デリバリードライバーが新興宗教の権力争いに巻き込まれる「郵便屋の愛人ーエロスー」

いい加減な日本語タイトルをつけられたフィリピン映画が多いですが、本作もひどいタイトルです。まず、主人公は郵便屋ではありません。フードデリバリーのバイクドライバーです。また、彼が愛人をつくるわけでも、愛人になるわけでもありません。愛人を作っているのは、教団の代表です。このタイトルを付けた人は、映画を全く見てないですね。そんなにやる気ないなら、私に外注して欲しいですよ。タイトル和訳と、あらすじくらい書きますので。

さて、本作ですが、デリバリードライバーが、新興宗教の代表がかこっている愛人のもとに配達を行うことになり、教会内の権力争いに巻き込まれるという話です。最後の１０分の情報量が多すぎて、わけがわからなくなっていますが、気にしなくても良いでしょう。本作の見どころは、フィリピンにおける男の美学が垣間見られるところです。ぜひ、最後まで見て欲しいですね。これはこれで、恰好いいなと、少しだけ思いました。

「郵便屋の愛人ーエロスー」のストーリー

主人公のリンゴは、フードデリバリーのドライバーです。他人の配達の商品を受け取って、それを食事として妻に届けるという、せこい性格です。彼の奥さんは美人です。配達の途中で、若く美しい女性（サマラ）が運転する車が、事故を起こしました。しかし、謝罪もしない彼女に、ぶつけられた車のドライバーが激怒。ドライバーが彼女に食ってかかるところを、リンゴがいきなり乱入。ドライバーを殴りつけます。喧嘩ファイトが始まるのかと思ったら、黒服の男たちがやってきて、ドライバーに銃を突きつけ、ぼここぼにします。フィリピン人の正義感は我々と違いすぎて、わけがわかりません。ちなみに、このドライバーは後に殺されたとのことです。

その後、たまたま配達に行った先が、彼女の家でした。そこで名前を憶えてもらいました。再び彼女の家への配達があり、話をする機会がありました。彼女は、権力者の愛人として母に売られて、この別宅で孤独な生活をしているというのです。ここで、身体の関係になるんだろうなと思ったら、意外にもお話だけで帰りました。ところが、サマラは監視されていました。彼女の浮気を疑った男は、新興宗教の代表者で、怒りにまかせて彼女に暴行するうちに、彼女を殺してしまいました。

すっかり取り乱した教団代表は、あっさりと自殺してしまい、教会の権力は、彼と仲の悪かった父親に戻ります。しかし、サマラは気を失っただけで生きていたのです。彼女の家の異変に気付いたリンゴが、サマラの家に侵入して、彼女を救出します。ここで、初めて、彼女とのセックスシーンがありました。念のため言えば、セックスシーンが少ないわけではありません。ここまでにも、奥さんとのシーン、教団代表とサマラのシーン。教団代表の妻と部下のシーンなど、いろいろあります。

（ややネタバレあり）しかし、死体がないことに気づいた教会関係者が、彼女が生きていることを知り、リンゴとサマラは追われる身になります。教会関係者は、サマラの母を確保。暴行の末、サマラに電話させ、彼女に投降を呼びかけます。そこに、リンゴがサマラを殴ったようなシーンが一瞬うつり、暗転。次にサマラが目を覚ましたときには、彼女は縛り付けられ、なぞの中年女性とリンゴが取り囲んでいました。えええ？主人公が悪人サイド？　犯人はヤス的な？　ここから１０分で、怒涛のように物語が展開していき、最後の最後に、主人公の男気が見られます。あまりに悲しい、貧しいフィリピン人的な男気でした。

「郵便屋の愛人ーエロスー」の監督、出演者情報

監督は「アダン　禁断の果実」や「ハウスメイド欲望のしもべ」などを撮ったRoman Perez Jr.さんでした。他の作品は、暗く、執念深い、じっとりとした作風でしたが、本作は比較的軽めの作風でした。しかし、フィリピンの映画監督は、本当に多作ですね。１年に７本、８本撮ることは普通みたいです。

濡れ場を演じる女優さんが３人いるのが、本作の強みで、良い女優さんをそろえています。まず、サンラを演じたChristine Bermasさんは正統派美人タイプ。奥さんを演じたAyanna Misolaはかわいい系。宗教法人代表の妻を演じたRobb Guintoさんは、派手目の美人。バランス良くそろえており、それぞれに見せ場があって良かったです。