ブログを始めて4か月くらいになり、その間ずっとフィリピン映画ばかり見ていたので、フィリピン映画の間合いというものに慣れてきました。日本やアメリカの映画と比べると、スローな展開で、緊迫した場面でも、誰かが大したことない物を取りに戻ったり、どうでも良いことをするシーンが入ります(その後の伏線などにはなりません)。我々からすると、無駄なシーンでしかないのですが、これがフィリピン人の間合いでなのです。本作は、フィリピン的にはかなり成功したアクションホラー映画ですが、日本の映画サイトでの評価は賛否両論という感じでした。やはり、この独特の変な間合いが合わない人もおり、この変な間合いに奇妙な魅力を感じる人もいるようです。英語の先生に聞いたところ、オリジナルタイトルの「Tiktik: The Aswang Chronicles」の「TikTik」は、「スパイ」と言う意味と「かたちが変わる化け物」という2つの意味があるのだそうです。本作は2年後に「Kubot: The Aswang Chronicles 2」という続編が作られています。こちらは英語字幕つきの配信を見つけることができませんでした。英語タイトルさえないので、フィリピン国内でしか上映されてないのではないかと思います。単純な話だと思うので、英語字幕がなくてもわかるかもしれません。いずれチャレンジしたいと思います。

(Photo cited from Amazon.jp)
「バトル・オブ・モンスターズ」のストーリー
アジアっぽい音楽で始まります。背景はCGのようで暗い世紀末のような雰囲気です。また、コミックのコマ割り風の演出が取り入れられており、こうした非現実的な物語を展開するための舞台を準備しました。主人公がトライシクルでキャンプにやってきます。文明世界が滅んでしまったあとに、生き残ったひとたちがキャンプを形成して生きているようです。
男(マッコイ)は、妻(のちに入籍はしてないことが判明)が妊娠後、実家に帰ってしまい、妻を迎えに来たのです。しかし、妻の実家を訪れたところ、けんもほろろに拒絶されます。実際、ここまでのシーンでも横柄で敵ばかりつくるタイプの人間です。そりゃあ、こんな男とは別れた方が正解でしょうと思わせます。マッコイはいったん出直すことにして、妻の父のアドバイスにしたがって、誕生日プレゼントに豚でも買って機嫌を取ろうということになりました。
2人は、町はずれの奇妙な村で子豚を購入しました。しかし、その豚はアスワングが化けたものだったのです。アスワングとは、フィリピン土着の化け物で、吸血鬼の一種と説明されますが、ドラキュラ伯爵のような高貴な存在ではなく、たいていはゾンビみたいに汚らしい格好をしており、知的にも低いです。血を吸うというより、噛みついて人を食らうという描写が多く、弱点も作品によってさまざまです。日光に弱かったり、にんにくや十字架に弱かったり、首を切り落とされることで殺せたりと、バラバラです。本作は、日光と、にんにくと塩にも弱く、さらに銃器にも、あらゆる武器に対して弱いです。こんなに弱いアスワングを初めて見ました。コミック風の演出を意識していることからも、バッタバッタと倒す爽快感を出したかったのでしょう。
豚を持って行って、彼女の家の団らんに混ざるのですが、妻も妻の母もまったく、マッコイを受け入れる気配はありません。マッコイは非常に気まずい気持ちで過ごします。その後、マッコイが差し入れた豚が、アスワングに変身し、胎児を狙います。本作品では、アスワングは胎児が大好物ということになっています。アスワングは、驚いた女にランプスタンドで殴られ、その後、父によって農業用のスキで串刺しになってしにました。その後、アスワングの一家があらわれ、本格的な戦闘となります。先頭の中で妻の母が亡くなりました。
(そろそろネタバレ)多くの仲間を失ったアスワング一族の父は、自分の口から鳥を生み出し、それを子供たちが食べることで、アスワングの子供たちは第2形態に変化しました。これまでは、人間の形で時に4足歩行していたのですが、第2形態はアメリカ映画のエイリアンみたいなかたちになりました。若干パワーアップしたようで、窓を割って家に入ってきました。しかし、アスワングは意外と簡単に倒されます。しかし、口から鳥を産むシーンをフィリピンホラーではよく見るのですが、何のモチーフに由来するのでしょうか?
