本作は、フィリピンが得意とする呪いをテーマにしたホラー映画です。主人公は大きなスクープを上げた人気TVレポーターなのですが、どうやら何者か呪いをかけられてしまいました。当初は、理由もわからなかったのですが、やがて、スクープにまつわる隠し事(Untold)が次々と明らかになっていくというのが醍醐味です。とは言え、最後に隠し事が明らかにされて思うのは、「その程度のことで、ここまで酷い目に遭わなくてもいいんじゃない?」ということです。呪いと、隠し事のバランスがもっと釣り合っていたら、もっと衝撃的な作品になったんじゃないかと思いました。

(Photo cited from IMDb)
「Untold」のストーリー
犯人が子供を人質に立てこもり、野次馬が現場を取り囲んでいるシーンから始まります。TVレポーターのヴィヴィアンは、家の裏から立てこもり現場に潜入しました。しかし、それは自分の家であり、自分が母親と子供を殺しているのを目撃しました。というところで、ヴィヴィアンは夢から覚めました。フィリピンのホラー映画に良くある手法で、夢か現実かずっと曖昧なまま、ホラーシーンが続く作風ですね。私個人としては、その世界のルールや限界設定がはっきりしたホラー映画の方が好みですが、フィリピン人は、こうした混沌とした作風を好むようです。
ヴィヴィアンは、「Untold」というドキュメンタリー系テレビ番組のレポーターでした。撮影中に、奇妙な女が話しかけてきて、「これまで隠していたことが明らかになるだろう」と語り、ブレスレットを、ヴィヴィアンに渡しました。
ある日、番組の局長からヴィヴィアンにインタビューの仕事が言い渡されます。インタビューの相手は、かつて彼女がスクープした大事件の犯人でした。事件と言うのは、農民が地主に抗議活動を起こしたところ、怒った地主側が農民を生きたままコンクリートに埋めてしまったというトンデモない事件です。ヴィヴィアンは、その現場の映像を撮影したことで犯人は刑務所行きとなり、その犯人がわずか3年で出所したというので、インタビューをすることになったのです。
ヴィヴィアンは、改めてかつての自分の撮影した映像を見直したのですが、確かに地主の残虐非道は異常ですが、コンクリート漬けにされた中年女性の農民も奇妙です。コンクリートを流されながらも、ずっと怪しげな呪文を唱えています。
さて、いよいよインタビューの日になりました。地主の男は、ちゃんと質問に答えるわけでもなく、ヴィヴィアンに「次はお前のところにもやってくるぞ」と言います。そんな言葉は無視して、多数の農民を殺したのに釈放になったことについてコメントを求めればいいのに、ヴィヴィアンは、すっかり惑わされてしまい、地主の男の言葉に耳を傾けてしまいます。ところが、殺された農民の娘が、いきなり地主に向けて銃を発砲。彼は死んでしまいました。
ヴィヴィアンの元には、会社からカウンセラーが派遣されますが、ヴィヴィアンはすっかり混乱していました。そこで、彼女の隠していた過去の1つが回想シーンで明かされます。それは、彼女がまだ駆け出しのレポーターだったころのことです。彼女の母親の乳がんが発覚します。医師には、TV局で務めているヴィヴィアンの保険ならば、家族の治療もカバーされるんじゃないかと言いますが、その時、彼女は、正社員ではなく、家族をカバーできる保険がありませんでした。そんなとき、非常勤のレポーターの1人を正社員に登用するという話が持ち上がります。ヴィヴィアンは、母に治療を受けさせるために、スクープを取る必要に迫られます。とは言え、そんな都合よくスクープに出会えるわけがありません。そこで、同僚の立ち話をヒントに、猫の肉を使ってシシグを売る店の映像をでっちあげてスクープにしてしまったのです。料理人を演じて黒猫を殺して肉を刻んだのは、彼女自身でした。そう言えば、これまでのシーンにも黒猫は頻繁に登場しています。この黒猫が呪いと関係あるのかと思いましたが、その後は登場しません。
そこからは、コンクリート事件のスクープに関わった人が、次々と奇怪な死を遂げていきます。また、黒猫のシシグはでっちあげだと言うことが局長にも知られ、彼女を告発した女も奇怪な死を遂げてしまいました。さらには、出所した地主を撃ち殺した女に会いに留置所にいったところ、謎めいたことを言われたのち、呪文を唱え始め、その後、その女が頭を鉄格子に打ち付けて、恐らく死んでしまいました。
(ネタバレ)もはやストーリーや、呪いの法則などがわからなくなってきたところで大詰めです。どうやら、彼女が隠していた罪とは、コンクリート詰めにされる現場に、予め到着しており、警察を呼ぶこともできたのに、それをしなかったということでした。そのために、農民の女に呪いをかけられたようです。やがて、混乱の中、母の声に呼び出された廃工場のようなところで、ヴィヴィアンも転落して死んでしまいました。
ヴィヴィアンが死んだあと、新しいレポーターが台頭し、彼女のでっちあげスクープがTVで取り上げられています。しかし、母の営む食堂の片隅に、ヴィヴィアンは座っており茫然としています。誰もヴィヴィアンに気づきませんが、母だけがヴィヴィアンに話しかけ、お客さんはそれを奇妙な目でみています。食堂の客が、かつてヴィヴィアンが手渡されたブレスレットを置いていくのを見て、ヴィヴィアンは再び氷つきます。そしてエンディングです。
とにかくゴチャゴチャしてよくわからない作品でした。まず、根幹の呪いですが、コンクリート漬けされた農民の女が、レポーターに呪いをかけるというのが無理があります。地主も殺されたので、地主にもかかっていたものとは思いますが、さすがに同じ呪いをかけるというのが、ちょっとおかしいように思いました。また、コンクリート漬けのスクープ映像が撮れたということは、その場にいたということは最初から明らかで、その場で警察を呼ばなかったことが、隠し事であるというのは、呪いの種明かしとしては弱く感じます。また、人をたくさん殺しておきながら3年で出所する地主も意味がわかりませんし、黒猫の事件も中途半端にフェードアウトします。そして、最初から恐怖体験をしては夢だったというシーンの繰り返しで、何が現実だった、主人公と周囲の人との本当の人間関係のか曖昧になってしまい混沌とした作品になっています。いかにもフィリピンらしいとは言えますが、日本人の好みにはならない作風だと思われます。
「Untold」の監督、出演者情報
本作の監督をつとめたRon Moralesさんは、TVでは恋愛ドラマも撮るようですが、映画ではホラー専門と言っていい監督さんです。ごちゃっとしたわかりずらい作風が特徴の監督さんです。主役を演じたJodi Sta. Mariaさんは、作品公開時43歳。30代はまだ綺麗でしたが、急に老けてしまいましたね。注目すべきは、主人公の後輩レポーターを演じた生沼かおり(Kaori Oinuma)さんです。名古屋で生まれたフィリピン系日本人です。以前、他の作品で見たときには日本人にしか見えませんでしたが、本作では唇がフィリピン人ぽいなと思って見ていました。フィリピン人と日本人のハーフは、日本の芸能界ではたくさん活躍していますが、逆は、私の知る限り彼女だけなので、頑張って欲しいですね。
「Untold」の作品情報
オリジナルタイトル:Untold
公開年 2025年
監督 Ron Morales(Clarita)
主なキャスト Jodi Sta. Maria(生き人形マリア)(All You Need Is Pag-ibig)(Labyu with an Accen)(Clarita)
Gloria Diaz
Kaori Oinuma
視聴可能メディア Netflix(英語字幕のみ)

