私は、レズでもなく、女でもなく、さらに若くもないので、本作の登場人物の気持ちがリアルなのかどうかわかりませんが、本作で描かれる、親友がレズビアンで自分を好いていると知ったときの動揺、親友を失いたくないあまり、なんとなく恋人のような関係になり、それが本当の愛のように思ってしまう気持ち、しかし、いつかは男の方に戻っていくのだろうと信じきれない気持ちなどは、きっと当事者にとっては切実なほどリアルなんじゃないかと思います。恋愛映画が好きではなく、レズビアンのことがわからない自分のとっても、じんわりと心に響く良い映画だったと思います。タイトルの「Baka bukas」は「たぶん明日」という意味です。2017年のレインボー・リール東京というLGBTQイベントで、「たぶん明日」という邦題で上映されたこともあるそうです。フィリピンには、ゲイ映画はたくさんありますが、レズビアン映画を見るのは初めてです。貴重な作品と言えるでしょう。

(Photo cited from IMDb)
「Baka bukas」のストーリー
長い間親友として付き合っていた友達を想うレズビアンの女性(アレックス)が主人公です。彼女は、映像の仕事をしており、彼女の思い人(ジェス)は女優です。2人は夜遅くまで電話で語り合い、頻繁にお泊りをする仲です。アレックスは、仕事でレズビアンの企画を出しますが。社内でも評判はよくありません。どうやら、親友のジェス以外は、アレックスがレズビアンであることを知っている様子で、この企画がもとで、ジェスもアレックスがレズビアンであることを知りました。
当然、ジェスは非常に困惑し、とりあえず「何があっても親友であることは変わらないよね」と言いながら、これまでの関係を維持することに努めるのですが、レズビアンだからと言って何か特別なことが起こるわけでもなく、ジェスもなんだかアレックスを意識するようになってきます。「念のため聞くけど、カップルになったら、どうやってデートするの?」と聞くと、「親友と出かけるのと変わらない」と返され、ジェスにとっては、なんだかもう2人はカップルになっているような気がしてきました。しかし、アレックスは慎重です。ジェスに対して「もし、あなたが男に戻るときは止めないけど、時間が欲しい」と言います。ジェスは、アレックスにキスをして、「これでも私がストレートだと思う?」と言いますが、アレックスは「あなたはストレートだと思う」と断定します。ジェスは「だったら、今の私たちは何をやっているの?」とジェスが聞くと、アレックスは「わからない」と答えます。
(ネタバレ)2人の関係が悪くなったのは、ジェスの仕事がらみのパーティでした。アプローチしてくる男を上手に気を持たすような対応をするジェスを見て、アレックスは苛立ちます。そんなことで不機嫌になられても、ジェスは女優ですから、出演者たちとは仲良くしなければなりません。不機嫌になったアレックスは、パーティを抜け出しました。その後、ジェスとアレックスの関係が、SNS上で話題になっていることをジェスは知ります。ジェスは、それを否定せず、自分の態度をアレックスへの愛の証だと思うのですが、アレックスから「やっぱり友達に戻ろう。あなたのキャリアと両立できない」と拒絶されてしまいます。アレックスは、ジェスにキスをして、彼女のもとを去りました。
その後、アレックスはレズの恋人の元に舞い戻ります。その恋人は、お互いが本命でないことを認め合いながらも再び恋人へと戻ります。しばらく、アレックスとジェスは会っていなかったのですが、久しぶりに仕事がらみのパーティで再会します。何を言っていいかわからない2人は、ギクシャクしながら会話を続け、ジェスが「今晩、何か予定があるの?」と聞きます。アレックスは「何もないわ。見てのとおりよ」と答えると、ジェスも「見てのとおりよ」と繰り返しました。そして、エンディングです。
アレックスのジェスに対する恋心と、レズビアンとしての性(さが)がせめぎ合っているのが、不気味に感じました。アレックスは、ジェスが自分を恋人として考えていることがわかっているのですが、やはりレズビアンとしての何かが足りないと感じるのかなと思いました。だからこそ、すぐに元の恋人のところに戻ってしまいます。そして、ジェスが自分はもうストレートではないと思い込んでいるときも、「あなたはストレートだ」と、自分の中の性(さが)と比較しているように思いました。
「Baka bukas」の監督、出演者情報
本作の監督をつとめたSamantha Leeさんは、本作が長編映画となり監督さんです。自らもレズビアンであることを公言しているそうです。フィリピンにはゲイを公言している監督さんは何人かいますが、レズビアンを公言しているという話は初めて聞きました。監督としては、まだ映画作品が3本ということで、これから活躍が期待できる人ですね。主役のアレックスを演じたJasmine Curtis-Smithさんは、いろんな映画で見かける女優さんです。そして、顔は全く似ていないのですが、Anne Curtisさんの妹になります。アンお姉ちゃんの派手過ぎる顔よりは、日本人は妹のジャスミンの方が好みかもしれませんね。
「Baka bukas」の作品情報
オリジナルタイトル:Baka bukas
公開年 2016年
監督 Samantha Lee
主なキャスト Jasmine Curtis-Smith(この時が果てるまで)(アルター・ミー: 心に耳を傾けて)(Siargao)
Louise Delos Reyes(ハウスメイド 欲望のしもべ)
視聴可能メディア ロシアの怪しいサイト(英語字幕)

