大変な事件が放置され、小さな事件が惨劇を生む「Birdshot」

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これは大変な映画体験でした。さすが、若き天才監督ミハイル・レッドさんの代表作でした。最近は冴えない作品を生み出していますが、こういう作品を再び世に出して欲しいですね。本作は2016年の東京国際映画祭でお披露目になった作品です。また、Netflixで世界的に配信された初めてのフィリピン映画でもあります。

内容としては、狩猟を教えられた少女が、フィリピンが保護している国鳥、フィリピンイーグルを撃ってしまいます。もちろん保護動物を殺してしまったので罪ではあるのですが、地主の不正を訴えにいった農民10人が乗ったバスが行方不明になったという大事件と絡み合い大変な惨劇になってしまいます。Youtubeに綺麗な画質でアップされていますので、英語字幕でも大丈夫という人にはぜひ見てもらいたい作品です。

(Photo cited from IMDb)

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「Birdshot」のストーリー

父が娘にライフルの撃ち方を教えるシーンから始まります。娘の母は田舎暮らしを嫌って出て行ったので、娘は父と2人暮らしです。自分が死んだあとも、1人で生きていけるようにと、父は娘に生きる術を教えたつもりでした。

銃を携え、娘は森の奥に入っていきました。そこで、大きな鷹を仕留めました。しかし、それはフィリピンの国鳥、絶滅危惧種であるフィリピンイーグルでした。また、彼女が入った森は、フィリピンイーグルの保護地域だったのです。フィリピンイーグルを携えて帰ってきた父親は驚愕します。ともかく、銃を隠して、この件について口外しないように娘に言いつけます。フィリピンイーグルと言えば、野生の個体が目撃されたことがニュースになるほど、個体数が減ってしまった野生動物です。私でも知っていましたが、電気もないところに住んでいる娘には、そんな情報は入ってこなかったのでしょう。

一方で、警察官2人が、消えたバスの事件を追っています。若い方の男がドミンゴ、ベテランの方がメンドーサです。2人は巡回中に違法伐採者のグループを発見しました。逃げ遅れた1人を捕獲し、メンドーサが斧で腕を切り落とそうと脅したことで、行方不明のバスの在りかを知ることができました。「犯罪に関わる情報は、お前ら犯罪者の方が知っているだろう」と言って、腕を切り落とそうとするのには、若いドミンゴはドン引きでした。

2人は打ち捨てられたバスを発見しますが、消えた乗客の行方はわかりません。バスに残された手掛かりから、行方不明者の1人の関係者にたどり着きました。そこで、行方不明者が、地主の違法行為をマニラに訴えにいった10人の農民であることを知りました。その件を警察署長に報告したところ、直ちに2人は、この事件の担当から外され、行方不明のフィリピンイーグルを捜索する事件を担当するよう言い渡されました。若いドミンゴは、所長にバス事件に戻すよう嘆願するのですが、所長の答えは「No」です。

やむなく、2人はフィリピンイーグルの捜索を始めます。自然保護区には32羽のフィリピンイーグルが住んでいました。すべての個体にタグが取り付けられていました。2人は打ち捨てられたタグと、現場ちかくに薬莢を発見しました。そこで密猟者の仕業であると断定し、近くに住む父と娘の家を訪れます。父は知らぬ存ぜぬで通しましたが、警察は父親を容疑者として翌日連行することとしました。

しかし、その帰り道に、2人は打ち捨てられたバスを持ち運ぼうとする集団に遭遇してしまいます。ドミンゴは、彼らを尋問して首謀者の名前を聞き出すことに成功しました。そして、警察署に戻って報告書を作っているところを所長に見つかってしまいます。所長は、二度とこのようなことをするな、家族に危険が及ぶぞと警告します。その夜、ドミンゴは帰宅すると家の外に放火されていました。幸い、妻と子供には害は及ばなかったものの、家には「今度は家族にも害が及ぶ」と警告の電話までかかってきます。ドミンゴはすっかりパニックになってしまいました。

(そろそろネタバレ)翌日逮捕された父親は「銃は持っていない。無くした」と主張しますが、銃の保有許可書の記録を確認した警察官は、父親を当然のように拷問します。その時に、最も熱心に父親を殴りつけたのが、理性を失ったドミンゴでした。しかし、父親は口を割らず、その日は他の犯罪者たちと一緒に留置所に入れられました。また、2人は銃を探すために父親と娘の自宅を捜索します。娘は、身を隠しますが、吠える愛犬がドミンゴによって撃ち殺されてしまいました。警察官が去ったあと、隠した銃を取り出し、(たぶん)復讐を誓います。

(ネタバレ)留置所で夜を過ごす父親ですが、他の犯罪者たちの脱走計画に巻き込まれてしまいます。流れで首謀者と逃げていましたが、首謀者は警察官によって射殺されました。命からがら自宅に逃げ帰り、娘と再会する父親ですが、娘は銃を携えています。そこに、ドミンゴとメンドーサが駆け付けました。父親は娘を守るために、娘から銃を取り上げ、娘をサトウキビ畑に突き飛ばしたのち、警察官2人に発砲しました。意識を取り戻した娘が見たのは、射殺された父親の死体と、メンドーサの死体でした。ホウホウの体で立ち去ろうとするドミンゴに、娘は銃を向けますが、引き金を引くことはありませんでした。ドミンゴが去ったのち、娘は銃を携え、再び自然保護区に入ります。そこで、10人の死体が埋められているのを発見しました。空には2羽のフィリピンイーグルが舞っていました。そして、エンディングです。

後半、物語がどちらに向かっているかわからず、本当にハラハラしました。正義感に燃える若い警察官が、自ら不正に手を染めるよう変貌するのも見どころです。相変わらず、善人が1人もいない、巨悪だけが生き残るというフィリピンらしい映画でした。

「Birdshot」の監督、出演者情報

本作品の監督をつとめたミハイル・レッドさんは、映画人の両親を持つ「フィリピン映画界の御曹司」と、私が呼んでいる監督さんです。デビュー作の「レコーダー 目撃者」から2作目の本作までは、神がかっていますね。その後は、少し伸び悩んでいるみたいですが、今後に期待しましょう。印象的な娘を演じたMary Joy Apostolさんは、その後太ってしまったようで、最近は、ちょうど良い感じの脇役を演じているようです。ベテラン警察官を演じたJohn Arcillaさんは、汚職警察官の役を演じさせればフィリピンでNo.1でしょう。そういう役が多い俳優さんです。

「Birdshot」の作品情報

オリジナルタイトル:Birdshot

公開年 2016年

監督 Mikhail Red(アリサカ)(ミッドナイト・アサシンズ)(Block Z)(カトリックスクールの怪異)(Nokuturo)(デッド・キッズ)(Friendly Fire)(レコーダー 目撃者

主なキャスト Mary Joy Apostol

Arnold Reyes(Graceland

John Arcilla(Fuchsia Libre)(Ten Little Mistresses)(メトロマニラ 世界で最も危険な街)(アントニオ・ルナ -不屈の将軍-

視聴可能メディア Youtube(英語字幕のみ)

「Birdshot」のトレイラー

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