自分がホラー映画耐性がないだけかもしれませんが、これは怖い映画でした。子供とか人形が人を襲うという設定だけでもうダメです。フィリピン映画で、海外に売り出すことができるジャンルは、現状ではホラー映画だけだと、私は思っています。スイートな恋愛映画は途上国でしか需要がなく、コメディは文化の影響を大きく受けるので海外でのヒットは難しく、また良くできたドラマであっても、先進国にいくらでもありますから、わざわざフィリピンのドラマ映画を見る必要がありません。ですので、過剰な暴力的アクション映画と、セクシー系映画、そしてホラー映画が残り、現状フィリピンでもっともレベルが高いのがホラー映画だと思っていますので、もっと積極的に見ていかなくてはと思っています。しかし、恐ろしいのが苦手な自分には厳しいですね。本作は2014年公開とやや古く、撮影技術的にチープなところもあるのですが、シナリオ的には良くできていて、現在のフィリピンの撮影技術ならば、世界的ヒットも狙える作品かなと思います。オリジナルタイトルは「Maria Leonora Teresa」。3人の亡くなった子供の名前、そして人形の名前です。映画のポスター写真は、日本語版の方が雰囲気が出ていたので、そちらを選びました。

(Photo cited from Filmarks)
「生き人形マリア」のストーリー
ドラマは学校の行事から始まります。マリアの母親はトイレで奇妙な体験をします。少し開いていたトイレのドアがバタンとしまったので、下からのぞいたところ足が見えました。しかし、(小学校なので大人が上から覗ける)上から覗いたところ誰もいません。どうしたのかと思ったところ、急にドアがあいて、子供が走り去る後姿が見えました。
その後、子供たちはバスで遠足に出かけます。ところが、バスの中に顔が半分焼けただれている少年があらわれ、その後バスはコントロールを失い、橋から転落してしまいます。この事故で多くの子供が亡くなり、その中に3人の女の子、マリア、レオノラ、テレサが含まれていました。家族が悲しみにふけっているところに、3つの家庭に精神科医を名乗る男が訪れます。彼は、子供を失った悲しみを癒すために、人形を使ったセラピーの研究を行っており、自分の人形を使ってお手伝いさせて欲しいと申し出ます。自分の娘を模した人形を見せられ、気味が悪かったので、いずれも断りましたが、1人暮らしの男家庭が、最初に人形を受け入れ、結局3家庭ともに人形を受け入れることとなりました。ちなみに、この人形のクオリティが残念なレベルです。1体だけまあまあなのですが、1体は酷いレベルです。なぜこんなことになってしまったのでしょうか・・・。しかし、クオリティの低い人形だからこそ、気味の悪さが倍増したところもありました。
3体の人形は、あっと言う間に家庭に溶け込みました。それを不気味がる家族もいましたが、まあ平穏に日々が過ぎていきました。しかし、時々、人形に顔がただれた少年の顔がオーバーラップすること、人形が明らかに動いているシーンがあり、これから何かが始まりそうな予感が漂います。最初の被害者は、学校の校長先生でした。3家庭の親の1人が、学校の先生で、人形を連れまわしている教員を気味が悪いと叱責したところを人形が聞いており、その夜、人形が校長先生を鈍器で殴ったあと、引きずり回し、校舎から投げ落としました。そんな感じで、人形を可愛がっている人に、害をなす人が最初は襲われ続けていきます。そのうち何人かは命を落とします。ようやく、人形が関わっていると感じた家族は、時々見える少年の姿に思い当たるところがありました。それは1年前に学校の火事で亡くなった少年です。3つの家庭は、その事件に対してやましいことがあるようです。
(そろそろネタバレ)その後、除霊師などの助けを借りて、この人形による殺戮を行っている者の小隊がわかります。それは1年前に亡くなった少年の父親で、精神科医として人形を持ってきた男でした。一同は、除霊師を連れて精神科医の家を訪れるのですが、そこは黒魔術の館のようになっており、すでに1人の家族は捕らわれていました。精神科医が語るには、1年前の事故は、少年が嫌な臭いに気づき、それを先生に報告したところ、でっちあげだと断じられ、バツとして部屋に閉じ込められ、反省文を書かされていました。そして、嫌な臭いはガス漏れで、結局爆発が起きてしまい、少年は巻き添えを食ってなくなってしまったのです。関係者の教師が、亡くなった娘の親のひとりでした。また、他は少年が閉じ込められていたことを娘が目撃していたのに、警察に報告させなかった家庭、そして事件を権力を使って事故としてもみ消した家庭でした。そのため、3つの家庭が父親の復讐のターゲットとなったのです。しかし、なんとか人形のうち2体を破壊。精神科医の父親も打ち倒すことができ、事件は収束します。人形の残りの1体は、ひとり親の教師がどうしても破壊することができず、こっそりと隠したのでした。その後、多くの人を失いましたが、平和が訪れ、生き残ったものは死者をとむらいます。しかし、最後の最後のシーンで、子供が亡くなり嘆く親に対して、死んだはずの教師が自分の人形を持ってあらわれます。「あなたの悲しみを、人形を使って癒します」と言って。
最後のオチはいろいろ矛盾していて蛇足だろうとは思いますが、それは気にしないことにしましょう。フィリピンホラーってこうした蛇足が多いように思います。3つの家庭の子供、人形に対する態度が違ったり、家族内でのもめごとも殺戮に影響を与えているので、3家庭の足並みがそろわず、対応が後手後手にまわってしまうのも見どころがありました。また、人形が動くときは、明らかに子供がお面をつけてスムーズに動くときと、人形を動かしているところが混ざっており、そのチグハグさも気味が悪かったです。
「生き人形マリア」の監督情報
フィリピンでは、ホラー映画ばかり撮っている監督さんも結構いるのですが、本作の監督をつとめたWenn V. Deramasさんは、コメディ映画が中心の監督さんです。本作より以前にはホラー映画を製作したことは1本もありません。本作のあとに取った1本のホラーも、ホラーコメディ映画です。なぜ、1本だけ、こんな怖いのを作ってしまったのでしょうか?
「生き人形マリア」の作品情報
オリジナルタイトル:Maria Leonora Teresa
公開年 2014年
監督 Wenn V. Deramas
主なキャスト Jodi Sta. Maria(All You Need Is Pag-ibig)
Iza Calzado
Zanjoe Marudo
視聴可能メディア TSUTAYA DISCAS(日本語字幕)