フィリピン南部のイスラム地区の生活を知る「汝が子宮」

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本作は、2012年に公開された映画です。ブリランテ・メンドーサ監督が、カンヌ国際映画祭で監督賞を取ったのが2009年ですから、監督のちょうど油が乗った時期に撮られた作品です。とは言え、なかなか地味な作風で、役者を配してストーリーを演じさせているシーンもありますが、おそらくは市井の人たちの生活ぶりをドキュメンタリー的に撮って、そのまま使っているシーンも相当あるのではないかと思います。テーマは、フィリピン南部のイスラム地区に住む人たちの生活について、そして子供を授かるために第2婦人をもらうため、各所に交渉してまわるというのが、メインストーリーになります。現在のところ、日本の主要なプラットフォームから見ることはできません。私は、ちょっと怪しげなサイトにアップされていたので、そこで英語字幕で見ました。

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ストーリー

主人公は50代くらいの初老に差し掛かった夫婦です。しかし、フィリピンの田舎の人は老けて見えるので、もうちょっと若いかもしれません。2人は主に漁業で生計を立てていますが、妻はときどき村の助産師としても働いています。おそらくは、助産師として数々の出産の立ち会っているからでしょう、妻は自分たちに子供がいないのを不憫に思い、夫に第2婦人をめとることを勧めます。夫は、経済的な理由から難色を示していたのですが、やがて2人で嫁探しに各地をまわることになります。この過程で、さまざまなフィリピン・イスラムの生活ぶり、風習を知るというのが、本作の見どころになります。これが2010年ごろですか・・・相当な田舎ですね。フィリピンは、都市部と田舎の生活格差の大きさがすさまじいですね。まだ電気が来てないところも多いですし。

さて、嫁探しですが、最初に訪れた家では、嫁を出すことには同意してもらえますが、20万ペソ(50万円)の持参金が必要と言われて断念。ちなみに、その彼女はまだ高校在学中でした。この時代に、在学中の女子高生の結婚相手を親が結婚を決めるんですね。次に訪れたところでは、15万ペソと言われます。結局、友達などにお金を出してもらって、若いお嫁さんを迎えることになります。田舎では、子供がいないと可哀そうという気持ちがあるみたいな様子でした。また、コミュニティの維持のためにも、持参金を助け合う仕組みがありそうです。一族の顔合わせのパーティで、ついにお嫁さんが登場。予想外に美しいお嫁さんに、夫と妻がいろめきます。

(ここからネタバレです)しかし、夫と第2婦人の最初の顔合わせで、大変なことを言われてしまいます。「あなたの持参金では、私に子供が産まれたら、第1夫人を追放しなければなりません」。驚く夫。何も知らない妻に目をやります。「さすがに、ここまで苦楽を共にした妻を捨てることはないだろう」と思って見続けたところ、その晩、暗い寝室の中で交わる2人の姿が見えます。そこで映し出される顔は、第1夫人でした。ほっとしましたよ。しかし、最後に出産シーンがあり、第1夫人が介助しています。そして、夫も手助けしているのが映ります。ということは、この出産している女性は、あの第2婦人ということになります。ここでエンディング。結局、第1夫人は、夫の元を去ることになったのでしょうか・・・。あまりにも自己犠牲的な妻の姿でした。

監督、出演者情報

監督は、巨匠ブリランテ・メンドーサ監督。いずれ、特設ページを作りたいと思います。主演の妻を演じたのが、フィリピンのレジェンド女優Nora Aunorでした。日本で例えるならば、吉永小百合や原節子みたいな感じでしょうか。本作では、あまりに役作りが良くできていて、まったく気づきませんでした。普通に、田舎の漁師の妻に見えます。Nora Aunorと言えば、今年(2025年)の5月くらいに亡くなり、各所で追悼コメントが出ていました。彼女の代表作と言えば「アメリカ(1984)」「奇跡の女(1982)」あたりだと思います。彼女を追悼するために、Youtubeで「アメリカ」が無料公開されたので、早く見なければと思っています。

作品情報

オリジナルタイトル:Thy Womb

公開年 2012年

監督 Brillante Mendoza(GENSAN PUNCH)(ローサは密告された)(Feast-狂宴-)(アルファ、殺しの権利)(リプレイス 絡みあう欲望)(囚われ人 パラワン島観光客21人誘拐事件)(あの夏の欲望)(ヴァージンフォレスト 愛欲の奴隷

主なキャスト Nora Aunor(罠~被災地に生きる

Bembol Roco

Lovi Poe(Seasons:めぐりゆく季節の中で

視聴可能メディア ネット上の怪しいサイトにあり(英語字幕)

作品トレイラー

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