フィリピンの国民的英雄の生涯を知る「ホセ・リサール」

フィリピンの独立記念日にあわせて、ホセ・リサールの映画を見ました。3時間と長く、英語字幕のみ、まともなプラットフォームではないという悪条件で、かなり大変でした。正直、おすすめする気持ちは全くないのですが、フィリピン映画サイトの管理人として、一応この映画も見たぞという印として、感想などを書いていこうと思います。

まず、フィリピンの独立戦争の流れがわからないと、この映画の意味もわからないと思います。独立戦争の流れをまとめたページのリンクを貼っておきます。

ストーリー

最初のシーンは、ホセ・リサールが処刑される直前のシーンから。それから、彼の回想という体で、彼の幼少時代や、スペイン留学時代、革命戦争時代と時間がいったりきたりします。非常に見ずらいですが、序盤にも緊張感を与えるためでしょうか。その中でも非常に目を引いたのは、ホセの兄、パシアノ・リサールでした。兄は、ホセよりも早くからスペイン植民地政府に対する不満を抱き、改革運動にも積極的に関わっていました。むしろ、ホセは兄から自由思想や愛国心を学んだという構成でした。映画の2時間くらいは、ホセがスペインでいろんな人と議論したり、本を出版したりと大したことはしません。スペインへの留学仲間の他のフィリピン人が、同郷のフィリピン人を見下しているシーンが印象的です。しかし、やがて革命的武装蜂起に関与しているという容疑でミンダナオ島に追放されます。彼の小説が問題視されましたが、この判断に関わった人の誰もが彼の小説を読んでおりません。

後半1時間になって、やっと話が面白くなります。その頃、フィリピン各地での武装蜂起が激しくなり、これを沈めるためには思想的リーダーのホセを処刑するのが効果的だと考えた人がいて、マニラに召喚されます。そこで、裁判を行います。おそらくここが最も見どころでしょう。スペインの将校にもホセの肩を持つものがいて、彼の立証は完ぺきで、裁判所は静まり返ります。また、ホセの自己弁論も素晴らしかったです。「私は、革命では何も変わらないと思っているので、革命運動に参加したことはない。フィリピンに必要なのは教育だと思っている」と述べます。しかし、当然のように下される判決は死刑。そしてゆっくり幕切れかと思いきや、革命軍が侵入し、おろかな判決を下したスペイン人にも死が与えられました。そしてエンディング。

後半は、革命に生きる兄と、革命以外でのフィリピンの自立を語るホセが良い感じにコントラストをなしていて見どころがありました。ちなみに、映画では描かれていませんが、この兄は後に革命軍の将軍とまでなっており、アメリカ統治時代も生き延びています。革命に深く関わった兄が長生きして、何も関わっていないホセが処刑されるというのも理不尽ですね。

作品情報

オリジナルタイトル:José Rizal

公開年 1998年

監督 Marilou Diaz-Abaya

主なキャスト Cesar Montano(ワンダー・ガール: サムライ・アポカリプス

Joel Torre(ロロ・アンド・ザ・キッド

Jaime Fabregas

視聴可能メディア 海外サイト(BiliBiliなど)

作品トレイラー