本作は、80年代に公開された古いドラマ映画です。「生き別れた親子」という、フィリピン映画では定番の題材を扱ってはいますが、脚本が優れており、子供に会いたいと思っていた母親が、むしろ子供たちを遠ざけるしかなくなったり、母親を遠ざけていた子供が、会いたいと心変わりしたかと思えば、自分の母の惨めな姿を見て、激しく動揺してしまったりと、登場人物の心理面で二転三転する構造が面白く、非常によくできたドラマだったと思います。オリジナルタイトルの意味は、タガログ語をかじっている人には想像がつくと思いますが、直訳すると「毎時間、毎日」となるので、たぶん「片時も忘れることができない」みたいなニュアンスじゃないかと思います。

(Photo cited from IMDb)
「Oras-oras, araw-araw」のストーリー
自分の子供だと思っていた子供が、妻が結婚前に宿した他の男の子供だったことを知り、夫が激怒して、妻の顔に傷をつけ、妻(カラ)を追い出すシーンから始まります。最後までわからなかったのは、夫婦には子供が2人おり、結婚前の男の子供だとすれば、長男だと思うのですが、産まれたばかりの女の子が問題となっています。長男は連れ子だったのかと思いましたが、その後、娘が他の家に引き取られ、息子は父と一緒に住んでいることから、その可能性は低いと思います。フィリピン映画にありがちな、細かいことを気にしない設定なのか、最後まで釈然としませんでした。
さて、それから10年以上が経過して本編のスタートです。主人公は、テレビのドキュメンタリー番組のホストをしている若い女性(ジェサ)です。彼女は、売春婦の取材を終えたあと、貧困中年女性を取材しようと考えました。そこで、場末のバーで歌っている中年のカラを取材しようと考えます。しかし、カラは過去のことを語りたがらず、適当に作り話で誤魔化します。取材を嫌がられていることはわかっているのですが、ジェサ自身も理由のわからず、カラが気になってしょうがありません。付きまとうように資材を続けます。もう、後半の展開が読めますね。
ある日、警察のガサ入れにより、カラが警察に連れて行かれたときに、ジェサが保釈金を払って出所させたことが契機になり、カラはようやく重たい口を開きます。カラは、自分の不義理のせいで夫に捨てられたこと、その後、赤ん坊をさらわれそうになり、犯人を殺してしまったこと、そのために8年間を刑務所で過ごし、そのために子供を知り合いの女医に養子として出すことにしました。ところが、その女医が約束を守らず、アメリカに移住してしまい、その後娘は行方知れずになっているとのことでした。また、出所後に夫と息子の元を訪れましたが、追い払われてしまい、独りぼっちになったと言います。
その話を聞いて不憫に思ったジェサは、自分の番組でカラの家族探しキャンペーンを始めます。そんなことを勝手に始めたことに、カラが怒りますが、その時に、ジェサの腕に見覚えのあるアザを発見します。ジェサは、恐る恐る、ジェサの身の上を聞き、ジェサが生き別れた娘であることを知ります。その後、カラはジェサの母親(例の女医)を訪れます。ジェサの母親は謝罪しつつも、ジェサは結婚を控えており、もう両家の顔合わせもしたので、今さら場末のバーで歌っている歌手が実母だと名乗り出たら結婚が台無しになるかもしれないと言って、事実を伏せさせようとします。その時は怒ったカラですが、家に帰って落ち着くと、娘を想う気持ちから、ジェサを遠ざけることにしました。
(ネタバレ)その後、ジェサの番組に、カラの息子から連絡がありました。当初、息子は母親に会いたがらず、貧しい母のために、ジェサを通じて小切手を渡そうとするだけでしたが、自分の就学費用を出していたのが、母親だったと知り、態度を変えます。そこで、母の働くバーに、客として行ったのですが、いい年をした母親が、みすぼらしいバーで滑稽な歌を歌う母のみじめさにいたたまれなくなり、最後まで見ていられませんでした。
その頃、偶然からジェサも真実にたどり着いていました。しかし、取材対象として敬愛していた女が、自分の母であることを知ったジェサは、やはりショックを隠せません。しかし、心の整理を終えた息子が、母を受け入れようとするのに促され、自分も母に対して、娘として対面することを決意します。最後は、父も含めて家族4人が再会し、許しあいます。ジェサは自分の番組で、事の顛末を告白したのち、恋人と手をつないで、エンディングです。
なぜ、金持ちの夫の方が、息子の学費を払っていなかったのか? 夫は何を考えていたのか不思議ではありますね。それに、結局浮気でできた子供が娘の方だと思うのですが、なぜ結婚前に仕込んだ子供だと言われていたのかがよくわかりませんでした。この設定が、子供たちが母親に再会したあとの心変わりの原動力となっているだけに、もう少し理屈が通るように整理して欲しかったですね。とは言え、子供たちの心変わり、カラが娘の結婚のために引き下がろうとする親心が見どころで、切ない気持ちにさせてくれる作品でした。見ごたえのあるドラマだったと思います。
「Oras-oras, araw-araw」の監督、出演者情報
本作の監督をつとめたEmmanuel H. Borlazaさんは、70年代から80年代に活躍した監督さんです。当時のスーパースター女優たちとのコラボレーションで特に知られているらしく、ヴィルマ・サントスさんとの「Lipad, Darna, Lipad!」や「Darna and the Giants」、本作でも主役の娘を演じたSharon Cunetaさんとの「Bituing Walang Ningning」「Bukas Luluhod ang Mga Tala」などが代表作のようです。Youtubeで見れたら見ていきたい監督さんですね。
「Oras-oras, araw-araw」の作品情報
オリジナルタイトル:Oras-oras, araw-araw
公開年 1989年
監督 Emmanuel H. Borlaza
主なキャスト Sharon Cuneta(存在するもの)(Family of Two)(Three Words to Forever)
Gloria Romero
Helen Gamboa
視聴可能メディア Youtube(英語字幕)
「Oras-oras, araw-araw」のトレイラー
トレイラーが見つからなかったので、本編映像のリンクを貼ります。

