日本もですが、フィリピンでも、配信者は若い人に人気の職業です。本作は、配信にはまった女性が、近しい人を傷つけてしまい懺悔するという話です。正直、日本人でフィリピン映画を見てみようと思う人は、若くもなく、そんなに興味もわかないテーマかもしれませんが、若者文化から目を逸らしていては、余計に老け込んでしまいますので、ここはぜひ頑張って見てみましょう。監督は、フィリピン映画界きってのヒットメーカーのCathy Garcia-Sampanaさんですから、そういう意味でも抑えておきたい映画です。ちなみに、本作も英語字幕しか出せないのですが、登場人物が英語や英語交じりで喋っているときでも、[English]や[Taglish]のタグが付いた英語字幕が付されており、珍しくNetflixの作品としては見やすい字幕です。どうして、作品によって英語字幕の付け方もこんなに違うのでしょうか? かつて、フィリピン映画では途中30分くらい字幕が全くついてないなんてことも良くあることだったようです。

(Photo cited from Rotten Tomatoes)
「Love at First Stream」のストーリー
ビルマは、中堅の配信者です。配信のたびに5000ビューほどを稼ぐことができています。しかし、母親との仲が良くなく、配信で一攫千金を当てて、コンドミニアムを買って、家から出ていきたいという夢を持っています。しかし、5000ビューでは、1回に1000ペソしか稼ぐことができず、これでは夢は夢のままです。また、ビルマは、いとこのメグと一緒に住んでいます。メグも配信をしているのですが、小さな配信で、そこで知り合ったキャットボーイという人が気になっています。また、メグは大学の同じクラスにジオという金持ちでイケメンの同級生がおり、ジオは配信者としてたくさんのファンを抱えています。しかし、ジオはメグをからかうので、メグはジオに対して苦手感を持っています。あと1人、ビルマの隣人に、可愛い顔をした男の子トゥペがいます。ビルマは彼からから好意を寄せられており、ビルマもトゥペに好意を持っています。
要は、この4人の物語です。先に4人の関係を整理すると、ビルマとトゥペは実は両想い。しかし、ビルマのトゥペに対する気持ちはまだ強くはありません。そして、ジオはメグを好いていますが、メグはジオに苦手感を持っており、キャットボーイに思いを寄せています。そして、ジオとキャットボーイは同一人物です。つまり、最初から2組のカップルが成立しているのですが、配信者としてより多く視聴者を集めるために、ビルマとジオがカップルを装い、コンテストで票を集めるというのが、メインのストーリーです。とは言え、視聴者を集めなければならない理由を持っているのは、ビルマだけです。ジオはすでに、そこそこ視聴者を抱える配信者ですし、お金持ちで勉強もできます。ですので、ビルマと恋人関係を演じる理由もそんなにないのですが、メグとお近づきになりたいという気持ちから、この提案を受けたのです。そうそう、トゥペの話を忘れておりました。彼は家庭を支えるトリプルワーカーの優しい男です。ビルマから動画に出演するよう誘われ、ビルマのイマイチな企画に律儀に参加しています。
フィリピンでは、カップルの配信者を応援するという文化があるようです。視聴者が配信中に投げ銭をするのですが、カップルクーポンなるものを、バンバン送っておりました。ビルマとジオの配信は人気を博し、カップルの配信競争で1位をキープしています。そのまま競争期間を感想すれば大きな賞金がもらえたのですが、ビルマがトゥペとデートしているとき、ちょっといい感じの雰囲気になったのでキスしそうになったときに、自分のライバルカップルに見られてしまいました。すぐにこの件はネットにアップされました。ビルマが浮気していたと配信者に叩かれるので、ビルマは「トゥペはただの友達で浮気ではない」という動画を配信し、トゥペを傷つけます。実は、この時点でジオはお目当てのメグにアタックしていました。自分がキャットボーイであることを明かして、ジオとメグの関係はぐっと接近していました。ですので、ジオはこの時点で視聴者からの人気を回復する必要がありません。ジオの欠席が続き、ビルマとジオのカップル人気は急降下しました。
