本作は、2025年12月にNetflixに収録された映画作品です。本作の特筆すべき点は、63分という短さです。エンドロールが3分くらいあるので、実質60分程度です。そのため説明不足なところも多く、父親がどんなギャングの抗争に巻き込まれているのかわからないのですが、作品の主題は、抗争自体にはなく、父と息子の物語です。家庭を放置して何をやっているのかわからない、役立たずだと思われていた父親が、息子と一緒に、ガンの手術前の妻の誕生日会に向かうという物語です。そこに、ギャングの襲撃があり、父と息子は激しい銃撃戦に巻き込まれていきます。ギャングの構想を理解しようとしても情報不足で無駄なので、単純に銃撃戦と、息子の父に対する見方が変わるところを見る作品かなと思います。

(Photo cited from IMDb)
「The Ride」のストーリー
最初は、ガソリンスタンドで、主人公らがターゲットとなる男たちを襲うシーンから始まります。しかし、逃げられてしまい、カーチェイスの末、バイクで追っていた主人公が、ターゲットを射殺して終わりました。しかし、この始末の付け方は、ボスの望んだかたちではなかったようで、父親はボスから厳しい叱責を受けます。また、ボスとの会話から、父親は以前所属していた組織を裏切って、現在のボスに属したようです。中盤で、クーデターという言葉が出たので、組織内の内紛だと思われます。つまり、内部で頭角をあらわした新しいボス側についたということでしょうか?
一方、息子は大学も休学し、車のレースにあけくれています。とは言え、お坊ちゃんではないので、車関係の仕事をしながら、やっているようです。当然ですが、レースのシーンがありません。息子のところに、母親から電話がかかってきます。母親は、末期の癌に冒されており、近々手術することになっています。手術の前に、母の誕生日があるので、最後になるかもしれないので、みんなで会おうということになっています。
息子のもとに、父親が迎えにきました。滅多に顔を見せない父親が、父親ずらをして迎えに来たことに対して、息子は軽く苛立ちます。道中、母親の好きなドラゴンフルーツを買うために、市場によったところ、父親が対立しているギャンググループに遭遇してしまいました。さっそく、問答無用の銃撃戦が始まります。対立グループは、もともと父親が所属していた組織なので、銃撃戦の中ちょっとした会話もあり、そのシーンがニュースで映像として流れてしまいました。結局、父親は元仲間を容赦なく殺害し、この状況から逃れました。息子は、ここで初めて、父親がギャングの一員であったことを知り、ドン引きです。
また、相棒を通して、妻の最後の誕生日に出席するために、今日の会合には行けないと伝えていたのですが、ボスから問答無用の呼び出しを受けてしまったので、ボスの元に向かいます。到着すると、ボスを含め、取り巻きも全て殺されていました。現場で、死体を運び出すギャングが、クーデターだと言っていました。こうして、組織の中から独立した新興ボスは排除されたのでしょう。
(ネタバレ)ともかく、いったん隠れ家に潜伏しようということになりました。けっこう立派な隠れ家で、庭には罠まで仕掛けれれています。これを見るに、父親はギャングでもそこそこの地位にいたんだろうなと思われました。この頃には、息子の父親を見る眼差しはすっかり変わっていました。しかし、この隠れ家にも敵が襲ってきて、再び激しい銃撃戦になります。息子が人質にとられ、危ういところでしたが、父親によって襲撃者は全員排除されました。
これで安全と思ったのか、再び妻のもとに車で向かいます。ところが、湾岸エリアで警察官が待ち伏せしており、完全に包囲されてしまいました。ちなにに、拳銃を構えて包囲していた警察官に女性の姿も見られました。フィリピンでは、こういう場にも女性警官が出動するのでしょうか? 映画の中だけのことなのでしょうか? もはや、これまでと考えた父親は、妻に会うことを息子に託し、息子を人質にとったのち、わざと隙を見せて警察官に射殺されました。父親の犠牲によって、息子は共犯の疑いを晴らしたのでしょう。警察の保護のもと、息子は泣き崩れます。そしてエンディングです。
非常に単純なストーリーなので、すんなり見ることができます。父親がギャングだと知って、見直す息子ってどうなの?とは思いますが、最後はフィリピン人の好きな、子供のために父親が犠牲になるというシーンで締めます。近年ほとんど交流がなかった夫婦ですが、妻の最後の誕生日のためには、命がけで出席しようとする姿も、フィリピン人の好みでしょう。
「The Ride」の監督、出演者情報
本作の監督をつとめたThop Nazarenoさんは、本作が4作目の長編映画作品です。近年はテレビドラマを中心に監督をつとめているようなので、短い作品に慣れているのでしょう。フィリピン映画には、アクション映画が意外と少ないので、アクション映画を撮る監督さんには頑張って欲しいですね。
本作のウリは、何と言っても二枚目俳優、Piolo Pascualさんが、父親役で主演していることでしょう。彼が、息子思いの父親を演じつつ、アクションシーン満載ですから、ファンは大満足なんじゃないかと思います。
「The Ride」の作品情報
オリジナルタイトル:The Ride
公開年 2025年
監督 Thop Nazareno
主なキャスト Piolo Pascual(Moro)(牢獄処刑人)(もう一度あなたと)(僕のアマンダ)
Kyle Echarri
視聴可能メディア Netflix(日本語字幕)