妻の甥っ子は、どうやらアスワングの血を引くものだったのですが、人間として育ったようで、最後まで襲ってくるアスワングを撃退し、憤死しました。タイトルのタガログ語で「スパイ」の意味を読み取っていたフィリピン人は、この男が裏切るのではないかとずっと心配していたでしょう。
アスワングは残り父だけになってしまいました。すると、アスワングの大群が現れます。そのリーダーの男は「息子と孫が迷惑をかけて申し訳ない。しかし、こうなってしまっては引き下がれない。お前たちの命をもらう」と言って宣戦布告します。その頃、妻は産気づいていました。アスワングの攻勢が弱まったところで、近所のサリサリストアに移動し、妻は子供を産みました。サリストアのおばちゃんは、マッコイと妻の父に武器を渡します。マッコイはエイの尾を鞭にしたものを使って、父は農薬を散布する装置に塩水をいれて戦います。また、サリサリストアの子供が、にんにく入りスナックを吹き矢のような筒で飛ばして戦います。フィリピンでは、エイの尾を鞭として使うことがあるのでしょうか? あるいは、ここはギャグだったでしょうか? さすがに、エイの尾が死後も柔軟性を維持できるとは思えず、やはりギャグだったのでしょう。
(ネタバレ)この3人が次々とアスワングを倒していき、残りはボス(祖父)だけになりました。アスワングは異常に弱く、にんにく入りのスナックが当たっただけで溶けて死んでしまいます。アスワングのボスも第2形態に変化しました。翼を持つボスは、産まれたばかりの赤ん坊を奪います。それに怒った妻が、ボスに向けて塩を投げつけたところ、半分溶けてしまいます。落ちてくるあかちゃんを、妻がナイスキャッチ。苦しんでいるボスに、マッコイが怒りの鞭をふりおろして、終了です。
アスワング、弱すぎでした。あれだけの大群で押し寄せて、素人に鞭や塩、スナック菓子で撃退されてしまいました。一応、アスワングにも見せ場はあり、主人公らが最初に訪れたキャンプに助けを求めにいったとき、キャンプにいた人たちを全員くらいつくすことができています。
全体的に、そこそこの緊張感に、適度なゆるさ、そしてバッタバッタと怪物を倒していく爽快感があり、面白い作品だったと思います。本作は日本でDVD化されています。やはりDVD化される作品は、全体的にレベルが高く、はずれ作品は少ないように思います。まあ、アメリカ映画並みのクオリティを求めると、そこまでではないのですが・・・。
「バトル・オブ・モンスターズ」
本作品の監督をつとめたErik Mattiさんは、この頃はノリに乗っている時期です。本作の翌年に名作「牢獄処刑人」を発表しています。本作もフィリピン内での大ヒットを受け、2年後に続編を公開しています。この時期の作品で海外に輸出されていないものがあるのが残念です。
主役を演じたDingdong Dantesさんは、悪人顔のため、様々な映画でヤカラ系の役を演じています。本作でもそんな感じのキャラクターです。しかし、だからこそ、アスワングの大群を撃退できたのだろうと思わせたところが、キャスティングの妙でした。最近は落ち着いてきたのか、ラブロマンスを演じています(!)
「バトル・オブ・モンスターズ」の作品情報
オリジナルタイトル:Tiktik: The Aswang Chronicles
公開年 2012年
監督 Erik Matti(A Girl and a Guy)(バイバスト)(牢獄処刑人)
主なキャスト Dingdong Dantes(Rewind)(トランスバトラー)
Joey Marquez
Lovi Poe(Seasons:めぐりゆく季節の中で)(汝が子宮)
視聴可能メディア DMM TV(見放題) TSUTAYA DISCAS(日本語字幕)