本作は、フィリピン国内では火事でフィルムが失われ、もう存在しないと思われていたのですが、カンヌ映画祭に出店したフィルムが、2017年に、フランスで発見されました。その後、2024年にデジタルリマスターされたバージョンが、カンヌ映画祭で復刻上映されたのことです。今回、私が見たのは、YoutubeやBili Biliで見ることができるリマスターされる前のバージョンです。問題は、カンヌバージョンなのでフランス語字幕しかないことですが、私は3年フランスに住んでいたことがあり、帰国後10年ほど、持ち帰ったフランス版のプレイステーション2で、輸入したフランス語版のソフトで遊んでいたので、フランス語字幕を読むことは今も問題なくできるのです。会話の方は、たまにアフリカの仕事で喋る程度なので、だいぶ忘れてしまいましたが・・・。本作の監督は、フィリピン映画初期の巨匠、リノ・ブロッカで、主役を演じるのがフィリピンを代表する女優、ノラ・オノールです。そういう意味でも貴重な作品だと思います。下のポスターは、リマスターバージョンのポスターですね。

(Photo cited from IMDb)
「Bona」のストーリー
女子高生のボナが主人公です。彼女は、映画の撮影所に入り浸っており、帰りが遅いため、父親に怒られます。どうやら、彼女はガルドという売れない役者に夢中になっており、追いかけまわしています。男は、お願いしてちょい役で出してもらうレベルの役者です。ノラ・オノールが小さすぎるのか、この男が大きいのかわかりませんが、背は高いですね。顔は、我々の基準ではイケメンではありません。
ある日、2人がいるところを暴漢に襲われます。どうやら女がらみのトラブルのようで、意識を失った彼を、ボナが彼の下宿に運んだことから、ボナは、そのまま彼の下宿で一夜を過ごします。彼は、かいがいしく世話をしてくれるボナに「君は、俺のおふくろみたいだ」と言います。
翌朝、荷物を取りに実家に戻ったところ、当然ですが、父は大激怒です。結局、ボナは家出のようなかたちで、ガルドの家に住み着くこととなりました。その後は、世話焼き女房のようなかたちで、ガルドの面倒をみます。こういう女性は、日本にはいないですね。フィリピンらしい感じがします。
ある日、父親が迎えに来ます。父親は、奴隷のような生活をしている娘を見て困惑します。ガルドを殴りつけるのかと思いきや、「結婚しないで、一緒に住むことは許さない。結婚しろ」と、色々考えてたどり着いたんだろうなということを言うのですが、ガルドは「俺は口説いていない。勝手に住み着いているだけだ。連れて帰ってくれ」と事も無げに言います。驚いた父親は、無理やりボナを連れて帰ろうとするのですが、その際に胸の発作が起きて、病院に運ばれることとなりました。
こんな状況ですから、母親もボナに「もう帰ってきなさい」とやんわり諭すのですが、ボナは頑なに拒否します。母親は、その頑なさに「なぜ? お父さんは、あなたのせいで死にかけたのよ」と驚きます。
結局、ボナはガルドの下宿に戻り、彼の世話をやく日々が続きます。ガルドは、ボナに全く興味を示しておらず、便利な小間使い程度にしか思っていません。時々、セクシーな女を連れ込み、2人が身体を密着して踊るために、ラジカセを持って音楽をかける役をやらされたりします。ある日、ガルドは見るからに未成年を連れ込み、堕胎のお金を用意できない自分を嘆きます。そんなガルドを見て、ボナは険しい顔を見せるも、特に何を言うわけでもありません。何を考えているのか、さっぱりわかりませんね。一応、ガルドがボナを抱いたことを暗示するシーンはありました。
(ネタバレ)ある日、ボナのことを心配してくれていた、ガルドの下宿界隈の男が結婚することになり、ちょっとしたお祭りになりました。ボナの誕生日も被っていたのか、ボナも祝われることとなり、彼女はしこたま酒を飲みました。そして、酔いから覚めた翌朝、彼女のもとに実家から使者がかけつけます。父が亡くなったというのです。そして、兄がボナに激怒しているので、兄に顔を合わさないようにかえって来なさいとの母からの言づけでした。ボナは、こっそり実家に戻りますが、激怒した兄に見つかってしまい、たたき出されてしまいます。兄は父の死の原因がボナにあると考えているので、「お前を殺してやる」と大激怒です。
ボナは、再びガルドの下宿に戻りますが、今度はガルドがいません。しばらく、撮影所を探したりしていましたが、3日ほど経ってガルドはかえってきました。ガルドは、7年やっても芽が出なかったので俳優をやめると言います。「じゃあ、何をするの?」と聞いたところ、「移民する」と答えます。これには、ボナも驚いて詳細を聞くと、ときどきガルドを訪れていたセクシーな女が、多額の遺産を持つ未亡人で、彼女と結婚すると事も無げに答えます。これには、ボナも怒って、「じゃあ、私はどうなるの?」と問い詰めます。ガルドは「実家に帰れ」と言いますが、ボナは「実家に帰ったら、兄に殺される」と言って、彼にすがりつきます。ガルドは、「そんなことはいいから、お湯を浴びたいから、お湯を用意してくれ」と言って、タライの中に半裸になって座って待ちます。ボナは、沸騰するお湯を見つめて、決心したような顔をしたのち、熱湯をガルドに浴びせます。そして、エンディングです。
ボナが、ガルドに執着している理由や、ガルドの良さを理解しようと思いながら見ていたのですが、最後までさっぱりわかりませんでした。最後の方に、母親が継母であることが明かされましたが、母親は概ねボナに寛容で、2人の関係に問題があるようには見えませんでした。ダメ男を好きになる女の人に、意見を聞いてみたいですね。
「Bona」の監督、出演者情報
本作の監督をつとめたLino Brockaさんは、フィリピン映画の歴史において初期の巨匠と呼ばれる人です。本作で、彼の作品を見たのは6本目ですが、まだ語れるほどは理解できていません。少しずつでも、彼の作品を見ていきたいですね。主役を演じたのは、フィリピンを代表する女優、ノラ・オノールさんです。本作では女子高生役を演じていましたが、公開時27歳です。小柄で童顔なので若くみえますが、妊娠した女を演じた若い女性と並ぶと、おばさんに見えることを、私は見逃しませんでした。ガルドを演じたPhillip Salvadorさんは、作中では売れない役者の道を諦めましたが、本人はその後もキャリアを重ね、現在も様々な役で見かける俳優さんです。
「Bona」の作品情報
オリジナルタイトル:Bona
公開年 1980年
監督 Lino Brocka(インシアン)(Ina, kapatid, anak)(Ang tatay kong nanay)(White Slavery)(Tatlo, dalawa, isa)
主なキャスト Nora Aunor(汝が子宮)(罠~被災地に生きる)(奇跡の女)(One More Rainbow)
Phillip Salvador(Ang tatay kong nanay)(One More Rainbow)
Marissa Delgado
視聴可能メディア Youtube、Bili Bili(フランス語字幕のみ)
「Bona」のトレイラー
下のリンクはリマスター版のトレイラーですね。私が見たバージョンは、こんなに綺麗な画質ではありません。

