現在、出張でヨーロッパにいるので、日本のNetflixには収録されていないもののヨーロッパのNetflixに収録されているフィリピン映画を見ています。本作は、フィリピン映画界の若き天才、Mikhail Redさんの最新作です。彼はデビューから2作は神がかっていましたが、近年はそこまでの名作は世に出せていないようです。本作もホラー映画なので、そこそこの作品でとどまっています。フィリピンの映画監督の宿命ですが、作品にかけられる時間が短すぎますね。もっとじっくり時間をかけさせてあげればと思います。ちなみに、主人公のHeaven Peralejoさんは、本作で初めてみましたが、本作中の格好が80年代アイドルみたいで可愛らしかったです。

(Photo cited from IMDb)
「Lilim」のストーリー
冒頭はいきなりショッキングなシーンから始まります。娘(イサ)が父親を刺殺したところで、それを見た弟(トーマス)が震えています。最後まで、このシーンについて説明はないのですが、作中の会話のニュアンスから、暴力的な父親だったのでしょう。その後、2人は警察の追跡を逃れるために、車で家を飛び出しますが、トーマスは逃亡生活を嫌がって、途中で車を降りて森の中に逃げていきました。イサはトーマスを追いますが、森の中で何者かに襲われ意識を失いました。意識を取り戻したときには、夜になっており、明りに導かれて、森の中の建物を訪れました。
そこは修道院が経営する孤児院でした。リリスは、孤児院にトーマスを見つけます。わけありの2人の様子を見て、修道女たちは、2人の好きなだけ滞在するように言います。孤児院には10人程度の男の子が住んでおり、7人の修道女が働いていました。なぜ、男の子だけなのかと、イサが聞いたところ、明らかに修道女の表情が変わりましたが、うやむやな説明で終わりました。私にはわからなかったのですが、修道女たちが呼び出そうとしている悪魔には、男の子の生贄が必要だったのでしょうか? ちなみに、男の子たちはみんな丸坊主にされていて、一休さんみたいです。フィリピンの孤児院では、男の子は丸坊主が普通なのですかね?
基本的には、2人に親切な修道女たちですが、明らかに様子が奇妙なところも見られます。ある日、1人の修道女が、飾られていた像を壊してしまったとき、試練だといって、その破片の上を裸足で歩かされました。痛みに耐える修道女も、快感の表情を浮かべていました。また、その像は、アダムの妻、様々な名前で呼ばれている女で、その中の1つがリリスだと言っていました。リリスを言えば、私でも知っている悪魔です。なるほど、今後の展開が読めましたね。
子供たちのあいだでは、新入りであるトーマスに対してちょっとしたいじめがあり、トーマスは夜中に修道女のブラとパンティを洗濯室から取ってくるよう指示されます。結局、修道女に見つかってこっぴどく叱られるのですが、その際に何か怪物のようなものを目撃しました。翌日になり、修道女たちは、子供たちのボスに、引き取ってくれる裕福な家庭が見つかったと報告します。その夜、家族が引き取りに来たと言われ、通されたのは、修道院の禁じられた部屋でした。その子供は床から這いだした怪物に食われてしまいました。
修道女たちの奇妙な行動に、恐怖を感じたイサは、トーマスと修道院を脱出しようとするのですが、修道女たちに阻止されます。そして、この修道院を創始したのがイサの母であることを伝えます。そして、トーマスの引き取り先が決まったと言って、イサを監禁してしまいます。修道女たちは、これは母が計画したことで、計画は順調に進んでいると語ります。修道院の院長は、自分はリリスの使徒のリリムであると述べました。これがタイトルですね。リリスをタイトルにすると、先が読めてしまうので、リリスの名前から、リリスを復活させる人の名前を作ったのでしょう。
(そろそろネタバレ)そんなおり、イサとトーマスを探して2人の警察官が修道院を訪れました。警察官はなかば強引に修道院の中を捜索するのですが、いきなり修道女が警察官に発砲。1人を殺してしまいました。その際にもう1人の警察官が修道女を射殺しました。生き残った警察官が意識を取り戻すと、イサと一緒に縛られていました。2人はなんとか脱出して、悪魔に捧げられるトーマスを救出に行きます。しかし、ライフルを持った修道院長(リリム)に遮られます。ところが、リリムは「計画は成就した」と言って、自分の頭をライフルでぶっ飛ばします。何がなんやらわかりませんが、2人は悪魔召喚の部屋にたどり着きました。そこには、「これが悪魔なのかな?」という感じの、気味悪い怪物が人を食っています。しかし、ライフルと拳銃で、案外簡単に退治することができました。とは言え、その際に警察官は命を失うのですが・・・。
(ネタバレ)トーマスを救出したイサは、拳銃で修道女たちを脅しながら修道院を脱出します。その際に、修道女たちはなぜか無抵抗です。しかし、トーマスが他の子どもたちを助けて欲しいと言い出したので、やむなくイサは単独で修道院に戻りました。すると、修道院から悲鳴が聞こえます。トーマスが修道院に引き返してみたものは・・・リリスとなったイサの姿でした。修道女たちが計画したリリスの復活とは、イサの身体にリリスを宿すことだったのです。そしてエンディングです。
まさか、リリスの復活を阻止しようとしている本人が、最終的にリリスを宿すための受け皿であったとは意外な展開でした。ホラー映画として、先の読めないストーリー展開と、悪魔召喚のテーマが良かったですね。ただ、若き天才Mikhaio Redさんが撮るほどかなとは思ってしまいます。
「Lilim」の監督、出演者情報
本作品の監督をつとめたミカイル・レッドさんは、映画人の両親を持つ「フィリピン映画界の御曹司」「若き天才」と、私が呼んでいる監督さんです。彼の作品は、概ねみたので専用のページを作りました。下にリンクがあります。主演のHeaven Peralejoさんは、昔のアイドルのような髪型、服装が印象的でした。たくさんの作品に出演しているのですが、私にとっては見るのは初めてでした。Heavenという名前がすごいですね。
「Lilim」の作品情報
オリジナルタイトル:Lilim
公開年 2025年
監督 Mikhail Red
主なキャスト Heaven Peralejo
Skywalker David
Eula Valdez(ミッドナイト・アサシンズ)
視聴可能メディア Netflix(ヨーロッパ)(英語字幕のみ)