2024年にフィリピンで公開された作品「Sunrise」の評判が非常によく、フィリピン国内では、アメリカのアカデミー賞の外国語映画部門で、フィリピンから初めて受賞できるのではないかと期待が高まっています。そこで、ハダネオ監督の作品を集中的に見ていましたので、彼女の映画監督としてのキャリア、作品紹介、そしてどのプラットフォームで視聴可能かを紹介していきたいと思います。
アントワネット・ハダオネ監督について

(Photo cited from Rolling Stone Philippines)
アントワネット・ハダオネ監督(以下ハダネオ監督)は、1984年に生まれました。2006年に、フィリピン大学で、Film and Audio-Visual Communicationの学位を優秀な成績で取得しました。卒業後は、広告会社でしばらく経験を積んだのち、ハダネオ監督が憧れていたジョイス・ベルナール(Joyce Bernal)監督のもとで働くチャンスを得ます。ベルナール監督の「Paano kita iibigin」(2007年)でスクリプターとして採用され、映画界にデビューします。そして、ショートフィルムをいくつか監督として制作したのち、ハダネオ監督にとって最初の長編映画「リリア・カンタペイ、神出鬼没(Six Degrees of Separation from Lilia Cuntapay)」(2011年)を公開しました。この作品は、Cinema One Originals Digital Film Festivalで高く評価され、いくつかの映画賞を受賞しましたが、ハダネオ監督は、自分の実力不足を痛感し、ふたたびベルナールl監督の元での修行に戻りました。
ハダネオ監督が、再びメガホンを取ったのは、2014年のことです。この年は「Beauty in a Bottle」「That Thing Called Tadhana(運命というもの)」「Relaks, It’s Just Pag-Ibig」の3本の長編映画を一気に公開しています。そして、「That Thing Called Tadhana(運命というもの)」がインディペンデント映画としては、当時最高の共興記録を打ち立て、Cinema One Originals Film Festivalで4部門中3部門で受賞することとなりました。その後は、順調に作品を公開し続け、フィリピン映画界で一定の地位を確保します。彼女がさらにブレイクしたのは、「ファン・ガール」(2020年)という作品によってです。
また私生活では、同じく映画人のダン・ヒガレス監督と2015年から交際を始め、2020年に結婚しています。2人はお互いの作品で一方が監督を務めるときには、もう一方が脚本や映像監督としてサポートするという二人三脚で、フィリピン映画界を支えています。
アントワネット・ハダオネ監督の全長編映画作品紹介
ここからは、ハダネオ監督の新しい作品を順番に紹介していきます。作品内容の紹介と、視聴できるサイト、おすすめ度なども書いていきたいと思います。視聴済み作品については、タイトルをクリックすることで、作品の詳しいレビューに飛ぶことができます。
1 サンシャイン(Sunshine), 2024年
日本では、2025年に大阪アジアン映画祭で公開されている作品です。私は日程があわず、大阪まで見に行くことができませんでした。内容は、新体操の選手の妊娠が発覚するというものだと聞いています。2025年現在、劇場公開中ですので、現在視聴できるサイトはありません。近年、ハダネオ監督の作品はNetflixで視聴できるようになるので、2026年にはNetflixで見ることができるのではないかと思っています。問題は、日本語字幕が付くか、英語字幕だけになってしまうかです。
2 ファン・ガール(Fan Girl), 2020年
本作は、なかなかぶっ飛んだ作品です。ある芸能人を好きすぎる女子高生が、その芸能人の家に忍び込み、芸能人の裏の顔を知り、何だかんだで個人的な関係にまでなってしまうという物語です。日本人の目から見ると、トンデモないことが次々起こります。そこが非常にフィリピンらしいので、ぜひ楽しんでもらいたい作品です。
視聴サイト Netflix(言語設定が日本語の場合、タイトルを英語で検索する必要あり)
言語 英語字幕のみ
おすすめ度 ★★★★
3 Alone/Together, 2019年
本作は女性の自立の物語です。前半はベタベタなラブロマンスですが、後半になって急転直下。いつまでも精神的に自立できない主人公が、最後に自分の道を自分で切り開く覚悟を持つことができます。前半恋愛パートをじっくりやったぶん、主人公も視聴者も、いつまでも恋愛脳に陥っており、そこから抜け出す発想を持つことが難しいという上手い作りになっています。
視聴サイト Youtube
言語 英語字幕のみ
おすすめ度 ★★★
4 Never Not Love You, 2018年
ハダネオ監督の作品は、大手制作会社スターシネマ系で制作されていることが多いのですが、本作はVIVA Filmsで制作されています。そのためかYoutubeで無料公開されているものの、英語字幕がついていません。しかし、自動生成の英語字幕はつけることができるので、頑張れば見ることができます。私は、現在のところまだ見れてはいません。IMDbの評価は7.0と非常に高く、気になる作品ではあります。
視聴サイト Youtube
言語 タガログ語のみ(自動生成の英語字幕は表示可能)
おすすめ度 ?
