本作は5月をテーマにした作品です。タイトルの「Mayohan」は、「May」と入っているだけあって、5月に行われるお祭りで、ケソン市のものが有名ですが、本作はDinagat島が舞台です。5月の頭に、両親が亡くなったためマニラから、親戚の住むDinagat島のLibijoという村にやってきた少年が、5月に関連した村の行事を体験しながら、地元の美少女と仲良くなるというお話です。単純なプロットなだけに、人々の生活が丁寧に描かれており、外国人である我々には興味深く、楽しめる作品だと思います。

(Photo cited from IMDb)
「Mayohan」のストーリー
おそらく高校生くらいの男の子(ニノ)が、マニラのQubao(バギオに行くバスが出るところですね)から、叔母さんの住む村(Libijo)に車で移動するシーンから始まります。すぐに両親のお墓を参拝するシーンがあるので、両親が亡くなったために、叔母に引き取られたのだと思われます。マニラから田舎に移住するのが嫌なのか、ずっと不貞腐れています。叔母さんの夫、つまり叔父さんは、当初、子供を引き取ることに反対の態度を示していましたが、案外すぐに仲良くなります。
ニノは、子供時代にLibijoに住んだことがあるようです。久しぶりに出会った祖母は、孫を歓迎します。祖母は「あなたが到着した日に、雨が降っているのは奇跡的なことなのよ。5月の最初の雨は、傷や病気を癒すと言われているの」と語ります。さっそく、ニノは雨を集めて、病床に伏す祖母に飲ませようとしますが、「私はもう盲目だからいらないわ。あなたが飲みなさい」と言って、足を引きずる孫に飲ませます。足のケガは説明されませんが、両親と一緒に交通事故に遭ったという設定でしょうか?
一方で、おそらく高校生らしい美少女(リリベス)と友達は、村の人々をまわって、寄付を集めています。フィリピン全土なのか、この村だけなのかわかりませんが、5月の最後の日にダンスパーティーを開くという習慣があり、そのために大人たちに寄付を頼んでいるのです。ニノとリリベスはご近所さんで、リリベスは最初からニノに好意的でした。とは言え、ニノは背が低く、小太りなブサメン君です。どうして、美少女のリリベスが最初から親切なのか不思議で、何か裏があるのかと心配しましたが、特に裏はありませんでした。リリベスがマニラに行きたいと考えていたので気になったのでしょう。
リリベスは、マニラに行きたいと友達にもらしたところ、友達は市長に頼んだらと応えます。その通り、彼女は市長を訪れ、本当に市長はお金を出してくれました。これって、田舎では良くあることなのでしょうか?
村では、聖書の朗読会や讃美歌を歌う集まりなど、宗教的な集まりが行われています。その中で、ニノはリリベスとの距離を少しずつ縮めていきます。しかし、マニラの生活と、田舎の生活は全く別のものですね。
どうやら5月末日のダンスパーティーを主催しているのが、リリベスら高校生のようです。彼女は、音響システムのレンタル代などのために2万ペソを集める予定です。どういうシステムなのかわかりませんが、女の子を集めるために、男から寄付をもっと集めると言っていました。この手のイベントで男だけがお金を払うというのは、世界共通なのですね(泣)
「マニラに行きたい、母を探したい」と祖母に伝えたところ、「あなたを捨てた母なんかに会えるわけがないでしょう。あってもわからないわ」と否定的です。
高校生らは、準備のかたわらNipa Wineと呼ばれるヤシ酒を飲んで酔っ払います。私もほぼ同じものをカンボジアで飲みましたが、あまり得意ではないですね。ただ、フィリピンのものはカラマンシーで風味を付けることがあるようなので、少しは飲みやすいかもしれません。
あと、よくわからないシーンですが、5月の末日が近づいたころ、ニノたちは、教会に卵をお供えするためにいきました。たくさんの卵がお供えされていたので、何らかの意味がありそうです。
さて、いよいよ、5月末日のダンスパーティーです。どうやら宗教的なイベントでもあるようで、まずはキリストやマリアの像が人々に担がれて入場します。そのあと、着飾った女の子と、パートナー、そして2人を囲む額縁みたいな枠と、それを支える人々が次々に入場します。言葉であらわすのは難しいので、ぜひ映像で見て欲しいですね。
これも不思議なのですが、市長が挨拶したのち、ダンスパーティーの始まりです。まず、市長が躍るのですが、伝統的に最も不細工な女の子と踊るのだそうです。スキャンダルを避けるためだそうです。市長は、踊り終わるとリリベスを呼び出し、マニラに行くためにと、さらにお金を渡し、銀行口座を開けば定期的にお金を送ってやると約束しました。これが、田舎市長の役割なのか、親切心なのか、下心でやっているのか自分にはわかりませんでした。フィリピン人に聞いてみたいですね。
その後、ニノとリリベスが躍りましたが、途中で喧嘩がはじまり、ダンスパーティーはめちゃくちゃになってしまいました。とは言え、そんなことを気にしている人はおらず、翌日、2人は再び会い、ニノは「来年も君と踊りたい」と思いを伝えます。リリベスは「私は、きっと来年はここにいないけど、あなたのために戻って来るわ。あなた携帯電話を持っている?」と返します。そしてエンディングです。
シンプルなボーイ・ミーツ・ガール作品ですが、田舎の伝統的な生活や習慣が丁寧に描かれており、面白い作品でした。しかし、主人公のニノがブサメン過ぎて、最後にリリベスに利用されて終わるのではないかとハラハラして見ることになったのは、監督の計算だったのでしょうか?
「Mayohan」の監督、出演者情報
本作の監督をつとめたDan Villegasは、本作が長編映画デビュー作です。次が「English Only, Please」ですから、なかなか良いスタートを切りましたね。最近はテレビドラマを監督することが多いのですが、2020年頃まではコンスタントに映画を撮っているので、順番に見ていきたいですね。最新作の「Uninvited」は現在Netflixで視聴可能です。
ヒロインのLovi Poeさんは、最近では、仕事ができる女を演じることが多いですが、本作公開時は19歳。さすがに若くて、初々しいですね。しかし、田舎が舞台の作品でも、都会で一旗揚げてやろうという野心が目に宿っており、怪しげな魅力を放っていました。
「Mayohan」の作品情報
オリジナルタイトル:Mayohan
公開年 2010年
監督 Dan Villegas(English Only, Please)
主なキャスト Lovi Poe(汝が子宮)(バトル・オブ・モンスターズ)(Seasons:めぐりゆく季節の中で)(Guilty Pleasure)
Elijah Castillo
視聴可能メディア Youtube(英語字幕)

