本作は、ややもすると重いテーマになりがちな子供の親権争いをコメディで描く作品です。夫の不倫とモラハラに耐えられなくなった妻が、家を出るのですが、金持ちである夫が権力を使って子供とあわせないよう仕向けます。そこで、妻と頼りない男友達3人が、娘の行く先々に仮装してあらわれるて、娘との束の間の再開を楽しみます。しかし、そんな試みはバレてしまい、いよいよ娘と共に海外に脱出されてしまうというところで大逆転という痛快なラスト、あくまでハッピーに終わる陽気な作品です。惜しいのは、最後の逆転劇が、序盤からの伏線を一気に回収して、「なるほどその手があったか!」という見事な逆転シナリオだったら良かったのですが、「そんなことで何とかなる?」というようなもので、イマイチ説得力のあるものではありませんでした。とは言え、そんなシナリオの弱さに目くじらを立てる必要もなく、ハッピーなコメディを楽しみ、娘を想う母の気持ちに純粋に感動すれば良い作品なんじゃないかと思います。母親役を演じた女優さんが、非常にキュートなので、その点も楽しいところです。

(Photo cited from IMDb)
「ConMom」のストーリー
金持ちですが、不倫をしており、モラハラ器質な夫に、妻(ピンキー)が別れを切り出すシーンから始まります。しかし、フィリピン映画を見ていると、金持ちでモラハラ夫は、西洋人の血が多く入った俳優が起用されることが多く、実際、西洋に嫁いだフィリピン人がそんな目に遭っていることが多いのかなと思いました。
しかし、ピンキーにとって誤算だったのは、娘を引き取れなかったことです。夫は有り余る資産と、政治家や行政へのコネを有しており、庶民であるピンキーには、勝ち目がありません。また、当初は娘に弁当だけでも渡しに行っていたのですが、夫の介入により、それも不可能になってしまいます。また、娘とのビデオ通話に使われていたタブレットも取り上げられてしまい、ピンキーは娘との接触を一切封じられてしまいました。
そこで、その友達の3人衆が協力して、ピンキーと娘が合える場所を作ってあげることが、本作品の中盤のギャグパートです。ある時は、道路の清掃員としてお迎えの車を止めて、娘との再会を喜び、ある時は、おもちゃ売り場でキャラクターに化けて登場します。お手伝いさんが、娘と常に一緒にいるのですが、彼女は最初から母親に同情的なので協力してくれます。ところが、夫と娘たちが旅行先にも先回りして、娘とのひと時を楽しんでいたときのことです。夫たちの元に戻った娘は、ひとりプールで泳ごうとして溺れかけてしまいます。夫は愛人とイチャイチャしており、祖母はうたた寝していました。そこで、ピンキーが助けに入り、自分たちがやっていたことが全てバレてしまいます。
娘に会うことが非常に困難になってしまったピンキーたちは、娘を誘拐することを決断します。そこで、映画監督である友達の経歴を活かして、学校内で映画の撮影をするという体で、学校に潜入します。その日は、娘の誕生日パーティの日で、家族も教室内にいるので、夫には離婚(アナルメント)の書類にサインすると言って、別の場所に呼び出し、家族を祖母とお手伝いさんだけにしました。しかし、この誘拐劇は当然のように失敗。退散を命じられるのですが、娘が母と別れるのを嫌がったので、誕生会だけは一緒に過ごすことができました。この頃には、祖母の態度もピンキーに対して同情的に変わってきました。そもそも、子供の親権にこだわり、母親が会えないように工作しておきながら、自分は愛人を家に連れ込んでいますからね。母親と言えども女ですから、内心は微妙な気持ちだったのでしょう。
(ネタバレ)この誘拐未遂に腹を立てた夫は、娘をアメリカで養育することを思いつきます。さすがにアメリカまでは追ってこれないだろうと考えたためです。しかし、この話を娘が聞いており、娘はお手伝いさんの助けを得て、家を脱出。お手伝いさんと、ピンキーの元に行ってしまいます。何もしらない夫たちは、誘拐されたと考え警察に相談しました。
ピンキーらは娘との再会を喜ぶのですが、娘の両親一緒に住みたいという気持ちに負けて、やはり娘を夫のもとに返しにいきます。そこで土下座して、自分はどんなことでも耐えるので、娘のところにいさせてくださいと頼みます。さすがに、これには夫も動揺しましたが、やはり突っぱねます。
(ネタバレ)いよいよアメリカへの旅立ちの日。ピンキーたちは、ケースワーカーを連れて空港で待ち伏せします。ケースワーカーが言うには、子供を外国で養育するには、両親の同意が必要だと言います。すると、夫はピンキーのサインが入った書類を見せ、同意は取れていると言います。「そんなサインは偽物だ」とピンキーは絶叫するのですが、夫はすでに承認をもらっている、もう出国するのを待つだけだと強気です。これには、夫の味方をしていた空港の職員も困惑顔でした。
その頃、頼りない3人組は、空港職員に扮して娘を連れ出すことに成功しました。そして、友達の友達の友達の友達という行政の偉い人とのコネが、ここで役に立ち、偉い人が空港に登場。そして、国外出国は認められないと宣言します。夫は茫然として立ちすくみ、ピンキーと娘、3人組は笑顔で空港から脱出します。そして、エンディングです。
最後の最後の権力者が、誰だそりゃ?となってしまったのが残念です。また、仮装した母と友達が娘を誘拐するというネタが2回繰り返されているのも芸がなかったですね。空港以降のシーンをもう少し工夫すればもっと良い作品になったと思います。ただ、本作の魅力は、シナリオではなく、様々な仮装で娘の前にあらわれるキュートな母親と、その陽気な友達たちのシーンです。そんな母親が絶望して、もうモラハラでも不倫でも耐えるから、娘と一緒にいるために家に帰りたいと土下座するシーンへと繋がるのが心を打ちます。本当に、惜しいのは最後のシーンだけでした。
「ConMom」の監督、出演者情報
本作の監督をつとめたNoah Tongaさんは、エディターとして長く映画やドラマに関わって来たのち2024年に長編映画監督としてデビューした監督さんです。しかし、もう3本目の作品です。さすがにキャリアが長いので仕事が速いですね。本作では、3人の名前が脚本家として連なっているのですが、最後の最後でいい加減になってしまうというフィリピンらしい脚本でした。主役の母親を演じたKaye Abadさんは、公開時42歳ですが、全然そうは見えません。若々しく非常にキュートです。若い時にどんなだったか気になりますが、キャリアに4年くらい空くことが頻繁にあり、おそらく子育てを優先したのではないでしょうか? 年齢の割には出演作品が少なく、良い役をやるようになったのは、むしろ40歳を過ぎてからなのかなと思います。遅咲きの女優さんですね。男友達3人は、様々な映画で頼りない男たちを演じる良く見る顔ぶれです。この顔ぶれも安心感を与えますね。
「ConMom」の作品情報
オリジナルタイトル:ConMom
公開年 2025年
監督 Noah Tonga
主なキャスト Kaye Abad(旅の先に)
Paolo Contis(Fuchsia Libre)(Izla)(A Faraway Land)(The Oscar Fantasy)(旅の先に)
Kit Thompson
視聴可能メディア Netflix(英語字幕)

