フィリピンが誇る名作ホラーがアメリカでリメイク「519号室」

スポンサーリンク

本作は、2004年に公開された「Sigaw(叫び)」を、同じ監督が2008年にリメイクした作品です。「なぜ4年後に自分でリメイク?」と思ったのですが、見てわかりました。アメリカ人俳優を使ってリメイクされたのですね。さすがに、すぐにアメリカ映画としてリメイクされるくらいで、着想、シナリオともに素晴らしいです。オリジナルの「Sigaw」は見ていないのですが、あらすじを読んだ限りでは、こちらのリメイク作品の方が、よりシナリオも練られているようで、リメイク作品のみが日本でDVD化されています。オリジナル版もフィリピンの動画配信サイトで、英語字幕付きで見ることができますが、こちらのリメイク版を見れば十分なんじゃないかと思います。英語タイトルが「THE ECHO」です。

(Photo cited from Plex)

スポンサーリンク

「519号室」のストーリー

男(ボビー)が刑務所から仮出所するシーンから始まります。あとでわかることですが、ボビーは恋人が襲われているのを助ける際に、相手を殴りつけて殺してしまい、長期服役していたのです。彼は、服役中に亡くなった母親のアパートに帰ることとなりました。それが519号室でした。

アパートに入って見ると、様々なところが血に染まっていたり、剥がれた爪が落ちていたりと、ただならぬことが起こった様子です。また、壁には指を突っ込めるほどの穴が開いており、その穴を通して、お隣の夫婦の口論が聞こえます。

ともかく腹ごしらえをしようと、定食屋で食事をすると、かつての恋人(アリサ)が働いていました。彼女は、出所したばかりのボビーを警戒しますが、徐々にもとの関係を取り戻していきます。また、管理人によれば、母は最期の数週間部屋から出なくなり、餓死して死んだそうです。最後は、頭がおかしくなっていたとのことでした。隣から聞こえる口論は日増しに大きな声になっていきます。

隣から聞こえる口論は、さらに大きな声になっていき、時には殴りつけるような音も聞こえます。また、時に、隣の部屋(517号室)の前で、女の子がひとりで遊んでいたり、女や、いかつい警察官の男を見かけるようになりました。ある日、女がボビーに助けを求めましたが、すぐに517号室に逃げ帰り、その後、いかつい男が「俺たちに関わるな」と釘をさしにきました。隣の部屋で、DVが行われているのは明らかです。

ある日、隣の女の子が、自分の部屋に入ってきました。何があったのかを問うも、少女は答えません。また、隣から暴力を振るう音が聞こえるので、この少女を守ってあげなければと思い、警察に通報します。駆け付けた警察官と517号室に踏み込むのですが、部屋は空っぽで、誰も住んでいない空き部屋でした。

(そろそろネタバレ)それからボビーは、自分の頭がおかしくなったのだと考えるようになります。しかし、517号室の声に悩まされていたのは、ボビーだけではありませんでした。同じフロアの512号室の住人も苦しめられていたのです。512号室の男は、次々と起こる怪奇現象のため恐怖で死んでしまいました。自分が精神病になったのか、何なのかわからなくなったボビーですが、ボビーの部屋を訪れた際に、517号室の住人を目撃したアリサにも怪奇現象が起こるようになりました。アリサは、ことを確かめようとボビーの部屋を訪れた際に、517号室に閉じ込められ、幻影の男から殴る蹴るという暴力にさらされます。

(ネタバレ)その頃、ボビーは、過去の事件を知る住人の話を聞くことができました。その住人によれば、517号室には警察官の男、その妻、娘が住んでおり、いつもDVが行われていたことを住人は知っていたものの何の介入もしなかったと言います。そして、妻と娘は警察官の夫に殺され、夫自身もピストル自殺をしたというのです。

ボビーは部屋に戻るとアリサの叫び声を聞きます。517号室から、アリサを救い出したボビーは、廊下で繰り広げられる暴力の幻影に対峙しました。おそらく、住民の無関心が原因で惨劇が起こったので、この怪奇現象を止めるには、今起こっている幻影の暴力に介入しなければならないと思ったのだと思います。彼は警察官の男が妻に暴力を振るうのを制止します。すると、隙を見た妻は、警棒を拾い上げ、それで夫を殴打し続けます。そして、反対に夫の方が殺されてしまいました。「おいおい、何てことをするんだ・・・」と茫然とするボビーですが、少女があらわれます。少なくとも2人の命は救われたわけです。結局、これを機に怪奇現象は止まり、平和な音楽と共に街の雑踏が映し出されます。そしてエンディングです。

実は、ボビーの職場の上司も巻き込まれたり、他の奇妙な住民たちなど、本筋を彩る様々なシーンもあるのですが、ストーリー紹介では割愛しています。実際は、もっと右往左往して、どちらに向かっているのかわからないよう上手くカモフラージュした物語です。初めに、DV事件だと考え、次に精神病だと考え、やがて住民の無関心が引き起こした怪奇現象であるという考えに至るという構成が、非常に良くできていました。人々の無関心が引き起こした惨劇に、刑務所から仮出所したばかりの男が立ち向かうという構図もいいですね。しかし、オリジナルがフィリピンというのが不思議な気がしますね。フィリピン人ならば近所の人のDVにすぐに介入しそうですが・・・。オリジナルも見たくなりました。

「519号室」の監督、出演者情報

本作品の監督をつとめたYam Laranasさんは、ホラー映画専門の監督さんと言っても良いでしょう。Yam Laranas監督の代表作が、本作です。さすが代表作というだけあって、ただ怖がらせるだけではなくて、怪奇現象を解決する行動もありますし、背景として描かれる社会問題も深いですね。さすがに、フィリピンではホラー映画をたくさん作っているだけあって発展していますね。本作の主演の2人はアメリカ人ですが、暴力夫に殺されてしまう女は、オリジナルの「Sigaw」と同じフィリピン人女優のIza Calzadoさんが演じています。アメリカを舞台にしても、移民であるフィリピン人女性がアメリカ人男に暴力を振るわれる方が悲劇性が増すと考えたのではないでしょうか。

「519号室」の作品紹介

オリジナルタイトル:THE ECHO

公開年 2008年

監督 Yam Laranas(ホスピタル・オブ・ザ・デッド 〜閉ざされた病院〜)(コールガール 欲望の餌食)(オーロラ 消えた難破船)(Nightshift

主なキャスト Jesse Bradford

Amelia Warner

Iza Calzado(生き人形マリア

視聴可能メディア TSUTAYA DISCAS(日本語字幕、日本語吹き替え

「519号室」のトレイラー

タイトルとURLをコピーしました