳/Lola Igna」のストーリー
田んぼの中の小屋に住んでいる老女の日常から始まります。彼女は頻繁に写真に向かって話しかけます。どうやら、亡くなった夫に向かって話していることがわかります。彼女は、まだ田んぼ仕事をしており、雑草を抜いたり、鳥を追い払ったりするのが、彼女の仕事です。
そんなおり、市長が記者会見を行いました。この老女が世界最高齢女性として登録される可能性があるというのです。その時に知られていた世界最高齢女性は、ウクライナの女性でしたが、イグナおばあちゃんは、彼女よりも6か月年上だったのです。しかし、フィリピンのような戸籍がちゃんとしていない国だと信用してもらえないんじゃないかと(私のなかで)不安がよぎります。市長の説明によれば、アメリカのテレビ番組「Amazing People」に認定されれば、年齢×5万ドル、つまり約600万ドルが授与されるというのです。とてつもない金額に、小さな町がどよめきます。
記者会見で、「これまで生きていてやり残したことはありますか?」との質問に、「まだ死んだことがないから死んでみたい」と答えて、みんなを驚かせます。世界最高齢女性の候補に登録されたことで、町の様子は一変しました。たくさんの観光客が押し寄せ、おばあちゃんのグッズを売る店が乱立します。しかし、おばあちゃんは観光客に関心がなく、時にためたおしっこを観光客に浴びせるほどです。
そんな街に、イグナおばあちゃんの孫娘の息子(ティム)がやってきました。ティムは、おばあちゃんのところに居候することとなり、ビデオで彼女を撮影し続けます。ティムの母は、イグナおばあちゃんの元をさり、音信不通だったので、孫娘の近況が聞けておばあちゃんは喜んでいました。
イグナおばあちゃんは、元々助産師だったらしく、町の人から出産の手伝いを頼まれましたが、自分が高齢なのでうっかりあかちゃんを落としては大変と断りました。
そんなとき、イグナおばあちゃんは、田んぼで亡くなった夫の幻影を見ました。おばあちゃんは、「自分にもお迎えが来る予兆だ。これで夫に会える」と大喜びです。そして、自分の棺桶を作って欲しいと街の人やティムに頼んで、周囲の人を困惑させます。その後、仲の良かった比較的年齢の近かったおじいさんが亡くなります。親しい者たちが亡くなっていき、自分だけが取り残される悲しみに暮れるおばあちゃんを見たティムは、おばあちゃんのために棺桶を作り始めます。
(そろそろネタバレ)いよいよ天国にいけると、明るくなったおばあちゃんは、観光客に対してもフレンドリーに接するようになります。しかし、ある日、おばあちゃんは観光客に囲まれた中で気を失ってしまいました。現場は騒然とします。医師や祈祷師や呼ばれ、おばあちゃんの治療が行われますが、彼女は意識を取り戻しません。町に不安の影が立ち込めます。
しかし、おばあちゃんは意識を取り戻しました。また、ティムの母であり、おばあちゃんの孫が訪れてきました。彼女は、再婚し新しい子供が産まれそうとのことで、ティムは居場所を失い、イグナおばあちゃんのところに居候していたのですが、ティムの母は息子の居場所を知り、迎えに来たのです。そして、久しぶりのイグナおばあちゃんとの再会を喜びます。
(ネタバレ)しかし、フィリピン映画あるあるですが、ティムの母が急に産気づいてしまいます。おばあちゃんは、助産師の知識を活かしてあかちゃんを取り上げますが、ティムの母は死んでしまいました。フィリピン映画で妊婦を見たら、そこで出産すると思え、そして死ぬかもしれないと思えですね。さすがに、フィリピンではもう自宅で産む人はほとんどいないと思うのですが・・・。
結局、ジョージアで120歳の女性が発見され、イグナおばあちゃんの受賞はありませんでした。町に再び平穏が訪れます。イグナおばあちゃんの健康もすっかり回復しました。あかちゃんを抱いたおばあちゃんのアップでエンディングです。
大したことが起こるわけではありませんが、田舎の老人の生活ぶり、人々の関りなどが、のんびりとした雰囲気の中で描かれており、楽しい映画体験でした。英語字幕作品とは言え、長らくNetflixで配信していたのに、誰も注目も浴びずに配信終了となってしまったのが残念です。
「イグナおばあちゃんは118歳/Lola Igna」の監督、出演者情報
本作の監督をつとめたEduardo W. Roy Jr.さんは、フィリピン人監督としては珍しく多作な監督さんではありません。2006年に映画監督としてデビューしてから7本しか、映画監督作品がありません。かといって、テレビの仕事を積極的にしているわけでも、監督以外の仕事をそんなにするわけでもありません。本作のようなテーマの作品が撮れるような人なので、ゆっくりしたペースで仕事をする人なのでしょう。主演のイグナおばあちゃんを怪演したAngie Ferroさんは、本作の公開当時、82歳。作中ではもっと年を取っているように見えましたが、メイクの力なのでしょうか? 元々演劇出身で、1970年から映画に出演するようになりました。本作で、82歳にフィリピンの最優秀女優賞を受賞しています。残念ながら2023年にこの世を去っています。
「イグナおばあちゃんは118歳/Lola Igna」の作品情報
オリジナルタイトル:Lola Igna
公開年 2019年
監督 Eduardo W. Roy Jr.(普通の家族)
主なキャスト Angie Ferro
Yves Flores(Friendly Fire)
Maria Isabel Lopez
視聴可能メディア Bili Bili(英語字幕)