植民地化されなかった架空のフィリピンを描く超大作「The Kingdom」

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これは面白い大作映画作品でした。スペイン・アメリカに植民地されず、固有の王朝を発展させたカラヤアン(フィリピン)の王位継承問題を描きます。非常に衣装や小道具がよくできており、確かに固有の王朝文化があれば、こんな風になるかもしれないという感じがします。フィリピンは、植民地化される前に、固有の王朝がなかったアジアで唯一の国ですので、参照するべきはマレー文化でしょう。本作の中では、おそらく多くの王室での儀礼はマレー文化を参照しているのだと思います。一方で、難しいなと思ったのは、本作では「先祖の法」と呼ばれる固有の法的価値観があり、それに基づいてドラマが展開するのですが、もともとの王朝がないため、まったく架空のものなので、視聴者としては「そんな馬鹿な」と思ってしまいがちです。日本ならば、少々理不尽な法律でも、武士の時代にはそれが普通だったなどと、その法的価値観が共有されているのでドラマの軸に据えることができますが、この点だけはちょっと厳しいものがありました。とは言え、問題はその程度のことで、超大作であることは間違いなく、多くの人に見てもらいたい作品です。

(Photo cited from Orange Magazine)

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「The Kingdom」のストーリー

大海原で漁をする漁民たちに、他国の船が近づいてきて放水するぞと威嚇するシーンから始まります。一応、名前と国旗は変えていましたが、明らかに中国の船です。そこに、フィリピン(カラヤアン)軍艦が近づいてきて、他国の船を追い払いました。漁民たちは喝采します。

次のシーンから王室に舞台を移します。王の日常、儀礼の数々などが描かれます。王は、すでに妻を亡くしており、3人の子供がいます。長女は出戻りで、小さな子供がいます。比較的民衆よりの態度をとっています。長男は、ギャンブルと格闘技を愛する冷酷な男で、軍の支持を受けているそうです。そして、次女は近々、タイ王室の王子と結婚することになっています。王は、まだ後継者を決めていません。また、反王室運動も各地で勃発しており、そんなに安定した状態ではなさそうです。

いよいよ、次女とタイ王子の結婚式が取り行われることとなり、次女は護衛に守られながら、式場に向かいます。ところが、その最中にテロリストに襲われ、次女は誘拐されてしまいました。このとき、誘拐された王女を助けたのが、元近衛兵のスロでした。彼は、コミュニティで阻害されている描写があり、被差別民族なのかなと思いましたが、どうやら元王室での事件が関わっていることが後半にわかります。先回りして説明すると、現在の王が即位する際に、王の兄弟との後継問題が勃発し、それに巻き込まれるかたちで、「先祖の法」に従って、王とナイフで戦うこととなり、王によって殺されたのです。この「先祖の法」がらみのところが、本作ではよくわからないところです。

ソロと次女は、テロリストから逃げ、ソロの知り合いの家にかくまわれることになったのですが、そこもテロリストに見つかり、ソロの知り合い家族は理不尽にも殺されてしまいます。しかも悪いことに、彼らは反王政グループのテロリストであると考えられていましたが、軍の兵士であることがわかります。

(ネタバレ)一方、その頃、王たちは反王政グループの代表と、王女返還を交渉していました。反王政グループは、自分たちが誘拐したわけでも、王女が手元にあるわけでもないのですが、ぬけぬけと自分たちの要求を伝えます。とは言え、王女が手元にある証拠として出したものが見当違いのものだったために、嘘が発覚。交渉の場は、銃や刃物を使った乱闘になってしまいます。その乱闘の中で、長男がナイフで刺されてしまい絶命します。

交渉が破綻した上に王子を失い、途方に暮れる王室ですが、そんなときに、次女とソロが帰還します。王は愛娘との再会を喜び、彼女を連れてきたソロに感謝します。ところが、ソロの父は、近衛隊長として、現在の王に「先祖の法」が定める決闘により、命を落としたという因縁があります。この「先祖の法」により、王とソロは翌日決闘することが決まり、その晩は牢にて過ごすことになりました。

その夜、王はひとりで牢にいるソロを訪ねます。そして、ソロの父の件を謝罪し、王国を維持するために「王の血は他のものより尊い」というファンタジーを演じなければならない状況を嘆きます。そして、翌日の決闘で自分が敗れることになったら、娘を守って欲しいと依頼します。その後、長女を呼びつけ、今回の王女誘拐事件の黒幕が長女であったことを看過したことを伝えます。長女は、父に振り向いて欲しかったからと泣きながら弁明しました。

決闘のシーンは、王が高齢なので見ていられないようなアクションシーンでしたが、結局、ソロが王を打ち負かし、王は亡くなってしまいます。その結果、王が後継者を指名していなかったため、長女が国王となることが決定しました。

ところが、そもそも次女誘拐の首謀者が長女であることが清算されておりません。しかも、長女と王室お抱えの占い師が王位を継承したことを喜んでいます。彼女らは、長男が王位を継ぐと非道な政治を敷き、次女が王位を継ぐと、次女の結婚を通してタイに支配されることを恐れて、妹の誘拐を企てたというのです。その会話を偶然聞いてしまった次女は怒り、国民に伝える言います。そんなことは許さないと、ナイフをかざす長女ですが、自分の息子に目撃されてしまい、妹を殺すことはできませんでした。結局、次女が王位を継ぐことになり、祝福のシーンで物語は終わります。

せっかく王朝を作り上げても、政治的に不安定で、タイ王室と婚姻関係になると、支配されることを心配しなければならないとは、フィリピン人の自己評価は低いですね。もう少し、架空のカラヤアン王朝の産業や、外交なども垣間見えると面白いかなと思いましたが、それだと長くなりすぎてしまいますね。王位継承問題を通して、架空の王朝を描くというのは妥当だと思いますし、そこに「先祖の法」という理念を導入したのも、わかりにくくはありましたが、良かったと思います。マレー文化との比較や、「先祖の法」など、詳しく深掘りしたらもっと楽しめそうです。

「The Kingdom」の監督、出演者情報

本作の監督をつとめたMichael Tuvieraさんは、多くの作品に関わったベテランですが、最近はプロデューサーとして主に活躍している人です。本作もプロデューサー的な力がなければ、実現できないような大作でした。またキャストも豪華で、王室のメンバーはもちろん、そんなに大きな役でなくても有名な俳優が演じています。フィリピンが誇る大作映画であることは、間違いなさそうです。

「The Kingdom」の作品情報

オリジナルタイトル:Isang Himala

公開年 2024年

監督 Michael Tuviera

主なキャスト Vic Sotto

Piolo Pascual(Moro)(牢獄処刑人)(僕のアマンダ)(The Ride)(Manila’s Finest)(もう一度あなたと

Sue Ramirez(Love Lockdown)(デッド・キッズ)(母の面影が語ること)(ワン・ヒット・ワンダー 君を想う歌)(Mommy Issues

視聴可能メディア Netflix(英語字幕)

「The Kingdom」のトレイラー

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