(ネタバレです)ついにメグがジオの好意を受け入れた時に、メグはジオに、ビルマとの動画に出演するようお願いします。ジオはメグの頼みなので受け入れます。しかし、ちょうど2人がハグをしているところをビルマが目撃してしまったのです。ようやくかなったビルマとジオの配信再開ですが、ここでビルマがトンデモないことをしてしまいます。配信の途中でメグを引きずりだし、実はジオがメグに好意を寄せていたことを、視聴者の前で告白させます。そして、浮気をしたのは私ではなく、ジオであるというロジックを展開したのです。これには、さすがにビルマのまわりの人も完全に呆れ果ててしまい、彼女は孤立します。母親にはひっぱたかれ、ボロボロになくビルマですが、そこで初めて父親の話がでてきました。どうやら、父親は政治家になるという夢を目指して、結局大きな借金を作り、今は別れて住んでいるのだそうです。ビルマは父の夢を認めてあげない母を恨んでおり、自分も夢をかなえたいと思っていたと告白します。母は戸惑いますが、「夢をかなえようとするのを否定しない。でも、人を傷つけてはいけない」と諭します。
結局すべてを失ったビルマですが、徐々に自分の過ちに気づき、すべてを告白し、謝罪する動画を配信しました。その時の視聴者のコメントが優しいです。「誰でも過ちはある」「俺は許すよ」みたいなコメントで溢れていました。日本ならば、そう簡単には許されないでしょうね。周りのひとも、日本人からすると、非常に優しいです。まず母から許されます。メグとジオも彼女を許し、ついにトゥペまでも彼女を許します。トゥペが、家族に言われていた言葉が印象的でした。「許すこともイケメンの度量だぞ」と。そんな考え方があるんですね。そして、ハッピーエンドです。
ビルマが、トゥペと相思相愛なのに、配信の中で「あれはただの友達だ」と言ったシーン。「自分が浮気したんじゃない、ジオがメグに浮気をしたんだ」と主張したシーンで、映画サイトでもヘイトを集めたビルマですが、よく考えたら昔の少年誌のラブコメに、そんなことくらいあったような気がします。めぞん一刻の響子さんも、今思えばけっこう酷いことをしていますね。若い人にとっては、このくらいの過ちはありえること、許されるべきことなのかなと思いました。
「Love at First Stream」の監督、出演者情報
監督は、フィリピン最高のヒットメーカーのキャシー・ガルシア・モリーナ監督。本作が公開されたのは、ちょうどコロナの1年目だったので共興収入を上げることはできませんでしたが、共興収入の上位をほとんど占めているのが、彼女の作品です。主役の4人の関係を構造的に決めて、流行りを柔軟に取り入れるというのが、さすがだなと思いました。ビルマを演じたDaniela Strannerさんは厚ぼったい唇が印象的でした。本作がデビュー作で、その後テレビドラマにいくつか出演したのち、今年はひさしぶりに主演映画が公開されました。どんな役を演じているのか気になりますね。また、いとこのメグ(Megumi Sakai)を演じたKaori Onimura(老沼 カオリ)さんは、名前のとおり日本人です。フィリピン人と日本人のハーフですが、完全に日本人顔です。4歳まで名古屋に住んでいたようですが、その後、フィリピンに移り、今は中堅女優として活躍しています。
「Love at First Stream」の作品情報
オリジナルタイトル:Love at First Stream
公開年 2021年
監督 Cathy Garcia-Molina (The Hows of Us)(ハロー、ラブ、アゲイン)(My Ex & Whys)(Hello, Love, Goodbye)
主なキャスト Daniela Stranner
Kaori Onimura
Anthony Jennings
視聴可能メディア Netflix(英語字幕のみ)