5 愛して星に(Love You to the Stars and Back), 2017
ハダネオ監督は、ラブロマンスが得意ですが、本作はその中でも最も可愛らしい作品ではないでしょうか。とにかく掛け合いが楽しく、少しロマンチックで、まあまあハードなことが起こります。それでも全体のバランスが良く、楽しい体験をすることができる作品です。
視聴サイト Youtube
言語 英語字幕のみ
おすすめ度 ★★★★★
6 The Achy Breaky Hearts, 2016
本作はまだ見れていない作品です。そのうち見る予定ですので、その時にあらためて、記事を書きたいと思います。コメディ作品のようです。ハダネオ監督がコメディを作ると、あまり冴えたものにならないので、正直期待していません。
視聴サイト Youtube
言語 英語字幕のみ
おすすめ度 ?
7 All You Need Is Pag-ibig, 2015
本作は典型的なクリスマス映画です。たくさんの年代の違うカップルが出会い、小さなトラブルのあと、カップルの絆がより強くなるという物語です。俳優も有名どころをたくさん起用しており、家族で安心して見れるクリスマス娯楽映画です。良くできた映画ですが、家族でクリスマスに恋愛コメディ映画を見る習慣がない日本人には、需要がないかもしれません。フィリピン人パートナーがいる人ならば、クリスマスに一緒に見てはいかがでしょうか?
視聴サイト iWantTFC(無料視聴可)
言語 英語字幕のみ
おすすめ度 ★★★
8 You’re My Boss, 2015
本作は恋愛コメディですが、タイトル通り、職場を舞台にして、基本的には真面目に仕事をしているので、ベタベタな恋愛物語にはなりません。また、主人公らが働いているのが旅行会社という設定が良くて、素晴らしいく美しいフィリピンの田舎風景を楽しむことができます。絶賛おすすめという程ではありませんが、バランスが良く見やすい作品です。
視聴サイト iWnatTFC(無料視聴可)
言語 英語字幕のみ
おすすめ度 ★★★
9 Relaks, It’s Just Pag-ibig, 2014
本作は、まだ視聴方法が見つかっていない作品です。Star Cinema系制作ですが、同系列のiWant TFCでもYoutubeでも現在のところ見ることができません。ハダネオ監督の作品は、英語字幕がないなどの条件で視聴可能な作品を含めれば、すべて日本から視聴できるのですが、なぜか、本作だけがiWant TFCの視聴作品からも外れています。IMDbの評価は7.5とかなり高いのですが、ひょっとすると一度も英語字幕が付いたことがない作品かもしれません。フィリピン人の評価は基本あまいですから。
視聴サイト なし
言語
おすすめ度 ?
10 That Thing Called Tadhana, 2014
ハダネオ監督の作品は、いずれも女性を主な視聴者と位置付けていますが、本作はその中でも完全に女性向けの作品です。傷心した女性が、こうやって傷を癒したいという理想を映像化したものだと言えるでしょう。男性からすると「こんな女性のどこがいいだ?」と感情移入するのが難しいですが、物語としては楽しく見ることができます。フィリピン女性に好かれたいという人は参考にするのも良いかもしれません。
視聴サイト Youtube
言語 英語字幕のみ
おすすめ度 ★★★
11 Beauty in a Bottle, 2014
美容商品をめぐって、3人の女性が繰り広げるドタバタコメディです。恋愛コメディでは、冴えたシーンをつくるハダネオ監督ですが、完全なコメディを作ると、まったく冴えがなくなり、予想の範囲で物語もギャグも進行します。ハダネオ監督の近年の作品では、コメディ要素はほとんどなくなっているので、コメディには向いていないと自覚したのではないでしょうか。主演3人の女優のファンというのでもなければ、わざわざ見る必要はないと思います。
視聴サイト iWantTFC
言語 英語字幕のみ
おすすめ度 ★★
12 リリア・カンタペイ、神出鬼没(Six Degrees of Separation from Lilia Cuntapay), 2011
本作が、ハダネオ監督のデビュー作です。その後の作風とは全く異なり、ホラー映画専門の無名のエキストラ女優にスポットをあて、モキュメンタリーという手法で、実際にはありませんでしたが、あってもおかしくない出来事をドキュメンタリータッチで撮影します。この主人公の老婆が、ほんとうにおかしくて、非常におもしろい、冴えた作品になっています。ハダネオ監督の作品を見るならば、絶対に見逃せない作品です。
視聴サイト Bili Bili
言語 英語字幕のみ
おすすめ度 ★★★★★
まとめ
アントワネット・ハダネオ監督の全12作品のうち、今年劇場公開中の1作品を除くと、11作品のうち、10作品がなんらか条件で、日本から視聴可能です。とは言え、日本語字幕で視聴できる作品はありません。ですので、ある程度の英語力が必要です。また、ハダネオ監督の作品の中で必見を選ぶとすれば、初監督作品の「リリア・カンタペイ、神出鬼没」と「愛して星に」をおすすめします。