これは面白いアイデアの作品でした。「倫理的に、医学的にどうよ」という設定はありますが、それさえ目をつむれば、優れたアイデアによる構成から、誰が悪いわけでもないのに悲劇へと転じ、最後に涙涙のハッピーエンドになる流れが完璧でした。内容としては、仲の良い夫婦のもとに、夫の元彼女が訪れます。彼女には息子がいるのですが、それは元夫との間の子供でした。元彼女は、夫に伝えず、一人で育てていたのです。ところが、息子は臓器移植が必要な病気に冒されており、夫には骨髄移植を頼みに来たのです。寝耳に水の話でしたが、喜んで骨髄検査をしたところ、適合せず、子供を救うためには、元彼女と夫のあいだで、もう1人子供を作り、その子供の骨髄を移植するしかないと言われるのです。子供の命を盾にされると断りずらく、夫婦は、なし崩しに、この話に巻き込まれていくことになります。「臓器移植のために、新しい子供を作る、しかも結婚している男と元彼女が?」と、日本人からすると、この倫理観に驚愕しますが、フィリピンでは、これは理解できる行動なのでしょうかね? また、さらに人工授精で授からなかったので、2人でセックスしなければならないという謎の医学に展開するところは、もっとシナリオを工夫して欲しかったですね。

(Photo cited from Prime Video)
「One More Try」のストーリー
朝から夫婦がベッドでイチャイチャするシーンから始まります。そんな2人を、夫(エドワード)の元彼女(グレイス)でした。グレイスによれば、彼女には息子がおり、息子を助けて欲しいというのです。そして、その息子は、エドワードとの子供でした。グレイスは妊娠したことをエドワードに知らせずひとりで育てていたのですが、子供が(おそらく)骨髄移殖が必要な病気になってしまい、夫にドナーとなってもらうことを頼みにきました。妻(ジャクリン)は嫌な顔をしますが、子供の命には代えられないということで、エドワードは喜んでドナーの適合検査を受けました。しかし、結果は不適合でした。
そこで、医師は彼らにとんでもない提案をします。適合するドナーがいないならば、エドワードとグレイスのあいだで、まだ子供を作ればいいと言います。移殖のために子供をつくるなんて、そんなことが許されるのでしょうか? おそらく骨髄移殖だと言ったのは、さすがに生まれた子供から片側の腎臓や、肝臓の一部を取ったりしないだろうと思ったからです。
ちなみに、グレイスには結婚はしていないものの恋人(トリスタン)がおり、4人はエドワードの家出一緒に住むことになりました。しかし、人工授精もことごとく失敗。そこで、医師はさらにトンデモない提案をします。それは、エドワードとグレイスがセックスすればいいと言うのです。どこの世界に、人工授精より受精率が高いセックスがあるというのでしょうか? ただ、この設定のおかしさにさえ目をつむれば、これからのドラマはかなり面白くなります。
ジャクリンに泣き崩れて「夫を貸してください」というグレイスの前に、ジャクリンも断り切れません。しかも、この夫婦は子供が恵まれないことに悩んでおり、その罪悪感のため、ジャクリンは1回だけ、エドワードとグレイスのセックスを認めます。最初、エドワードは妻のジャクリンと濃厚な前戯をしたのち、ジャクリンがグレイスと入れ替わり、無事中出しに至りました。しかし、この状況でできるエドワードさんのメンタル強すぎです。しかし、結果的には妊娠に至りません。
他に考えられる手は、海外にいって移殖を受けるという方法ですが、平凡なシングルマザーであるグレイスにはビザが出ません。そこで、ジャクリンは「ならば、あなたの子供を私たちの養子にすればいい。それならばビザが取れるだろう」と反撃します。しかし、これはグレイスが拒否します。
結局、この一連のことが2組のカップルを完全に壊してしまいました。ジャクリンは仕事を口実に、しばらくシンガポールに行って別居状態となります。また、その後もエドワードの子種をもらおうとするグレイスに嫉妬したトリスタンも、グレイスに暴力を振るうに至り、こちらのカップルの破綻してしまいます。考えてみれば、トリスタンの立場が一番可哀そうです。金を持つ1人の男が2人の女を独占して、自分が蚊帳の外です。さらに、トリスタンがグレイスを抱こうとしても、グレイスがエドワードの子種を宿さなければならないので、拒否されてしまいます。
(ネタバレ)その後、エドワードとグレイスは、まるでヨリが戻ったかのように、息子と3人で幸せな家族生活を楽しみます。エドワードはすっかり有頂天で、グレイスに何度も何度も「子供を産んでくれてありがとう」と言います。これには、グレイスの方が切れてしまいます。シングルマザーとして、子供を頑張って育ててきたのに、今頃父親面をされたうえに、恋人にもジャクリンにも「売春婦」と言われ、彼女は深く傷ついていたのです。それでも、息子のためにエドワードの好意を得ようとしていたのです。グレイスは怒り、泣いた泣きながら、再びエドワードに抱かれました。
それからしばらく経ち、ジャクリンがシンガポールから帰国しました。そこで、グレイス懐妊の知らせを聞き、こちらもキレてしまいました。グレイスのもとを訪れ、彼女に怒りをぶつけ、暴力を振るいにいたります。そして、グレイスが下半身から血を流しました。これは大変なことになったと、グレイスは病院に運ばれます。ジャクリンは、もう怒りどころではありません。すっかり混乱しています。すっかり混乱している妻を見て、エドワードは優しく抱きしめます。また、トリスタンもグレイスの元に帰ってきました。結果的に、母子は無事でした。
それから時がたち、4人はガーデンパーティを行っていました。そこには、息子と、グレイスの新しい赤ちゃん、そしてエドワードとジャクリンのあいだにも待望の子供がうまれていました。みなの幸せそうな顔を映してエンディングです。
若干、トリスタンだけ置いてきぼりな感じはありますが、良いラストシーンでした。また、赤ん坊が流れたかも知れないというシーンでは、みんな不幸になるエンディングも予想しましたが、最後はハッピーエンドという展開が良かったですね。単に夫と元彼女をセックスさせるというだけでなく、息子を養子に差し出せとジャクリンが反撃するシーンも良かったです。惜しいのは、トンデモ医学のシーンのみです。ここを論理的に脚本で解決できれば、海外でリメイクされるほどの作品になるんじゃないかと思いました。
「One More Try」の監督、出演者情報
本作の監督をつとめたRuel S. Bayaniさんは、完全にテレビドラマの監督で、映画を撮ることは殆どありません。実際、本作もテレビ映画です。なので、ほとんど見る機会はないのですが、なかなか面白い作品を撮る監督さんですね。主演の御夫婦を演じた俳優はどちらも大御所俳優です。特にジャクリンを演じたAngelica Panganibanさんは、日本で言えばトレンディドラマの女王、浅野温子さん的なポジションです。彼女は可愛さがウリなのですが、それに愛人的な色気を振りまいていたのが、グレイスを演じたAngel Locsinさん。多くの作品に出演していますが、Angelica Panganibanさんほどのポジションではないと思います。しかし、本作では、存在感で勝っていました。
「One More Try」の作品情報
オリジナルタイトル:One More Try
公開年 2012年
監督 Ruel S. Bayani
主なキャスト Angel Locsin
Angelica Panganiban(ニャンてこと!)(Love Lockdown)(Unbreakable)(Beauty in a Bottle)(Love or Money)(That Thing Called Tadhana)
Dingdong Dantes(Rewind)(トランスバトラー)(バトル・オブ・モンスターズ)
視聴可能メディア Youtube(英語字幕)

