来週末に、ジュン・ラナ監督が、日本にきてトークセッションがあるというので、ジュン・ラナ監督の作品を集中して見ています。そして、彼の作品の中で、代表作と言えるのが本作だと思われます。ゲイをテーマにしたコメディ作品の印象が強いジュン・ラナ監督ですが、時に社会的なテーマの作品を撮ることもあり、本作はマルコス・シニアの独裁政権時代のふぃり週末に、ジュン・ラナ監督が、日本にきてトークセッションがあるというので、ジュン・ラナ監督の作品を集中して見ています。そして、彼の作品の中で、代表作と言えるのが本作だと思われます。ゲイをテーマにしたコメディ作品の印象が強いジュン・ラナ監督ですが、時に社会的なテーマの作品を撮ることもあり、本作はマルコス・シニアの独裁政権時代の反政府運動と、それを抑圧する軍隊の戦いに、小さな町の理容院を引き継いだ未亡人が巻き込まれていくというお話です。とにかく脚本が秀逸で、大義に殉じる若者、若者を死なせたくない家族、都合の悪いことを何でもゲリラがやったことにする政治家、関りを恐れて距離を取る一般大衆と、主人公と様々な人々との関りを通して、多面的に描いていきます。2014年の東京国際映画祭をはじめ、国際的な映画祭でも上映され、高い国際的評価を得た作品です。

(Photo cited from IMDb)
「Barber’s Tales」のストーリー
1975年の小さな町、夫婦で経営する理髪店が舞台です。ある日、軍人が理髪店を訪れ、反乱軍を見かけたら通報するようにと言づけます。この夫婦ですが、夫が髪を切り、妻が手伝いをしています。夫は、いわゆる亭主関白なタイプで、妻は大人しく夫に従います。また、妻は、夫から散髪の技術を習っています。
この夫は、売春宿に通っています。常連客と呼ばれていたので、それなりに通っていたようです。また、のちにわかることですが、かつて生まれて亡くなった子供が自閉症だったため、次の子供も自閉症になるのではないかと恐れて、妻を抱かなくなったようです。その日は、すっかり酔っ払って帰宅したのち、翌朝死んでいました。
葬儀が始まると、夫の母がやってきて、大泣きした上に、「もっと良い結婚すれば死ななくてすんだ」と妻(マリロウ)を罵ります。マリロウは、すっかり意気消沈しています。マリロウは、子供もいなかったため、マニラに行ってメイドでもしようと思っていたのですが、司祭に町に1件の理容院がなくなると困ると言われ、夫の理髪店を引き継ぐこととなりました。
開店してまもなくの夜、反政府ゲリラの男たちが理容室を訪れます。しかも、ゲリラのうち1人は、友達の甥っ子でした。やむなく、店に入れ、ケガした男の治療を行いました。友達の甥っ子は、マニラで政府の腐敗、多くの人が誘拐され、拷問されているのを目撃し、ゲリラに転じたと言います。また、もう1人のゲリラは、夫が通っていた売春婦の弟でした。マリロウは、売春婦を手引きし、2人を会わせます。
2人のゲリラは、理髪店を去るときに、いかにもゲリラという風貌で、目立ってしまいことが明らかだったので、マリロウはさっぱりした髪型に切ってあげました。おそらく、このシーンが、本作のアイデアのもとでしょうね。
当初は、女がやっている理髪店など信用できないと、お客さんは寄り付きませんでしたが、市長の髪を切ったことを機に、地元の人たちも店を訪れるようになりました。マリロウの友達たちも、お店に大きく貢献しました。
(ネタバレ)ある日、司祭が殺されると言う事件がありました。発表によれば、司祭はゲリラの味方をして、発砲したため、兵士が撃ち殺したとなっていました。しかし、友達の甥っ子によれば、政府はこうして恐怖を与え、人々を支配しているのだと言います。この事件以来、マリロウの理髪店は、ゲリラが集まる場所となりました。さすがにこうなってしまっては、友達に甥っ子のことを伝えざるを得ません。友達は激怒し、しばらくマリロウとの仲は険悪でしたが、のちに仲直りします。
