これは大作です。2002年に本作から始まり、後にシリーズ化され7本の作品が撮られています。私は、この1本目しか見ていませんが、1本目を見る限り、それぞれ中華系フィリピン人一族にフォーカスするも繋がりはないんじゃないかと思います。面白いのは、フィリピンに住む中国人一族は、フィリピン人に誘拐されたり、金を巻き上げられたりと酷い目に遭い続けているということです。そのため、中国人一族は、フィリピン人やフィリピン政府を信じておらず、なるべく距離を取りながら、トラブルの際には、すすんで金を払うことで解決しようと言うマインドを持っている人たちと描かれていることです。これをフィリピン人側が描くのが面白いですね。私は、中国系タイ人の友達がおり、彼女の一族は、地元のタイ人を見下しており、これまでずっと中国系のタイ人と婚姻を続けていました。彼女の一族も、タイで同じような目に遭っていたのかなと思いました。ちなみに、タイ人との婚姻はダメですが、日本人との婚姻はOKのようでした。どうしてそうなるのか興味がありましたが、詳しく聞くと藪蛇と思いましたので聞いておりません。タイトルの「Mano po」とは、フィリピン人が敬意を示して、年上の人の手に自分の額を付ける作法のことです。

(Photo cited from IMDb)
「Mano po」のストーリー
若い中国人青年が、フィリピン自制を連れて中国に帰省するシーンから始まります。しかし、中国青年の両親は、中国語が喋れない女を嫌い、結局2人は、フィリピンに移住することを決意します。そうして、在フィリピン華僑、ゴ家の物語が始まります。
しかし、物語の主人公は、孫の代に3姉妹です。孫の代には、男の子が産まれなかったため長女(ヴェラ)が一族を仕切っています。その冷徹な判断力から「タイガーウーマン」と呼ばれています。次女(ジュリエット)は、平凡な主婦です。三女(リチェル)は、家族に反発して悪ぶっています。そのリシェルが、麻薬所持の現行犯で警察に逮捕されます。しかし、担当の警察官(ラフ)に気に入られ、麻薬の密売組織を壊滅させるために、内偵として使われることとなりました。
ゴ家の反応を見ていると、ゴ家とは直接関りはないものの、麻薬の密売には中国人グループも関わっているようでした。ちょっと後のシーンになりますが、リチェルの証言により、麻薬密売組織の大物が逮捕されました。ゴ家の長老は、中国系の警察長官を救うために、高価な宝石を賄賂として用意しました。
しばらくは、ゴ家とフィリピン社会の関りが描かれます。ヴェラは、ピープル革命に参加した一族の者を叱責します。彼女によれば、フィリピン政府はフィリピン人のためのもので、中国人には関りのないことだそうです。フィリピン人は、中国人のビジネスを台無しにする存在でしかないと言います。
また、学校の前で中国人の子供が誘拐されるという事件がありました。ヴェラが一族を代表し、500万ペソの身代金を払ったにもかかわらず、誘拐された子供は殺されてしまいました。
ヴェラには、恋人がいるのですが、自分が家長として父のビジネスを仕切っているため、結婚に躊躇しています。結婚することは、父の家名を消してしまうことだと言います。とは言え、やがて婚約パーティが行われます。苗字のことはどうなったのかわかりません。フィリピンでは、外国人にも夫婦別姓を認めていないのでしょうか? というか、ゴ家の人々は、国籍的にはフィリピン人なのでしょうか? そんな頃、中国の内戦が終結して、中華人民共和国と台湾にわかれます。在外中国人は、どちらかの国籍を選ばなければならなくなったと言っていたので、まだ中国籍だったのかもしれません。一般論として言っているだけかもしれませんが・・。
リチェルが警察の内偵となっていることを、ヴェラの知るところとなり、担当の警察官が呼び出されます。変な話ですが、リチェルと、若い刑事は恋仲になっておりました。ヴェラは、刑事に500万ペソの小切手を渡そうとしますが、刑事は受け取りません。刑事は「あなたたちは、何でも金で買えると思っているのか」と問います。ヴェラは「フィリピン人は、中国人を金づるだと思っているんでしょ」と答えます。ヴェラは「10人誘拐されたら、そのうち何人が中国人かご存じ?」と返します。すると、刑事は「問題は、あなた方がフィリピン人を信用していないことだ」と語ります。この会話が、本作のテーマでしょう。
(ネタバレ)そんなとき、ジュリエットとリチェルが誘拐されます。その際に、ヴェラの婚約者が殺されてしまいました。リチェルの恋人である刑事が、ヴェラの元を訪れ、協力を求めますが、ヴェラは拒否し、金で解決する道を選びます。要求額は1億ペソ。さすがに、ゴ家でも用意できるかわからず、焦りがみられます。そんなやりとりを刑事たちは盗聴していました。身代金の受け渡し場所に、先んじて突入し、誘拐犯の組織を壊滅させました。その際、リチェルが負傷しますが、恋人の刑事によって救出されました。
警察の活躍により、2人の妹を取り戻したヴェラは、刑事たちに感謝し、リチェルとも和解しました。ゴ家は、家族にも重大な危険が及んだことで、このままフィリピンに残るか、他の国に移住するかを議論します。結果的には、(おそらく)年老いた両親と祖父は中国に帰国し、ヴェラはカナダに移住、そして、ジュリエットとリチェルがフィリピンに残ることとなりました。リチェルと刑事の結婚式のために、ヴェラは自分が婚約者との結婚のために用意した婚約指輪を、リチェルに託します。そして、リチェルの結婚式のシーンから、有名な中国系フィリピン人(あるいは在フィリピン華僑)が次々と紹介されるなか、エンドクレジットに突入します。
中国人を食い物にするフィリピン人と、それが故に何でも金で解決しようとする中国人という関係を描いたことが面白かったですね。とは言え、中国人が被害者のようなトーンで描かれていますが、しっかり麻薬の密売で関わっている中国人たちもいます。これを見て疑問に思ったのは、日本を含む先進国では、フィリピンみたいに中国人を食い物にしてないと思うのですが、結果的には中国人コミュニティは同じように振舞っており、その点はどう説明できるのかな?と思いました。いずれにせよ、新しい視点を与えてくれる面白い作品でした。
「Mano po」の監督、出演者情報
本作の監督をつとめたJoel Lamanganさんは、大ベテランの監督さんで、テレビと映画の監督作品で、およそ150本の作品を残しています。この「Mano po」シリーズの創始者として知られる監督さんです。しかし、7本のシリーズ作の中では、本作と2本目、6本目だけが、彼の監督による作品です。
主人公、ヴェラを演じたMaricel Sorianoさんは、近年おばあさんの役を演じることが多い女優さんです。本作の頃の美しさが微塵も残っていないことに驚きますね。次女を演じたKris Aquinoさんは、暗殺されたニノイ・アキノの娘さんです。どの時代の作品を見ても、小太りの中年女性に見えます。若いころは老けすぎ、それ以降は変わらなすぎですね。
「Mano po」の作品情報
オリジナルタイトル:Mano po
公開年 2002年
監督 Joel Lamangan(Oras de Peligro)(One More Rainbow)(Mila)
主なキャスト Maricel Soriano(Girl, boy, bakla, tomboy)(Meet, Greet & Bye)(T2)(Mila)
Kris Aquino(All You Need Is Pag-ibig)(Feng Shui 2)(Etiquette for Mistresses)
Ara Mina(ハイソな令嬢になるルール)
視聴可能メディア Youtube(英語字幕)
「Mano po」のトレイラー
トレイラーが見つからなかったので、本編映像のリンクを貼ります。

