本日からマニラでMetro Manila Film Festivalを見ています。今年は8本が選ばれており、私は3日間で8本全部見て帰る予定です。その記念すべき1作目にチョイスしたのが本作です。フィリピンを代表する俳優のヴァイス・ガンダさんは、長らくパートナーを組んだWenn V. Deramas監督が死去したあと、様々な監督とタッグを組んで作品を作っていましたが、どれもしっくりとしたものにはなりませんでした。しかし、昨年の公開の「And the Breadwinner Is…」で、ジュン・ラナ監督とタッグを組んでから新境地を開き、本作も同監督とのタッグによる作品です。これは、私の感想ではありますが、ジュン・ラナ監督によって、バカ騒ぎコメディーから社会的な問題を扱うようになってから、作品に深みが出たばかりか、ヴァイス・ガンダさんのギャグにも必然性が出てきて本当に面白くなったと思います。ジュン・ラナ監督との2作目で、その技法に磨きがかかり、後半は涙涙でした。本作は2026年中にNetflixで日本に入ってくることは間違いないと思いますので、期待して待ちましょう。願わくば、日本語字幕がついて欲しいですね。

(Photo cited from IMDb)
「Call Me Mother」のストーリー
劇場で見ると途中でメモが取れないので、ざっくりとしたストーリー紹介になってしまうのはご理解ください。
最初は、フィリピン人が大好きな美人コンテストの特訓のシーンです。ヴァイス・ガンダさん演じるツインクルは、候補者の女性のコーチでした。彼女は鬼コーチでもありますが、候補者をクイーンに仕上げる有名なコーチです。しかし、そんな時、ツインクルの母が亡くなり、自身が赤ん坊の子育てをしなければならなくなりました。そんな状況では、自身の務めが果たせるわけもなく、彼女は美人コンテスト業界から離れることになり、化粧品販売で生計を立てるようになりました。
そんな日々はあっという間に過ぎ、10年が経ちました。子供は愛くるしい少年(アンヘル)に育ちました。ある日、ツインクルに、香港ディズニーランドでスタッフ研修をするという仕事が舞い込んできます。彼女は喜ぶのですが、よく考えたら小さな子供を置いてはいけないので断ります。ところが、子供を連れて行けばいいと言われ、そういえばアンヘルもディズニーランドに行くのが夢だったので、一緒に行こうと考えます。問題は、少年のビザです。ツインクルとアンヘルは、正式に養子関係ではないので、養子にするという法的な手続きを進めなければなりません。
とりあえず、ツインクルは行政機関に相談に行くと、実の母のことを尋ねられます。彼女が渋々出した母の名前は、ビューティークイーンとして有名なマラでした。彼女は、美人コンテストの途中で妊娠したのですが、彼女の母がいわゆるステージママで、子供を産んで美人コンテスト業界を引退するよりも、その道を続けさせることを選んだのです。そこで、ツインクルが引き取り、すぐに彼女の母が亡くなったので、彼女が子供の母親となったというのです。
気が乗らないものの、マラにコンタクトを取ると、マラはツインクルが彼女の専属コーチとなることを条件に、わが子をツインクルの養子にすることに同意しました。マラは、金持ちの男と婚約しており、今度の美人コンテストで優勝して、一緒にアメリカに移住することになっていたのです。
それから、バカバカしいトレーニングが始まりますが、問題はマラとアンヘルが少しずつ仲良くなってしまったことです。ツインクルは、いつかマラに母性が目覚め、養子を認める書類にサインしなくなることを恐れています。そのため、ツインクルはマラがアンヘルに近づきすぎないように、妨害するというコメディーが演じられます。
(ネタバレ)しかし、実際ツインクルが恐れていたことが起こってしまいました。美人コンテストが始まり、ファイナリストの3人に選ばれたところのスピーチで、自分が10年前に犯した罪、子供を見捨ててしまったことを自ら告白したのです。また、一旦はサインした養子を認める書類に、嘆願という異議申し立てをしてたのです。嘆願が出されると、実の母の方が優先されるらしく、あわれ、ツインクルとアンヘルは、行政によって引き離されてしまったのです。ところが、逃げ出そうとしたアンヘルは、大けがをしてしまい、入院となりました。輸血が必要となり、特殊な血液型であったため、マラが血液を提供することで、アンヘルは危機を脱しました。
ツインクルは、10年前に子供を見捨てておきながら、今頃になって母性に目覚めて、10年間子供を愛した自分から子供を取り上げる彼女を非難します。その命がけで子供を愛する姿は涙涙を誘うものでした。
それでも行政の決定には逆らうことができず、アンヘルはマラのもとで、新しい父親と過ごすことになりました。やがて、ツインクルは香港ディズニーランドで働き始めます。そこに、アンヘルとマラが訪れます。2人は再会に感激し、抱き合います。アンヘルは、実の母と育ての母の2人を持つことになったのです。そしてエンディングです。
ヴァイス・ガンダさんも、監督のジュン・ラナさんも、ゲイであることをオープンにしています。そのためか、ゲイである強みを十分に活かしていましたね。これが女性2人で、争っていると大変見苦しいものになりますが、育ての母がゲイであることで、どこか後ろめたさ、滑稽さがうまれるので、コメディ映画としても成立しています。また、美人コンテストが舞台ですから、後半のゴージャスな映像も見どころです。そして、最後半の涙涙の展開は素晴らしいものでした。非常にフィリピンらしい作品であり、大成功した作品と言えるのではないかと思います。
「Call Me Mother」の監督、出演者情報
本作品で監督をつとめたジュン・ラナさんは、「ダイ・ビューティフル」「ある理髪師の物語」などで国際的評価も高い監督さんです。そして、2024年の「And the Breadwinner Is…」でヴァイス・ガンダさんとタッグを組んでから、今年もタッグを組むことになりました。おそらく、このタッグは長く続くのではないかと思います。あまりに相性がいいですし、国民的スターと組むのは、大監督になるのにもう1歩というポジションのいたジュンラナ監督にもメリットが大きそうです。
「Call Me Mother」の作品情報
オリジナルタイトル:Call Me Mother
公開年 2025年
監督 Jun Lana(ダイ・ビューティフル)(Ten Little Mistresses)(Haunted Mansion)(Bwakaw)(そして大黒柱は…)
主なキャスト Vice Ganda(ホゴシャはつらいよ!)(Patners in Crime)(そして大黒柱は…)
Nadine Lustre(Ulan)(Nokuturo)(Uninvited)
Lucas Andalio
視聴可能メディア なし(フィリピンの劇場で視聴)