その頃から、市長の妻がマリロウを訪れるようになります。特に用事もないようですが、夫である市長が愛人を囲っており、自分が邪魔者にされていると嘆きます。そしてある日、市長の妻は、ついに市長が愛人を公開した、自分は捨てられるだろうと嘆きます。突然、マリロウに口づけしたのち、崖から身を投げました。
この事件は、市長により政治的に利用されました。市長は、妻がゲリラに殺されたと発表し、ゲリラへの憎しみを煽ります。また、マリロウには口止めを要求します。市長は、妻は精神の病気だったので、彼女が何かいったかもしれないが、信じないように、自分は彼女の望むことを何でもしてあげたと、語ります。
しばらくして、マリロウは再び市長に呼び出されます。市長は、黙ってくれたことに感謝し、マリロウに髪を切らせながら、妻の死をゲリラのためにしたことで、ゲリラへの反発が増えた。マルコス大統領が、この件を気に入り、大きく利用している。そのため、自分も大統領の覚えめでたく、今度、この街に大統領が来ることになったと嬉しそうに語りました。それを聞いていたマリロウは、突然、市長の首にハサミを突き立て、市長を殺して逃亡しました。
しばらくは、どこかに潜伏していたのでしょう、マリロウの姿は見つかりません。町の周囲は兵士によって厳重に固められており、脱出は困難です。しかし、市長の葬儀のために、女たちが町を練り歩く必要があります。兵士たちは女たちの行列に目を配るのですが、マリロウは女たちの協力を得て、うまく脱出することができました。その後のマリロウのことを知る者はいません。しかし、女たちは、マリロウがゲリラで活躍していると信じています。エンディングです。
面白い作品でした。理髪店という設定が活きていて、いろんな人が出入りする場所、うっかり秘密が洩らされる場所として機能しています。市長も愛人はいたものの、完全な悪人ではなく、当時の行政の長としては、妻の死を利用するのは理解できます。また、マリロウの理髪店を軌道に乗せたのも市長でした。最後に、女たちが協力して、マリロウを逃すシーンも痛快で、うまいラストになっています。さすがに、ジュン・ラナ監督の代表作と言われる作品ですね。
「Barber’s Tales」の監督、出演者情報
本作の監督をつとめたジュン・ラナさんは、まだ国際的な大きな賞を受賞したことはありませんが、国際的な評価の高い監督さんで、作品に高い娯楽性も備えており、大衆の人気も高い監督さんです。本作では大人しい妻を演じたEugene Domingoさんは、私が「フィリピンの上沼恵美子」と呼んでいる人で、他の作品では、ちょっぴり毒舌で、ひたすら喋り続けるおばちゃんを演じることが多い女優さんです。ジュン・ラナ監督のお気に入りのようで、多くの作品に出演しています。司祭を演じたEddie Garciaさんも、ジュン・ラナ監督のお気に入りで、やはり多くの作品に出演しています。
「Barber’s Tales」の作品情報
オリジナルタイトル:Barber’s Tales
公開年 2013年
監督 Jun Lana(ダイ・ビューティフル)(Ten Little Mistresses)(Haunted Mansion)(Bwakaw)(Call Me Mother)(そして大黒柱は…)(Big Night!)(Kalel, 15)
主なキャスト Eugene Domingo(悪キャラ養成アカデミー)(Big Night!)(Ang babae sa septic tank 2: #ForeverIsNotEnough)(そして大黒柱は…)
Eddie Garcia(Bwakaw)(Kalel, 15)
Iza Calzado(Ouija)(生き人形マリア)(519号室)(Shake Rattle & Roll Extreme)(Rendezvous)(もう一度あなたと)
視聴可能メディア Youtube(英語字幕のみ)

