フィリピン映画と言えば、恋愛もの、ホラー、家族ドラマが圧倒的に多いのですが、私が一番面白いのは犯罪ものだと思っています。やはり、銃社会で、犯罪の本場ですし、警察も司法も全て腐敗しているので、最後まで油断できません。フィリピンでは、他の国では絶対に成立しないような、スリリングな展開の物語を成立させることができます。本作も、警察のために働く殺し屋という、おそらくフィリピンでしか成立しない作品を成立させました。しかも、事実をもとにしているというから驚きです。さらに、後半にはもっと酷い事実が明るみになるというおまけつきです。本作は、日本ではほぼ知られていないようですが、「牢獄処刑人」と同じように、もっと注目されるべき作品だと思います。とは言え、本作もベトナムに行ったときにNetflix東南アジアから、タブレットにダウンロードして見た作品で、現在日本から見る方法はVPNを使うしかありません。Youtubeでも無料公開されているのですが、残念ながらYoutube版は英語字幕がありません。

(Photo cited from IMDb)
「The Janitor」のストーリー
銀行強盗が、現金1000万ペソを奪った上に、10人の行員を皆殺ししたという事件が発覚するシーンから始まります。警察は、怒りのコメントを発表、犯人には正義に鉄槌を下すと宣言します。その時に、警察の本件に関する書類に「Janitor(始末人)」の判子が押されるのを、私は見逃しませんでした。
さて、主人公(エスピナ)の登場です。徐々にわかってくるのですが、彼は元警察官で、不必要に犯人を殺したという理由で、警察を解雇されたのです。その事件と言うのは、当時の上司と犯人を追い詰めたとき、上司が「撃て」というので思わず撃ってしまったところが、防犯カメラに写ってしまったのです。この映像はネット上に拡散し、彼は警察に居場所を失ったのです。現在は、警備員の養成所で教官として働いています。興味深いのは、学生たちに「警備員から、警察官になった者もいる。みな頑張るように」と声をかけることです。フィリピンでは、警察官はそれなりに高い地位だと思われているんですね。エスピナは、警察官に復帰するために、元上司から秘密の仕事を受けていることが示されます。
警察は、目撃情報に似ているという理由で、トライシクルのドライバーを逮捕します。さんざん拷問した末、犯人の情報がもたらされました。そして、4人の銀行強盗の犯人が、次々とエスピナに殺されていくというのが中盤までの物語です。4人目まで、はっきりと示されないのですが、エスピナの元上司が、彼に依頼していることがわかりました。元上司は、こんな酷い事件を起こした犯人は、司法の手にゆだねるには生ぬるいと憤ってみせます。4人目は、優秀な麻薬取締官とみなされている警察官でした。激しい戦いののち、何とかエスピナは彼を殺害することができました。しかし、エスピナは彼ら4人の携帯電話を回収し、メッセージ記録を確認していました。不思議なことに、誰一人として、銀行強盗当時に、それについて言及する者がいませんでした。むしろ、デリバリーで食事を頼んでいるものさえあり、4人が本当に銀行強盗だったのか疑います。そして、共犯者とされ拷問を受けた男に接触し、彼が拷問の末、4人の悪党の名前をでっちあげたことを知ります。エスピナは、この男を射殺しました。
(ネタバレ)ともかく、エスピナは、携帯電話のメッセージと矛盾することを、元上司に伝えると、「いずれも極悪人だったのだから、もし銀行強盗でなかったとしても良いではないか」と、うやむやにしようとしました。元上司は、この件を警察署長に報告します。その後、元上司が殺されるシーンと、警察署長が、この殺しに関与しているシーンが挿入されます。そして、物語は終わります。
はっきりとは示されませんでしたが、銀行強盗は警察署長の手のもので、犯人をでっちあげるために、主人公らを使ったということでした。途中まで、警察にとって、犯人は逮捕された方が良いはずなのに、なぜ殺してまわっているのか不思議でしたが、そういうことだったのですね。結局、殺し屋も元警察官、殺しを依頼しているのも警察、悪党として殺し屋に殺されるのも警察官(4人のうち1人)、そして銀行強盗をしたのも警察という、どれだけ警察は嫌われているんだというストーリーでした。こんな腐敗した警察官に戻りたい主人公が、警備員の養成所で警察官になることを熱く語り、自分の手を汚していくドラマが熱かったです。
「The Janitor」の監督、出演者情報
本作の監督をつとめたMichael Tuvieraさんは、植民地化されなかった架空のフィリピンを描いた超大作「The Kingdom」の監督さんです。どちらかと言えば、監督というよりもプロデューサーらしいのですが、これだけの作品を撮れるなら、もっと自分で監督をつとめて欲しいですね。主役の元警官を演じたDennis Trilloさんは、どちらかと言えば「いい人」「振り回される人」を演じることが多い役者さんです。本作もある意味ふりまわされていましたね。銀行強盗として始末される最後のボスの麻薬取締官を演じたDerek Ramsayさんは、渡辺謙に似た濃い顔がトレードマークの役者さんです。主人公とのバトルシーンは迫力がありました。
「The Janitor」の作品情報
オリジナルタイトル:The Janitor
公開年 2014年
監督 Michael Tuviera(The Kingdom)
主なキャスト Dennis Trillo(Green Bones)(Sapi)(Everything About My Wife)
Richard Gomez
Derek Ramsay(English Only, Please)(All You Need Is Pag-ibig)(Kampon)
視聴可能メディア Netflix(東南アジア)(英語字幕)

