大阪アジアン映画祭グランプリ作品「SHIFT 恋よりも強いミカタ」

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フィリピン映画のブログを運営するとは、膨大なフィリピン恋愛映画を見なければならないということで、これは、おじさんにとって結構苦行なのですが、中には素晴らしい作品もあります。本作は、フィリピン恋愛映画の中では、私の中で現在ナンバー1の作品です。何がいいって、特別なことは何も起こらないのがいい! 才能のある人は、練りに練ったプロットも必要なく、何ということのないシーンの1つ1つが冴えているものなのです。主役を演じたYeng Constantinoさんは、女優ではなく、歌手だそうですが、そこがまた良かった。役者には表現できない、ひとりでいることが絵になる雰囲気を持っています。孤独をまとっているような佇まいが良かったです。監督さんは、本作が初監督作品で、実はその後も1本も長編映画の監督を務めていません。そんな無名な監督さんの映画を、正当に評価してグランプリを与えた大阪アジアン映画祭の審査員の方々も素晴らしいですね。本作はDVDですが、日本語字幕で見ることができますし、ぜひ多くの人に見てもらいたいですね。

(Photo cited from IMDb)

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「SHIFT 恋よりも強いミカタ」のストーリー

主人公のエステルは、赤く染めた髪が印象的な女性です。彼女は、コールセンターと呼ばれているテレビショッピングの電話受付みたいなところで働いています。本当は、写真家やギタリストとして働きたいと思っているのですが、作品集を作ることもなく、「辞めたい」と言いながら、ダラダラとコールセンターで働き続けています。また、ボーイッシュな雰囲気からレズじゃないかと思われていましたが、実際には同僚のゲイの男の子のことが好きになっています。

エステルの営業成績は落ちてきており、上司により、彼女と仲良しのゲイの男(トレバー)が、彼女の教育係としてサポートすることとなりました。実は、エステルはトレバーに恋心を抱いています。しかし、トレバーはゲイですから、その想いが伝わることはありません。むしろ、「君もレズだから、僕と同僚だね」と言われてしまいます。とは言え、2人が密着していると言っても良いほど近い関係です。

2人の関係は、トレバーが彼氏とうまくいっていると遠ざかり、上手くいかなくなると近づきます。2人の関係においては、大きなことは起こりませんが、職場ではちょっとした事件が起きます。と言うのは、チームで売り上げを競っているのですが、売り上げの割には利益が少ないチームがあり、不正が疑われたのです。エステルとトレバーが調査することとなり、そのチームは偽のクーポン券を使って、不正に価格を下げ商品を売っていたのです。そのチームの職員は全員解雇されました。

エステルは、他のコールセンターの仕事にもいくつか応募しています。1つの会社から電話がかかってきたときには、トレバーが彼氏と別れたばかりで、2人の関係が近かったので、お断りしました。それからしばらく親密な関係が続いていたのですが、エステルはトレバーの態度の変化に気づきます。エステルが問いただしたところ、トレバーは新しく外国人の彼氏ができたことを告白します。明らかに不機嫌になるエステル。それに気づかないトレバーです。トレバーの台詞もいいですね。「僕の取り柄が、この顔だけだから・・・」。このダメなところが、エステルにはいいんでしょうね。その後、エステルはトレバーと距離を置きます。

(そろそろネタバレ)また、エステルは自分がかつて好きだった男から呼び出しを受け、告白されます。以前エステルが告白したときには、相手にされませんでしたが、その時は「男だと思っていたから」だそうです。しかし、エステルは好きな人がいるからと断りました。それで自己肯定感があがったのか、エステルはトレバーに再び連絡しはじめます。一方で、トレバーはエステルと連絡がとれなくなって、すっかり混乱していました。せっかくできた新しい彼氏とも会う気にならないほどです。しかし、トレバーは、エステルが自分を好いているという発想にはどうしても至りません。

不正を働いた職員を大量解雇したのち、しばらく落ち着いていた職場ですが、大変なことが起きました。コールセンターは、現在大手通販会社の委託を受けているのですが、その会社が内部にコールセンター部門を持つことになり、エステルらが働いている会社との契約が終了することとなったのです。彼らの会社は、大幅に事業を縮小することを決定。ほぼ全員が解雇されることになりました。こんな感じで、解雇が決まるんだなと、興味深かったです。現在のフィリピンでは、AIの発達によりコールセンター事業が急激に縮小していますからね。

(ネタバレ)また2人は会うことを始めたのですが、ついにエステルは「私のことをどう思っているの? 私はあなたが好き」と告白します。トレバーは驚き、何も言うことができません。エステルは、彼を残して去り、翌日別のコールセンターの面接を受けました。面接で最後に「5年後のあなたは何をしていますか?」と聞かれます。彼女は答えられません。そして、エンドロールです。

ストーリーをたどっても、この作品の良さは伝わりませんね。この作品の良さは、2人の空気感、ちょっとした会話で変わるエステルの微妙な気持ちが伝わってくるところです。どちらかと言えば、女性向けの映画ではありますが、おじさん年齢の男性でも楽しめる作品だと思います。

「SHIFT 恋よりも強いミカタ」の監督、出演者情報

本作の監督をつとめたSiege Ledesmaさんは、驚いたことに本作が初めての長編映画監督です。また、その後もテレビドラマの監督を数話をつとめた程度で、監督としての活動はほとんどしていません。本作は大阪アジアン映画祭でグランプリを受賞した以外にも、国際的な映画祭でたくさんの賞を受賞していますのでもったいない気がしますね。本作のようなセンスで映画が撮れてしまうと、次作が難しくなるのでしょうか? しかし、映画脚本家としては活動していますので、大変な監督業からは距離を取ってライフワークバランスを保っているのかもしれません。

注目すべきは主役を務めたYeng Constantinoさんは、女優というよりシンガーソングライターです。Youtubeで最初に表示されるのが「Ikaw(あなた)」という曲なので、これが最もヒットした曲なのでしょうか? 意外にも演歌的なしっとりした曲でした。男でも歌えそうな曲なので、KTVに行く人は練習しても面白いでしょう。

「SHIFT 恋よりも強いミカタ」の作品情報

オリジナルタイトル:Shift

公開年 2013年

監督 Siege Ledesma

主なキャスト Yeng Constantino

Felix Roco

視聴可能メディア TSUTAYA DISCAS(日本語字幕)

「SHIFT 恋よりも強いミカタ」のトレイラー

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