現在、出張でタイにいます。そこで、東南アジア版のNetflixで見たのが本作です。2015年に公開された同タイトルの韓国映画のリメイクです。「なので」と言っていいのかわかりませんが、脚本がしっかりしており、非常に面白い作品です。エリートが貧しい人たちの生活や、家族愛を知るという道徳的なストーリーがフィリピンに合っていたのでしょう。わずか10年前に、韓国でこうした映画が撮られていたというのにも驚きますね。今や社会も変わり、こうした、社会的な成功よりも家族愛という価値観で映画を撮られなくなって(韓国映画をそんなに見ているわけではないので想像ですが)、韓国映画が国際的に力を失ってきたんだとうなと思いました。

(Photo cited from IMDb)
「Wonderful Nightmare」のストーリー
幼いころに両親を亡くしたため、世界を憎んでいるようなエリート女弁護士(ルイザ)が主人公です。さらにステップアップを目指していたのか、アメリカへの移住を考えており、ついにその夢がかなうというところで、神様の手違いで老婆の代わりに死んでしまいます。手違いに慌てた神様サイドは、1カ月後に死ぬ予定になっている女の身体に入り、1カ月つつがなく過ごしたのち、元の身体に戻れるか、その女の身体のまま過ごすかを選択させることにしました。ルイザは、この提案を受け入れるしかありません。
さて、新しい身体の自分はというと、貧しい家庭で、アホそうな夫と2人の子供を持つ専業主婦でした。健康的な食生活を知らない子供たち、スキンシップをしたがる夫に拒否感を示し、自分ルールで家族に接しますが、大ブーイングです。起こったルイザは、「1カ月の主婦休暇を取る!」と宣言しますが、これは天国側からクレームで、実現できませんでした。やむなく、元の自分の家に帰って、クレジットカードを持ち帰り、好きなようにお金を使いながら、自分なりに理想の主婦を演じようとするのですが、他人名義のクレジットカードを使った容疑で、警察に連行されてしまいます。
ところが、駆け付けた夫が意外にも頼りになりました。また、19歳で子供を産んだ、学のない専業主婦として見下していた元の人格ですが、様々な尊敬すべきところがあることがわかってきます。また、夫の仕事関係でパーティに出席した際には、夫が人々のために提案した案が、汚職によってゆがめられていることを知り、弁護士としての血が騒ぎ、夫側に立って熱弁を振るいます。それからは、自分の周囲にいる貧しい人々の困りごとを、弁護士としての知識と、元の自分の名前を使って解決していきます。
ここで大きな事件が起こります。娘が金持ちの同級生にたぶらかされてしまいます。それを聞いたルイザは大激怒。学校で話し合いがもたれましたが、金持ちサイドは、見下したようにお金で解決しようとします。また、家族のためにお金を受け取った方が良いことは理解しており、娘もそうしたいと言うのですが、娘の威厳のために、ルイザは戦うことを決意します。その決意と、弁護士としての熱弁に、金持ち家庭はタジタジです。そんなルイザを見て、娘が弁護士になりたいと言い出したのには、ルイザも思わず涙します。
(ネタバレ)神様との契約期間もあと1週間となり、改めて神様との仲介人から、今後のことを訪ねられます。自分が元の身体に戻ることを希望すれば、今の身体の母親は死んでしまいます。すっかり子供に情が移ったルイザには、自分と同じような悲しみを子供たちが経験することを受け入れられません。どうしようか迷っていたところで、息子が網膜の病気であることが発覚します。それは、もともとの自分が持っていた病気でした。自分が、子供たちの母親として転生したことで、遺伝性の病気も引き継がれてしまったというのです。そして、自分が母親として、予定通り死ねば子供の病気も消えるとのことでした。これでは、事実上選択肢はありません。ルイザは、家族と最後の時を過ごして、予定通り母として死を迎え、自分の身体に戻りました。
弁護士の自分に戻ったあと、自分の部屋を整理していると、亡くなった両親の写真を見つけます。ルイザは、父の顔を覚えておらず、写真も持っていないと思っていたのですが、写真の父親は、神様とのあいだを仲介していた男でした。亡くなった父が、ずっと自分を見守ってくれていたことを知り、ルイザは涙します。働き方もすっかり丸くなり、同僚とのトラブルもなくなりました。ある日、自分が一時的に母親をつとめた家族に遭遇します。自ら世話を焼いてあげ、何かあったら自分に頼るようにと、ルイザは語ります。そして、エンディングです。
主人公は、背が低くて胸が大きく、やや小太り、そんなに美人と言えないタイプだったので、エリート弁護士を演じるにはミスキャストなんじゃないかと思っていましたが、シーンの大半を貧しい家の主婦を演じるので、このキャスティングでよかったんだなとわかりました。シナリオがよくできていて不満もないのですが、息子の病気がなければ、彼女は母として生きることを選んだか、弁護士である自分の身体に戻るのだろうか?という選択がもっとドラマチックになったんじゃないかと思いました。しかし、その場合、自分の身体に戻ることが、自分勝手として観客に映ってしまう可能性があるので、穏便なエンディングを迎えるためには、息子の病気の設定はやむを得ないかなとも思います。
「Wonderful Nightmare」の監督、出演者情報
本作の監督をつとめたRC Delos Reyesさんは、とにかく制作スピードが速く、毎回それなりに印象を残す作品を作ってくれる監督さんです。今回はリメイクということもあり、やはり手堅い作品でした。そろそろ、彼の代表作と言える作品を撮って欲しいですね。主人公の夫を演じたJerald Napolesさんは、筋肉のついた体に馬鹿っぽい顔がトレードマークの俳優さんです。こういう人はわき役でも使いやすいですし、メインの役でも需要がありますね。よく見かける俳優さんです。娘を演じた子役も、ガタガタの歯並びがトレードマークでよく見かける人です。あまりに売れっ子で歯を矯正する暇がなく、貧しい子供を演じるには、今のままの方が良いので、大人になってから矯正するのではないかと思います。
「Wonderful Nightmare」の作品情報
オリジナルタイトル:Wonderful Nightmare
公開年 2026年
監督 RC Delos Reyes(Unravel: A Swiss Side Love Story)(霊媒は恋の始まり)(アルター・ミー: 心に耳を傾けて)(旅の先に)(Fuchsia Libre)(I love Lizzy)(Whispers in the Wind)(The Lotto Winner)
主なキャスト Kim Molina
Jerald Napoles(Sampung utos kay Josh)(Pagpag 24/7)(Instant Daddy)
Althea Ruedas(ドールハウス 〜想いをこめて〜)(Instant Daddy)
視聴可能メディア Netflix東南アジア(英語字幕)

