本作品の監督は、ホラー映画の監督として有名なヤム・ララナスさんですので、美少女と中年男性の官能的な愛がたどり着く先は、きっと悲劇なのだろうなと思っていましたが、安心してください。ネタバレになってしまいますが、そんな酷いことにはなりません。先のことを考えると不安もありますが、ハッピーエンドです。ヤム・ララナス監督の作品は、けっこう見てきましたが、誰も死なない作品は初めてです。また、ヒロインを演じるのは、監督がお気に入りのRhen Escañoさん。濡れ場も演じる安達祐実系の美少女女優です。彼女の青白い表情は、ホラー映画や悲劇作品で、あまりの悲惨な出来事に茫然とすると映えるので、どんな悲劇が待ち構えているのかと、フィリピンの視聴者さんも恐れながら見ていたと思いますが、むしろ彼女の可愛らしさに焦点が当てられていました。本作で、彼女にメロメロになってしまうおじさんもいるのではないでしょうか? タイトルの「Paraluman」は、「熟考する」という意味です。むしろ軽率に始まった感じがしますが、おそらく最後の7年間を指しているのでしょう。

(Photo cited from IMDb)
「Paraluman」のストーリー
若くて美しい女性(ミラ)の独白から始まります。「私は愛のためなら何でもする」というので、「この美少女が引き起こす事件なのか?」と検討がつきます。ミラは、ゲイである兄のところに引っ越してきました。兄の住む街も相当田舎ですが、ミラの実家はもっと田舎の山奥だったようです。そこで、最初に出会ったのが、既婚者の中年男性(ピーター)です。「ひとめぼれするような男か?」という普通の中年男性です。
のちにわかってくるのですが、ピーターは、カメラマンとギター奏者が仕事と言いたいところですが、それで稼ぐことはできておらず、やり手の妻が経営するバーで歌ったり、会計の仕事をしています。学歴も中卒だそうで、妻には頭が上がりません。芸術家肌のピーターに、この妻は確かに辛そうです。
すぐに、2人は仲良くなり、ピーターは、ミラをモデルに写真を撮る日々がはじまります。しかし、ある日、ピーターの妻がミラのもとを訪れます。2人がこっそり会っていることがバレたのかと緊張するミラですが、学校が始まるまで、夫に会計ソフトを教えて欲しいという依頼でした。ミラがPCに強いということを聞いて、やって来たのでした。
この件で、さらに2人で過ごす時間が増えたことで、ミラはいきなりピーターにキスします。ピーターは「こんなことは止めよう」と自制的です。狭い田舎町なので、2人は一緒にいるところを街の人に目撃されていますが、その話を聞いた妻は、相手にしません。そして、2人はついに身体の関係を持つまでに至りました。
妻は2人の関係をどこまで疑っているのか、いつバレるのか?というのが、中盤からの見どころになります。そんな我々の心配をよそに、妻はピーターに子作りをしようと無邪気に迫ります。しかし、ミラの兄は気づいてしまいました。兄は巡礼の旅にも行くほど宗教的な人なので、ミラに関係をやめるよう諭します。
ミラは、兄の涙を見て、自分の過ちに気づき、ピーターとの関係を止めることにしました。しかし、むしろピーターの方が、ミラに執着するようになりました。ある夜、ミラのもとを訪れ、彼女に「駆け落ちをしよう」と迫るほどです。その時は、ピーターはミラの兄に見つかり、「こういうことは止めた方がいい」と諭されます。
「妻はどこまで知っているのか?」「何か裏があるのか?」とハラハラして見ていましたが、単に何も知らなかったようです。次の選挙に立候補するために、妻が支援者をまわっている際に、自分の夫が不倫していることを揶揄され、知ることになりました。激怒した妻は、夫をなじります。その言葉がけっこう酷くて、「あなたは、私のお金がなければ生き延びられないでしょ」と言います。
(ネタバレ)結局、ピーターの妻と、ミラの兄が、当事者の前で、この不倫事件を終わらせる契約書を作成し、この件は終わったことになったかと思いました。ところがある日、ミラのもとを福祉局の職員が訪れます。何かと思ったら、それは未成年淫行の罪でピーターを逮捕することを伝えるためでした。泣き叫ぶ妻、困惑する兄妹の前で、ピーターは連行されていきます。 当事者の様子を見ていると、誰もが寝耳に水という反応で、誰がピーターを告発したのかという謎が残りました。
それから7年たち、ピーターは刑務所を出所します。彼は、ミラの家を訪れたところ、兄が出てきます。兄が「ここにはミラは住んでいない」と応えます。するとピーターは「いえ、今日はお兄さんに伝えに来たのです。福祉局に連絡したのは、自分です。ミラの未来のために」と言い残して去ります。ピーターは、ミラとの思い出の場所をまわっていると、そこにはミラがいました。彼女は、ピーターをずっと待っていたのです。刑務所にも何度も面会に行きましたが、面会を断られ、手紙もたくさん書いたのだそうです。その手紙はピーターの元には届いていませんでした。2人は再会を喜び、これからの2人の人生に期待します。そしてエンディングです。
まさかの2人が結ばれるエンディングでした。生活力が大してない2人ですから、将来に不安があると言えばありますが、冴えない中年男性のピーターの立場ならば、若くて美しい女性に好意を寄せられているならば、人生をかける価値はありますね。ホラー映画界の巨匠として知られる監督の作品なだけに、観客は悲惨な展開を予想するため、予想を裏切られるという上手い構成でした。
「Paraluman」の監督、出演者情報
本作品の監督をつとめたYam Laranasさんは、ホラー映画専門の監督さんと言っても良いでしょう。本作は、同監督による珍しい恋愛作品です。私の知る限りでは、同監督の唯一の恋愛映画です。お気に入りの女優さんなので、1回彼女の魅力に溺れる中年男性を描いてみたかったのでしょう。
ヒロインを演じたのは、セクシー女優も兼ねるRhen Escañoさんです。日本には、フィリピンのセクシー映画が日本語字幕付きでたくさん入ってきているので、彼女はセクシー女優という認識でしたが、むしろ脱ぐこともある一般女優という認識かもしれません。そういう意味では、顔も似ている安達祐実に似たポジションですね。
「Paraluman」の作品情報
オリジナルタイトル:Paraluman
公開年 2021年
監督 Yam Laranas(ホスピタル・オブ・ザ・デッド 〜閉ざされた病院〜)(コールガール 欲望の餌食)(オーロラ 消えた難破船)(Nightshift)(519号室)(ザ・アブノーマル)(Rooftop)
主なキャスト Rhen Escaño(UnTrue)(アダン 禁断の果実)(Rooftop)
Jao Mapa
視聴可能メディア 怪しいロシア系のサイト(英語字幕)

