フィリピンは海外出稼ぎの国なので、夫婦でも何年も会えないどころか、アクシデントがあると、数十年会えず、行方知れずになっているということも、良くあるようです。本作も、オイルタンカーの事故に遭い行方知れずになっていた父が、25年ぶりに家族の元に戻って来ると言うお話です。当然、見捨てられたと思っていた家族は、ひどく反発し、父の話を聞こうともしないのですが、やがて、父の家族を想う気持ちが伝わり、家族は再び1つになります。しかし、父に残された時間は限られていました。後半は涙涙の展開になります。また、普通の家族ドラマと一線を画しているのが、ゲイの親友の存在です。彼もまた、つつましやかに主人公を愛していることが、家族ドラマに奥行きを与えていて、感動的なラストを演出します。

(Photo cited from GMA Network)
「One More Rainbow」のストーリー
長い間死んだと思われていた船乗りの男(ドム)が、地元に帰ってくるシーンから始まります。ゲイの男(レイ)が、彼を認め、再会を喜びます。ドムは、自分の乗っていたオイルタンカーが爆発する事故にあい、奇跡的にたどり着いたキューバに長い間留め置かれていたというのです。しかも、命の恩人に嫁まで与えられたというのです。いくらキューバでもそんなことあるかな?という感じですが、25年もの月日を説明するには、キューバくらいしかなかったのでしょう。そして、キューバの妻がなくなり、ようやくフィリピンの土地を踏んだとのことでした。手紙は送っていたものの届いていなかったようです。
しかし、家族との再会は、予想以上に厳しいものでした。妻は全く話を聞いてくれず、娘には罵声を浴びせられ、長男にはいきなり殴られます。家族は、父がいないことで経済的に苦しんで、妻は膝を痛めて松葉杖で何とか動けるという様子、娘はナイトクラブでダンサー、長男はドラッグの売人(1年前に引退済み)、そして次男は刑務所にいます。
そこで、ドムはレイの案内で、刑務所にいる次男を訪れます。さすがに、刑務所にいる次男は、父の話を聞く耳を持っていました。そこで、次男は1年付き合った彼女にレイプしたと、彼女の父に訴えられたことがわかります。次男が、彼女の父の言うことを聞かなかったため、えん罪をでっちあげられたと言います。1年付き合っていれば、周りの人から証言が取れるでしょうに、証拠もなく刑務所にぶち込めるところが、フィリピンの怖いところですね。ドムは、次男に弁護士を付けることを約束します。
長男が借金がらみで、銃撃されたところを、レイが助けたことから、ドムと長男の関係は一気に改善し、娘がやりたかったビジネスを支援するなど、ドムの懸命の努力を、家族も徐々に理解し、妻とは話ができるほどの関係にまでなりました。
また、家族と関わるにつれて、自分が不在のあいだ、いかにレイが自分の家族を助けてくれていたかを知り、ドムは強く心を打たれます。レイは、ドムのことを愛していることをドムも知っていたからです。
しかし、ドムには残された時間がほとんどありませんでした。ステージ4の癌であり、余命は2-4か月だと言われています。だからこそ、こんなに焦って、家族の支援をしているのです。やがて、次男の冤罪事件を、レイプ事件をでっちあげたころのメッセージ履歴を取り寄せた弁護士が解決し、次男も無事に釈放となりました。偽の証言で、無罪の次男を刑務所に入れた父親を刑務所に入れてやりたかったですが、そこは深堀がありませんでした。ドムには残された時間があまりないですからね。
(ネタバレ)様々なことが一段落して、家族と近所のひとたちでパーティを開くこととなりました。しかし、その最中にドムは倒れてしまい、妻らが、ドムの病気を知ることとなります。泣きじゃくる妻に向かって、ドムは、結婚式をしようと提案します。彼らは、子供がうまれたので式をあげる時間がなかったのです。
ある夜、バロンタガログせ正装してあらわれたドムは、妻に指輪と花嫁衣裳をわたします。翌朝、2人は正装した姿で、ベットの上で手をつないで死んでいるのが発見されました。嘆き悲しむ家族ですが、レイは、2人が最後に幸せだったことを理解し、悲しみを押しとどめます。そして、エンディングです。
ドムが末期ガンであることは、中盤で示されたので、最後は彼が死ぬのだろうと思っていましたが、まさか2人が結婚の正装をして、一緒にこと切れるとは予想していませんでした。また、2人の旅立ちを見届けるために、親友でドムを愛するレイの存在があるのも、物語に深みを与えていました。この手の感動系家族もの作品では、トップクラスでお勧めの作品です。
「One More Rainbow」の監督、出演者情報
本作の監督をつとめたJoel Lamanganさんは、大ベテランの監督さんで、テレビと映画の監督作品で、およそ150本の作品を残しています。その割には、私はそんなに見れていない監督さんです。見ていく必要がある監督さんですね。母親を演じたのは、ノラ・オノールさん、言わずと知れたフィリピンの伝説的な女優です。しかし、本作では老いましたね。公開時67歳ですが、かつての神秘的な美しさは失われ、首のないおばちゃんです。ドムを演じたPhillip Salvadorさんも、ノラ・オノールさんと同い年で、かつてはリノ・ブロッカの映画にも出いていたほどですが、こちらは若く見えます。特筆すべきは、ゲイの友達を演じたMichael De Mesaさんです。この人は、長身にスキンヘッドという容姿が、権力を象徴しているようにみえ、汚職にまみれた警察署長や、マフィアのボス、教授、娘の婿をみとめない厳格な父親など、主人公を抑圧する側の役を演じることがほとんどですが、本作で、主人公を愛し続けたゲイを演じるとは驚きでした。
「One More Rainbow」の作品情報
オリジナルタイトル:Isa pang bahaghari
公開年 2020年
監督 Joel Lamangan(Oras de Peligro)
主なキャスト Nora Aunor(汝が子宮)(罠~被災地に生きる)(奇跡の女)
Phillip Salvador(Ang tatay kong nanay)
Michael De Mesa(Nightshift)(立ち去った女)
視聴可能メディア Bili Bili(英語字幕)

