フィリピンのサスペンス映画は面白い「Graceland」

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フィリピン映画では、ホラー映画のみが世界に通用すると、以前書きましたが、犯罪映画もいいですね。日本と違って警察が当てにならないのと、むしろ警察側が犯人側とつるんでいる可能性さえあります。また、フィリピンでは、人の命の価値も低いので、普通の展開ならば生き残れるだろうという人が、生き残れるとは限りません。誰にでも死のリスクは平等にあります。U-NEXTやNetflixに、フィリピンの犯罪映画があまり入っていないのが残念ですが、非常に面白いので、これからも積極的に紹介していきたいと思います。

本作品は、いわゆる誘拐ものです。特筆すべきは、議員の娘と一緒にいたドライバーの娘が誘拐されてしまったことです。議員の娘は間違われたのか誘拐時に射殺されてしまい、犯人が身代金を奪うため、ドライバーが自分の娘を取り返すために、ある種の共犯関係が出来上がってしまうところです。また、犯人の目的は、金だけではありませんでした。次第に複雑性を増していくストーリーに手に汗握りました。

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「Graceland」のストーリー

主人公は政治家の運転手(マーロン)です。彼は、政治家の娘の送り迎えをしたり、ちょっとした秘書のようなこともしています。マーロンの娘は、政治家の娘の同級生で、学校からの帰りは一緒に車に乗って帰ります。ある日、政治家のセックススキャンダルがマスコミに踊り、マーロンは八つ当たりを受けて、運転手の職を解雇されてしまいました。

マーロンは失意のうち帰宅するところで、学校をさぼって遊ぶ娘たちを発見しました。怒ったマーロンは、2人を車に乗せ家まで送ろうとします。その途上、白バイが車を止めました。助手席に乗ってきた警察官は、マーロンに銃を突きつけ、車を指定の場所に誘導します。誘拐事件に遭遇してしまったのです。ところが、娘たちが後部座席で騒いだため、政治家の娘が射殺されてしまいました。犯人は、そのままドライバーの娘を誘拐し、政治家に身代金を要求するためのメッセンジャーになることをマーロンに命じます。

すっかり取り乱したマーロンは、政治家の元にかけつけ、娘たちが誘拐されたことを伝えます。身代金は200万ペソでした。しかし、その日、マーロンは解雇されたばかりだったので、警察に犯人との共謀を疑われます。フィリピン警察なので、いきなり暴力で自白させるという手法です。マーロンは、政治家の娘が死んだことを隠しているので、どこか歯切れが悪く、辻褄があわないところがあるので、警察からの疑惑は晴れないままです。しかし、当日いきなり政治家の気紛れで解雇されたのに、犯人と共謀して誘拐事件を起こすなんで無理があると思うのですが・・・。

政治家の夫婦は、どちらも浮気していたので、娘に対する態度も曖昧だったのですが、犯人から電話がかかってきて、ようやく事の重大性を理解しました。身代金を用意して、犯人の指示に従います。複雑な指示にしたがい、尾行している警察官をまいたところで、2人が連れていかれたのは、意外な場所でした。

(ネタバレ)連れていかれたのは、未成年者の売春宿でした。犯人は政治家に少女を選ぶよう伝え、最後に全員を指名するよう指示します。そして少女らの服を脱がせ、全員に小分けにしたお金を与えるよう指示します。つまり、犯人の狙いは金ではなく復讐だったのです。犯人の娘は、政治家に買われた少女の1人だったというのです。犯人はマーロンにも訪ねます。「お前は何人の少女を政治家のもとに連れて行ったのだ」と。マーロンは政治家に遠慮しながら答えます。「20人以上です」と。

金を配り終え憔悴しきった政治家に、また犯人から電話がかかってきます。金を配ったのだから娘を返して欲しいという政治家に対して、犯人は冷酷に「お前は警察を連れてきたから駄目だ。500万ペソに値上げする」と言い放ちます。政治家は警察などいないと主張しますが、犯人はマーロンに変わるよう伝えます。そして、娘の指を順番に折ると言われたマーロンは、「います」と叫びます。

次の犯人の指示は、政治家が少女売春の罪を洗いざらいマスコミの前で話、議員を辞職することでした。憔悴した議員は、大人しくその指示に従います。結局、マーロンの娘は解放されました。議員は、犯人の指示に従いゴミ捨て場にたどり着きました。そこで、娘の死体と再会します。犯人は言い放ちます。「俺の娘は殺された。だから、お前の娘の命も奪った」と。

最後に、再びマーロンが犯人に呼び出されます。犯人はマーロンに「お前の妻は臓器移植が必要なんだってな」と言い、マーロンが持ってきた封筒を奪い去ります。「俺に任せておけ」と言って、犯人は立ち去りました。

最後のシーンは、犯人が臓器を用意してくれるという意味でしょうか? 必死で娘を取り返そうとするマーロンに、犯人が好印象を持ち、助けようとしたのでしょうか? 誘拐事件がテーマですが、実際に娘を誘拐された側が、犯人との共謀関係にもあり、金を払う側を騙す側面もあるというのが斬新で面白かったです。こういう作品が、日本に入ってくるといいのになと思いますね。

「Graceland」の監督、出演者情報

本作の監督をつとめたRon Moralesさんは、意外にも長編映画を2本しか撮っていません。本作はその2本目の映画です。彼の映画人としてのキャリアは殆どカメラマンです。これだけの映画を撮れるのならば、もっと監督業も務めて欲しいですね。現在、3本目の作品が公開を待っているようなので、それを楽しみにしましょう。主演のお父さんをつとめたArnold Reyesさんは、2枚目俳優ですが、どこか悲劇の顔立ちをしているところがいいですね。本作でも、彼の代表作でもある「Birdshot」でも正義感溢れる二枚目の顔が憔悴していく様子を見事に演じきっています。

「Graceland」の作品情報

オリジナルタイトル:Graceland

公開年 2012年

監督 Ron Morales

主なキャスト Arnold Reyes(Birdshot

Menggie Cobarrubias

Leon Miguel

視聴可能メディア Youtube(英語字幕のみ)

「Graceland」のトレイラー

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