甘やかされた金持ち大学生たちが起こす事件とその報いを描く「Rooftop」

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本作は、ひとことで言ってしまえば、ホラー映画の大家、ヤム・ララナス監督による良くできたホラー映画です。フィリピンでは、ホラー映画は新人監督の登竜門であったり、ベテラン監督もいつかは経験しなければならない通過儀礼のような扱いで、様々な監督がホラー映画を撮るのですが、怪物の設定に矛盾があったり、ストーリー部分に魅力がなく、ただ騒がしいだけだったりと、多くが失敗しています。その点、さすがホラー映画専門の監督さんという出来の良さで、また事件が起こるまでの流れに、フィリピン社会への風刺も良く効いており、「さすがヤム・ララナス監督だな」と思わせられた作品でした。

(Photo cited from IMDb)

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「Rooftop」のストーリー

大学のキャンパス、特にその学生寮が舞台です。多くの学生が、学期間の休みで帰省していますが、数人の学生が寮に残りました。そして、学生たちで夜中に屋上で飲み会をしようということになりました。フィリピン映画らしからぬスムーズな展開ですね。こういうところでモタモタするのが、フィリピン映画ですが、さすがベテラン監督さんです。

酔っ払って、屋上からビールの空き瓶を投げて割ったりと、最初からモラル感のない学生たちです。そんなところを清掃員に見つかり、屋上への侵入は禁止されていると言われてしまいます。日本の学生ならば、すぐに謝って退散しますが、フィリピン人の富裕層は、清掃員など見下していますので、挑発的な態度です。結局、お金を渡して見逃してもらうこととなりました。その清掃員の1人が、労働学生で、彼も学生に合流することとなりました。学生たちの悪ふざけはエスカレートし、屋上のヘリまでいって、労働学生をびっくりさせる映像を撮るさいに、突き落としてしまいました。

学生たちはパニックになり、「自分は押していない」「お前が押した」と言って責任を押し付けあいます。改めて撮影した動画を見ると、みんながお尻で押しているように見え、これでは全員が責任から逃れられないと考えます。この動画を消してしまうと、自分だけのせいにされかねないと考えた男が、動画を消さない決断をしました。連帯責任にして、口裏をあわせようと考えたのです。また、死んだのが貧しい勤労学生でなければ、誤魔化そうとは思わなかったでしょう。フィリピンでは、貧乏人の命の価値は低いですからね。

事件を目撃していた清掃員のおじさんは、警察に通報しようとするのですが、学生たちは親の権力を振りかざして、清掃員にもっと良い仕事を与えるなどと言って懐柔し、誰も何も知らない、朝になったら屋上から飛び降りた死体があったというストーリーで押し通すことになりました。そして、屋上から投げたビール瓶の破片を回収します。誰も死体には近づきません。スムーズな展開で、これから惨劇にあう学生たちが、殺されて当然のクズな奴らであると描くのが、本当にうまいですね。

しかし、女子学生の1人が、自分の部屋から死体を見ていると、死体が動いたような気がしました。女子学生は、他の学生にまだ生きているかもしれないから、救急車を呼んだ方がいいと主張するのですが、もう一度、彼女の部屋から見ても動いていないことが確認されたので、救急車を呼ぶ話はなくなりました。そして、ここからがホラー映画の始まりです。

序盤は、血まみれの死体が見えたり、扉が勝手に閉まったりと、軽いジャブからはじまります。そんな中、男子学生の1人が、清掃員のおじさんの元に酒を持って訪れ、今回の事件について口外しないように改めて念を押します。

翌朝、学生たちが起きると、騒ぎになっています。打ち合わせ通り、学生たちは何もしらない顔をして、現場にかけつけると、死体が2つ転がっていました。もう1つは、清掃員のおじさんでした。男子学生の1人は、警察官の取り調べに対して、2人の清掃員はゲイだった。付き合っていたが、痴情のもつれがあり、自殺しんじゃないかと証言しました。これには、女子学生たちはドン引きです。こうなってしまっては、事故では済まされません。

(ネタバレ)その後は、学生たちが、血まみれの死体におそわれる恐怖シーンです。最初に、清掃員を殺した男が消えます。実家に帰ろうとする女子学生もいましたが、事件の重要な参考人ですから、警察に寮から離れることを禁じられてしまいました。リーダー格の女子学生が、他の女子学生と屋上で合流して、一緒に恐怖に震えていたつもりが、それは血まみれの死体でした。彼女は屋上から突き落とされて死んでしまいました。その後、警察官が、そのほかの学生たちの死体を発見します。男の死体の横に転がっていたスマホから最初の事件の動画が再生されるところで、エンドロールです。

スピーディな展開、矛盾のない設定、こいつらは殺されてもしょうがないと感じさせる描写の巧みさ、そこにフィリピン社会が抱える金持ちの傲慢さという風刺をブレンドして、非常にうまくまとめあげた作品でした。女子学生は3人いるのですが、その中の1人の青白く恐怖をたたえた表情が画面に緊迫感を与えていました。他の2人は正直地味でしたね。こんなことが起こっても、麻薬で気を紛らわしたり、怯えている女子学生を脅かしたりと悪ふざけがひどく、彼らもダメな意味で目立っていました。怯える役とヘイトを集める役の与え方が上手いですね。

「Rooftop」の監督、出演者情報

本作品の監督をつとめたYam Laranasさんは、ホラー映画専門の監督さんと言っても良いでしょう。フィリピンの映画監督としては、多作な方ではありません。2011年から2018年まで7年間の空白があるのは、いったいなぜなのでしょうか? 代表作は「519号室」でしょう。これもDVDで日本語字幕、日本語吹き替えで見ることができるのでお勧めです。今回、6人の学生の中で最も存在感を示していたのが、セクシー女優も兼ねるRhen Escañoさんです。フィリピンでは、セクシー映画に出演する女優さんは、セクシー映画にしか出ないか、一般映画には端役で出る程度なのですが、彼女は例外で、しかも、本作では本来主役のベテラン女優を完全に食っていて、圧倒的な存在感を示していました。

「Rooftop」の作品情報

オリジナルタイトル:Rooftop

公開年 2022年

監督 Yam Laranas(ホスピタル・オブ・ザ・デッド 〜閉ざされた病院〜)(コールガール 欲望の餌食)(オーロラ 消えた難破船)(Nightshift)(519号室)(ザ・アブノーマル)(Paraluman

主なキャスト Ryza Cenon

Rhen Escaño(UnTrue)(アダン 禁断の果実)(Paraluman

Marco Gumabao

視聴可能メディア Bili Bili(英語字幕)

「Rooftop」のトレイラー

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