同名のタイトル映画がたくさんありますが、本作は2020年公開のホラー映画です。本作は司法解剖教室で繰り広げられる恐怖体験がテーマになっています。本当かどうかはわからないのですが、上司によると、案外死体は動き、音を立ててにぎやかなものなのだそうです。嵐の中、運ばれてくる死体に対して、淡々と、時にジョークを言いながら解剖を実施していく上司が、頼もしく、不気味でもあります。人形ではありますが、解剖シーンがたくさんありますので、それだけでもインパクト強めです。

(Photo cited from IMDb)
「Nightshift」のストーリー
主人公の女性(ジェシー)は、解剖教室で助手として働いています。同僚に家族の事情があり、自分の日勤の仕事をしながら、1週間の夜勤もつとめています。物語の時点では、連続24時間以上の勤務になっています。また、外は酷い嵐で、交代要員も未だ到着していません。ジェシーと上司は次々と運ばれてくる死体を検分し、時に解剖しながら夜を過ごしています。日本でも解剖が必要な死体に対して、司法解剖は1%程度しかされていないと聞きますが、フィリピンはどうなのでしょうね?
上司は、死体の解剖しながらジェシーに様々なことを教えます。まず、死体が運ばれてくると、足の親指に針を刺します。理由を尋ねるジェシーに対して、上司は「ここが一番痛いから」と答えます。また、死体は体内にガスなどが発生して、案外動くことがあり、音を立てるのだと言います。実際、ジェシーは一人になると、頻繁に死体が動いたり、音を立てます。
解剖室には、様々な人が出入りします。もっとも頻繁に出入りするのは、死体を運ぶ業者の男たちです。彼らは、死体が身に着けているアクセサリーを盗んだりもしています。他には、遺族がどうしても顔を見たいとやってくることもあり、警察と一緒に検分することもあります。また、警察は容疑者を連れてきたこともありました。上司によると、遺体を見た容疑者はショックを受けて自白することがあるからだそうです。実際、レイプして殺した少女の遺体を見た犯人は、取り乱して「殺すつもりはなかった」と遺体の前で自白しました。こんな感じで、解剖室にまつわる様々なトリビアにあふれていて、なかなか興味深い中盤でした。
ジェシーは、連続勤務が続いている疲れからなのか、ひとりになると、遺体が動き始めることを頻繁に経験します。また、遺体も起き上がったりすることも増えてきました。しかし、上司と一緒にいるときには、怪奇現象は起こりません。
(そろそろネタバレ)ジェシーが一人だったとき、若い女性の遺体が運ばれてきました。その顔を確認したところ、彼女は驚きのあまり腰を抜かします。しかし、その後、遺体ボックスの扉が開いていて、1つの遺体が無くなるという事件があり、この件はうやむやになりました。
(ネタバレ)ようやく、ジェシーが待ち焦がれた交代要員が到着しました。ところが、彼女が片づけをしているところに電話がかかってきました。先ほど到着したはずの交代要員からで、嵐がひどくて行けそうもないというものでした。ジェシーは絶望します。その後は、彼女の緊張感がついに切れてしまったのか、様々な幻覚を見ます。遺体は立ち上がり、彼女に向かって歩きます。また、上司が解剖台に乗っていたり、自分が解剖台に乗っていることさえあります。ついに、彼女がたくさんの遺体に囲まれたところで、「前日」という文字が出て、前日のシーンに戻ります。
上司と交代要員が働いており、首を吊ったジェシーを発見しました。ジェシーの遺体が解剖台に運ばれ、彼女の遺体の前で、上司が交代要員の女に、様々な話を聞かせます。それは、これまでのシーンでジェシーが聞いた話でした。そこでエンディングです。
人は死んだ後も、しばらく周りの声が聞こえているというテーマを主題のしたもののようです。ジェシーが経験した怪奇現象を、単に怪奇現象とせずに、彼女自身が死んでいたいうオチはなかなか良かったです。問題は、外の嵐の演出があまりにしつこいこと。ずっと雷鳴の演出です。うるさ過ぎ、視覚的にも邪魔過ぎです。
「Nightshift」の監督、出演者情報
本作品の監督をつとめたYam Laranasさんは、ホラー映画専門の監督さんと言っても良いでしょう。たくさんのホラー映画を撮っていますが、代表作は「Sigaw(叫び)」だと思われます。自己リメイクされ、日本でも「519号室」というタイトルでDVD化もされています。主演のYam Concepcionさんは、多くの作品に出ているようですが、私は初めて見ました。ホラー映画に出る女優さんらしく、地味な雰囲気なので記憶に残らなさそうです。しかし、監督と同じファーストネームなのですね。Yamという名前は男女両方に使える名前なのでしょうか? 上司を演じたMichael De Mesaさんは、長身と禿げ頭が印象的な俳優さんです。その見た目を活かして、頑固な父親、政治家などを演じることが多いです。本作でも、遺体を解剖しながら様々なジョークをいう解剖医の役を怪演していました。本作の最大の魅力は、彼の演じる解剖医だと思います。
「Nightshift」の作品情報
オリジナルタイトル:Nightshift
公開年 2020年
監督 Yam Laranas(ホスピタル・オブ・ザ・デッド 〜閉ざされた病院〜)(コールガール 欲望の餌食)(オーロラ 消えた難破船)
主なキャスト Yam Concepcion
Michael De Mesa
視聴可能メディア Youtube(英語字幕)